グローバル化が進み、国際物流量が増加する中、国境をまたぐサプライチェーンにおいて、海上輸送中の貨物の状態を正確に把握することや、関係する企業間で情報をリアルタイムに共有することの難しさが課題となっている。
こうした現状に対し、業界特化型のビジネスクラウドソフトウェアで世界をリードし、175カ国以上で顧客を持つインフォアは、海運の国際物流向けプラットフォーム「Infor Nexus」を提供し、データ統合による一括管理システムの導入を進めてきた。
世界最大級のサプライチェーンネットワークを誇る同社のシステムを使うことで、何が「可視化」され、国際物流の何が変わるのか。日本の現状と課題、今後の展望等について、Infor Nexus日本事業責任者である小林氏に伺った。
(取材日:2026年2月5日、於:インフォア有楽町オフィス)
単なる「可視化」ではない
意思決定を補助するシステム
―― 前身となる「GT Nexus」から、海運業界では名の知れたソリューションとして展開してきた「Infor Nexus(インフォア ネクサス)」ですが、国際物流で選ばれる理由、強みはどういった部分なのでしょうか。
小林 「Infor Nexus」は、25年以上にわたりグローバルサプライチェーンの効率化・強靭化を支えてきた世界最大級の共同利用型プラットフォームです。現在、サプライヤーやメーカー、物流事業者に加え、金融機関までを含む世界9万4000社以上の企業が、国境や組織の垣根を越えてリアルタイムに情報を共有しています。
従来の可視化ツールは、コンテナ単位など「出荷レベル」での追跡が中心でした。しかし、荷主側が真に求めているのは、個別の注文が今どの工程にあるかという「オーダーレベル」での状況把握です。
そこで「Infor Nexus」では、発注単位や品目明細レベルまで踏み込んだデータ管理を実現し、高度な業務要求に応えています。
―― どういった企業での導入事例があるでしょうか
小林 例えば、世界屈指のスポーツブランドであるPUMA様の事例があります。PUMA様では、サプライチェーン全体の透明性を高めるだけでなく、さらに一歩進んだ「サステナブル・ファイナンス」に活用されています。
―― Infor Nexusが資金調達にも関係していると。
小林 そうです。PUMA様自身というよりも、資金化に長期間を要するサプライヤー側に恩恵があります。もう少し具体的にお話しますと、プラットフォーム上のデータを金融機関と共有することで、データの信頼性を「企業の信用」へと昇華させているのです。これにより、環境対策などを適切に行っているサプライヤーが資金調達をする際、通常よりも有利な条件を引き出せる仕組みを実現しています。
「Infor Nexus」の本質は、単なる「見える化」の道具ではありません。得られたデータに基づき、企業としての責任ある意思決定や迅速な業務判断、さらには新たな経済価値の創出につなげるための「経営基盤」である点が、他社との決定的な違いだと自負しています。
―― 「Infor Nexus」がカバーする領域は、具体的にどのプロセスからどのプロセスまでなのでしょうか。
小林 企業が発注を行ったタイミングから、既に可視化が始まっています。注文内容の変更や承認といった細かなやり取りをはじめ、工場の生産状況、貿易書類の共有、そして物流の手配。最終的な納品に至るまで、サプライチェーンの一連の流れをすべて管理することが可能です。
―― 遅延などが発生した場合、関係者(物流会社、サプライヤー、自社)への情報共有と解決はどのように行われるのでしょうか。
小林 スケジュール遅延や数量の変更などが発生した場合、プッシュ型のアラートを各担当者やサプライヤーへ自動でご案内しますし、併せてシステムから輸送方法の変更や倉庫間の移動による在庫調整など、具体的な対策案を提示します。
また、ダッシュボード上でも対応状況を含めて関係者全員が把握可能です。
<ダッシュボードの利用イメージ>

国際物流における日本の位置
データ化に必要な「意識の変化」
―― 複雑なソリューションですが、国内企業が導入する際に「ここから始めるべき」という推奨のステップはありますか?
小林 各社抱えている課題が違うため一概に申し上げるのは難しいのですが、日本では国際輸送の物量が多い製造業が多いため、物流業務から改善を進めるケースを多く耳にします。まずは「今どこに何があるのか」を把握することを始め、段階的に対象範囲を広げていくようなスモールスタートが成功の鍵だと考えています。
―― AIとの連携もされているのでしょうか。
小林 はい。AIにより精度の高い到着予測を行うことが可能です。最近では会話型AIの機能もリリースしており、例えば「今、遅延しているオーダーはどれか」といった質問に対して、自然言語で状況を確認できます。
―― 世界中のデータが集まるInfor Nexusだからこそ見えている、現在の日本企業のサプライチェーンにおいて、さらなる進化のための『鍵』となる要素は何だと思われますか。
小林 データの集約化に尽きると思います。倉庫在庫と異なり、運搬中の在庫データは情報が集約されておらず、対応というよりも、データを探すこと自体に時間を使ってしまうことが珍しくありません。
極端な例ですが、コロナ禍の在庫切れでは、こうした「見えない在庫」の確認ができていれば、より早く欠品状態の解消が実現した可能性もあります。非常時への対応も含め、稼働中の在庫を統一データでつなぐことは非常に重要だと思っています。
―― データは現場だけでなく、経営判断にも重宝されますね
小林 既にダッシュボードやレポーティング機能で経営者にもご利用いただいております。
―― 最後にLNEWS読者へメッセージをお願いします。
小林 日本では、創意工夫によって独自の仕組みを築き上げ、高い精度で業務を遂行されている企業が多いと感じております。その一方で、グローバル市場に目を向けますと、共通のプラットフォームを基盤として、サプライチェーン全体を最適化していく動きが標準となりつつあります。
今後、国境を越えたデータの共通化がさらに加速していく中で、私たちが提供するような仕組みが、皆さまのさらなる発展のための一つの選択肢としてお役に立てればと願っております。まずはこうした世界の潮流に触れていただき、自社の素晴らしい取り組みをより進化させるためのヒントとしてご活用いただければ幸いです。
<インフォアジャパン 小林豊和 Infor Nexus 日本事業責任者>

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