アメリカン・エキスプレスは11月30日、「2030年を見据えた運送企業の勝ち残り戦略~取引先の信用不安を解決する企業間決済とドラEVER社の成功事例~」と題し、運送会社向けの経営セミナーを約2時間半にわたって、東京会場とオンラインのハイブリッドで開催した。
このセミナーは「2030年を見据えた運送企業の勝ち残り戦略」に向けたもので、具体的には、「2024年以降の物流業界で勝ち残るヒントを探している」、「あらゆるコストアップ時代、とにかく収益性向上が急務」、「淘汰・統合の時代に、成長を続ける会社の取り組みを知りたい」、「新規取引先の与信審査に課題・不安があり新規案件の取りこぼしがある」、「未回収や遅延案件による取引先との関係に不安を抱えている」といった企業の経営における収益性の問題と企業間決済での課題の解決を目指したものとなっている。セミナーは4部構成とし、第1部第2部が講演、第3部がパネルディスカッション、第4部がネットワーキング(異業種交流会)となっている。
<船井総研ロジ物流ビジネスコンサルティング部の齊藤史織シニアコンサルタント>
まず第1部の講演に立ったのが、船井総研ロジ物流ビジネスコンサルティング部の齊藤史織シニアコンサルタント。運送企業の経営者向けに業界の最新動向と時流の解説、これからの勝ち残り戦略として、「2024年問題を乗り越えるDXとは~物流業界を取り巻く課題と、その対応事例~」を発表した。
齊藤氏は「物流業界を取り巻く環境」として、物量が低水準で推移していること、人手不足・高齢化、原価高騰&収益性悪化、それにより倒産・廃業・M&Aが増加している現実を指摘。そのため、荷主企業の物流体制・輸送形態の見直しが始まり、ようやく荷主企業でも2024年問題対策が行われつつあることを伝えた。今後物流業界は人が集まる会社と集まらない会社、デジタルの会社とアナログな会社、高生産性・高収益な会社と低生産性・低収益の会社に2分されるだろうと予測している。
「2024年問題対策」として、過程としてKPIの重要性を強調。そのKPIをDXで進めることがより重要としている。そして、KPIの内容を、「採用」、「営業」、「業務」の3つの柱について事例を示しながら説明。興味深い内容として、無形固定資産比率別(権利・ソフトウェア・のれん・IT投資額)にみた売上高営業利益率、売り上げ予想、営業利益予想との相関関係だ。その結果、売上に有意差はないが、営業利益には相関関係がみられ、無形固定資産比率が高いほど営業利益が高い傾向がみられることを紹介した。
そして、結びとして、1.採用・営業・業務の3軸、2.データ化なくしてDXなし、3.働きがい向上の視点を3つのキーワードとしているが、これらを実現できるのはいずれも人しかいないとして、今後人が最も大切な要素となってくる時代で、ポテンシャルを上げた取り組みが求められているとしている。
<アメリカン・エキスプレス加盟店事業部門 事業戦略本部の平野進本部長>
第2部では、アメリカン・エキスプレス(以下、アメックス)加盟店事業部門 事業戦略本部の平野進本部長が、業務管理改革の観点から物流企業の成功事例を企業間カード決済の導入メリットとともに紹介した。
まず、アメックスの説明から始めた平野氏。1917年にすでに横浜で事業所を構えていたとのことで、日本でビジネスを始めてから100年以上の歴史があり、世界190の国と地域で利用されているという。一般にカードというと、クレジットカードを想起し、個人の利用イメージが強いが、平野氏曰く「現在では、法人カード決済で数十万社に利用されています。この6年で3倍の取扱高の伸びをみせています」と話している。実際、政府もカード決済を支援しており、将来的に8割まで高めようとしている。しかし、現在はBtoCで36.0%、BtoBで12.5%に留まっている。※1
平野氏はここで3つの質問を参加者に投げかける。一つは、「これまで、クライアントからの支払い遅延で困ったことはありますか?」。これについては、回収率が78.4%で、21.6%が回収できていない結果を明らかにする。回収では「営業担当者が連絡し交渉した」が67.6%となり、企業にとり大きな負担になっていることがわかる。
二つ目の質問は「取引を開始する際に与信審査で課題を感じたことはありますか?」だ。これには、54.1%の人が課題を感じている。次いで取引先の倒産が48.4%、売掛金の貸倒や支払い遅延が45.0%に達している。
三つ目の質問が「資金繰りで課題を感じたことはありますか?」。これには、取引先へ支払いをする際、担当する企業間決済業務に課題を感じる人が資金繰りで55.6%となっている。
そこで登場するのが、アメックスの提供する企業間カード決済だ。例えば運送会社が加盟店となり※2、荷主企業がカード会員なら、運送会社には「与信審査・管理の手間とコストを削減」、「売掛金回収のリスクと手間を軽減」、「キャッシュフローの安定化」、「既存顧客の満足度向上」、「新規顧客獲得」のメリットが生じるとしている。
一方、荷主企業には「経理処理の簡素化・手間軽減」、「コストの一元管理(コストの見える化)、「キャッシュフローの改善(支払い期間の延長)、「入金漏れ・遅れの回避」、「ポイント・プログラム」といったメリットが考えられる。
平野氏は、カードによる企業間決済が売り手と買い手、双方の業務をスムーズにし、両者にメリットを生むことで、課題解決に貢献できるとしている。なお、加盟手数料だけはかかるが、初期投資なしで、実行できるだけに、現在好評を得ていると話している。
<ドラEVERの渡海克利取締役営業部長を含めた3人のパネルディスカッション>
第4部の、パネルディスカッションでは、ドライバー求人専門サイト「ドラEVER」を運営するドラEVERの渡海克利取締役営業部長と平野氏が参加し、齊藤氏がモデレーターを務めた。まず、渡海氏が考える業界の展望や、トラックドライバーの人材不足問題と解決策、企業間カード決済を導入して取引先の信用不安を解決した成功事例を語った。
ドラEVERは元々運送会社で、その一部門として、物流専門のドライバー求人サイトを立ち上げたもの。物流会社の合理化に寄与する事業を行っているグループ企業の一員。
ディスカッションでは様々な意見が出たが、共通するのは人の重要性。物流企業は一般企業と比べ労働時間で20%長く、給与で10%低いことから、この業界に若者を呼び込むのはこの課題が解決するしか抜本的な解決法はない。若者が入ってこなければ高齢化するだけで、企業としては成り立たない。ただ、同世代の物流未経験の若者の給与額はそんなに違いがなく、ここに若者を呼び込むチャンスがある。
その具体策として、挙げられていたのが、Z世代に有効な広告系メディアの活用、自社ホームページの活用、SNSの複数のメディアの活用だという。募集が少ない企業は1媒体しか使用していないパターンが多いという。これは、Z世代の若者が決して一つの媒体を信用していないからで、複数の媒体を調べて結論を出すという。人財確保がまずは生き残るためには必要かつ絶対的なことだと認識しておく必要があると結んでいる。
※1 出典:
•BtoC 決済比率 36.0% : 経済産業省「2022年のキャッシュレス決済比率を算出しました」(2023年4月6日)
•BtoB 導入率 12.5% : 経済産業省「キャッシュレス決済実態調査」(2021年)
※2:「加盟店」とは、アメックスと契約し、アメックスのオンライン請求システムを通じて商品やサービスを販売する許可を得た法人・個人事業主のこと。
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