シノプスは7月3日、西日本でドラッグストアを展開する企業が立ち上げた四国青果物流合理化協議会へ参画したと発表した。
同協議会が農林水産省の補助事業(2023年度 物流生産性向上推進事業)に採択され、需要予測型自動発注の導入による青果物の発注業務効率化、食品ロスの削減、および需要予測データを活用した物流負荷の軽減を目指す実証実験を2024年10月から2025年1月まで実施した。その結果、食品ロスの改善、発注時間の削減、配送トラックの削減などの効果を確認できた。
西日本に60店舗超、ドラッグストアを展開する企業、および、そのドラッグストアへ青果物を卸す仲卸と協同で、青果の食品ロス削減、業務効率化、物流負荷軽減を目的とした2つの実証実験を行った。実証実験では、日配品や惣菜など賞味期限の短いカテゴリで実績のある需要予測型自動発注システム「sinops-R」(シノプス アール)に、青果用の需要予測ロジックを追加。従来困難とされてきた青果の需要予測・自動発注を実現し、食品ロス削減と業務効率化を図った。
また、自動発注の過程で生成された需要予測データを活用することで、川上である仲卸を含めた業務効率化と物流負荷軽減を目指した。
実証実験の「実証1.青果の需要予測・自動発注」では、「sinops-R」に、青果特有の相場変動や在庫計算などを考慮した青果用の需要予測ロジックを追加開発。ドラッグストアが青果仲卸から仕入れる玉ねぎやジャガイモなどをはじめとした青果15商品を対象に需要予測・自動発注の実証実験を実施した。
実施店舗は2店舗、実施期間は2024年11月21日~2025年2月2日、対象商品は15商品、主な成果は販売実績(個数・金額)が現状を維持したまま、発注作業50%削減、食品ロス25%削減を実現。
「実証2.需要予測を活用した青果の物流改善」では、青果物流で、納品LTの短さなどの要因から物流・業務負荷が課題。今回実証実験を行う店舗でも、青果の発注を行った2日後に納品される(納品LT2)ため、青果仲卸は納品に間に合わせるため、店舗発注が確定する前に、見込みで作業計画や配車手配などを行っており、この商慣習が青果物流を圧迫する一因となっている。そこで、青果への需要予測・自動発注システム「sinops-R」を導入した上で、3つのシナリオを実施した場合の、物流、作業効率、食品ロスに与える効果を検証した。
シナリオ1「納品LTの延長(2日→4日)」では、従来2日だった納品LTを4日に延長することで、青果の物流・業務負荷の軽減を目指した。納品LTを延長した場合、競合他社より早く売価を決定する必要があり、相場変動の大きい青果では競合店との価格乖離によって、売れ残りや食品ロス増加の懸念がある。そこで、近隣競合店の価格乖離による影響度を考慮しながら、「sinops-R」による需要予測データを活用することで、欠品や過剰在庫につながる発注を最小限に抑えつつ、納品LTを延長する効果を検証した。
その結果、食品ロスや配送トラックの増便を増やさず、仲卸で発生する作業計画作成、ピッキングや荷積みなどの作業を46%削減可能と試算。
シナリオ2「1週間分の総発注数の事前提示」では、「sinops-R」が需要予測で算出した1週間分の発注総数を事前に仲卸に共有することで、仲卸の物流負荷軽減、作業の効率化を目指した。仲卸は一週間分の予測数を参考値とし、作業計画や配車手配を実施することで、効率も考慮した計画をたて店舗からの発注に備えることができる。実店舗の発注・納品は通常通り納品LT2で実施する。
主な成果では、食品ロスや配送トラックの増便を増やさず、仲卸で発生する作業計画作成、ピッキングや荷積みなどの作業を40%削減可能と試算。
シナリオ3「店舗納品時間の変更」では、「sinops-R」による需要予測データを活用することで、開店前(9時~10時)に行っていた青果の配送時間を正午までに延長。これにより、従来は開店前の納品を重視するあまり、多数手配されていた積載率の低いトラックや非効率な配送を削減し、物流負荷軽減を目指した。一方、納品時間を変更した場合、開店後に納品・陳列作業が発生するため、店内に消費者がいる状態で陳列等の作業を行うことで作業効率が下がる懸念もある。そのため作業効率への影響も併せて試算した。
その結果トラックの積載率が35pt上昇したことでトラック台数を47%削減、仲卸で発生する作業計画作成、ピッキングや荷積みなどの作業を4%削減可能と試算。一方で、ドラッグストア店舗側では納品・陳列作業に伴う業務負荷が43%増加するという課題も見られた。
これらの取組みの成果を踏まえ、今後3年間で臨時配送トラックを30%削減、流通過程(発注・仕入れ・加工)における所要時間を30%超削減、さらに仲卸・小売段階での食品ロスの30%削減を目標とし、取り組みを継続していくとしている。
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