LNEWSは、物流・ロジスティクス・SCM分野の最新ニュースを発信しています。





佐川急便/宅配専用EVの試作車公開、2022年導入開始

2021年04月13日/IT・機器

佐川急便は4月13日、開発を進めている電気軽自動車のプロトタイプ車両を公開した。

この車両は宅配業務専用のEV(電気自動車)として、EVの企画・開発を手がけるASFと2020年6月から共同で企画・開発してきたもの。

2021年3月から走行性能や機能を検証するための実証実験に着手しており、8月中にも内外装の仕様を決定し、早ければ9月中の量産開始を予定。1年の製造期間を経て、2022年9月から順次、首都圏などの都市部を中心とした佐川急便の営業所へ納車される予定だ。

車体は中国の五菱汽車が製造。航続距離は200km以上を確保している。2030年までに計7200台を導入する計画で、買い切りではなく、車両やメンテナンス、充電設備、電気代をワンパッケージ化したリース契約で利用する予定。

車体のメンテナンスはグループのSGモータースのほか、全国に9600か所の拠点を持つJRS(日本ロードサービス)が協力する。

<乗車スペース>
20210413sagawa5 520x346 - 佐川急便/宅配専用EVの試作車公開、2022年導入開始

<通常より10cm幅広に設計されたドライバーシート>
20210413sagawa6 520x346 - 佐川急便/宅配専用EVの試作車公開、2022年導入開始

車両には、佐川急便の軽自動車ドライバー7200人に実施したアンケートの結果を反映させ、ドライバーの使いやすさを追求したさまざまな仕組みを盛り込んだ。

乗車スペースでは、使用頻度が少ない助手席を狭くする代わりに、運転席を通常より10cm幅広に設計。スペースにゆとりを持たせることで、快適に運転できるようにした。

助手席側のダッシュボードには、テーブル代わりになるプレート板を設置。PCを置いて作業したり、弁当や飲料を置けるようになっている。

運転席と助手席の間にあるセンターボックスにはUSB端子とコンセントを設け、スマホやタブレットなど業務で使用する端末を充電できるようにする。ドリンクホルダーは、ドライバーで利用者が多い1リットル容器の紙パックが入る仕様とした。

<ダッシュボード中央にはさまざまな情報を閲覧・管理できるタブレットを設置>
20210413sagawa4 520x346 - 佐川急便/宅配専用EVの試作車公開、2022年導入開始

ダッシュボードの中央部にはタブレットを設置。バッテリー使用量などの車両データやGPS情報、運行管理データ、ナビ情報等をクラウドで管理できるようになっている。このほか、デジタルタコグラフやAIドライブレコーダー、AI危機検知システム、ウェアラブル機器と連動した体温や心拍数等の健康管理機能などの導入を検討中だ。

<荷台はLED照明で最大限に明るく。台下など各部に収納を設けた>
20210413sagawa3 520x346 - 佐川急便/宅配専用EVの試作車公開、2022年導入開始

荷室では、夜間作業時に使用する照明が暗いという意見が多かったことから、4本のLED照明で最大限の照度を確保した。また、車両充電時に作動するUV除菌装置も設置し、翌朝には清潔な車内で作業を開始できるようにする。今後は、この装置で配達する荷物も除菌することも検討している。

荷台は荷物を積み下ろす際の作業負荷を軽減するため、少し高めに設定。タイヤハウスの凹凸を無くしたことで作業しやすい設計とした。荷台下には、台車と伝票を収納するスペースを設けている。

<屋根に設置されたソーラーパネル>
20210413sagawa2 520x234 - 佐川急便/宅配専用EVの試作車公開、2022年導入開始

屋根にはソーラーパネルを設置。発電した電力は走行用のほか、有事の際にスマホ等の必要な機器の電源を確保できる。

<佐川急便による環境車導入の推移>
20210413sagawa7 520x369 - 佐川急便/宅配専用EVの試作車公開、2022年導入開始

佐川急便は1990年代から環境配慮車の導入を開始しており、これまでにCNG(天然ガス)トラックやハイブリッドトラックを導入しているほか、2019年4月からはいすゞ製EVトラックの試験運用も開始している。

今回、政府が掲げる2050年のカーボンニュートラル(温室効果ガス排出ゼロ)の目標達成に向けて宅配専用EVを開発。宅配業務に使用している軽自動車7200台すべてを2030年までにEVへ切り替えることで、保有車両全体の1割に相当する年間2万8000トンのCO2排出量を削減することができる。

<左:佐川急便の本村 正秀社長、右:ASFの飯塚 裕恭社長>
20210413sagawa1 520x346 - 佐川急便/宅配専用EVの試作車公開、2022年導入開始

EVについて、佐川急便の本村 正秀社長は「2022年9月から年間1000台ペースで導入し、軽自動車の集配車両すべてをEVに置き換えることで、2030年に集配車両によるCO2排出量ゼロを達成する。以前から宅配に特化した車両を作りたかったが、少ない台数ではメーカーが製造に対応できないため開発を見送ってきた。今回、ASFの協力を得たことで7200台という規模でも開発が可能になった。車両にはドライバーの声を反映させている。使い勝手がとても良いし、荷台があんなに明るい配送車は今まで無かった。乗車するドライバーには、誇らしい気持ちで日々の業務に取り組んで欲しいと思っている」とコメントした。

また、ASFの飯塚 裕恭社長は「当社はラストワンマイル問題を解決するモビリティの提供を事業目的の1つに掲げており、佐川急便と昨年の6月からプロジェクトチームを立ち上げ、試作車の検討を重ねてきた。EVは販売ではなく、リースや従量課金制での提供を計画している。今後は超小型モビリティや特殊車両、建機まで幅広いジャンルの電動化にチャレンジしていきたい」と述べた。

■EVの仕様
全長:3395mm
全幅:1475mm
全高:1950mm
最大積載量:350kg
定員:2名
最高時速:100km/h
航続距離:200km以上
タイヤサイズ:145/R12
その他仕様:衝突被害軽減ブレーキ、後退時被害軽減ブレーキ、バックソナー、バックアイカメラ、自走事故防止装置、ドライブレコーダー、運行データ・車両データクラウド管理、ウェアラブル端末による健康管理、タブレットナビ、太陽光発電パネル、台車収納スペース

三菱ふそう/インテリア、安全装置刷新、「キャンター」新型モデル

関連記事

IT・機器に関する最新ニュース

最新ニュース