CBREは4月23日、レポート「インフレと賃料の複雑な関係」を発表した。
レポートによると、日本の消費者物価(CPI)の上昇率は2022年に入って加速し、同年10月には消費税増税時を除けば約31年振りに3%を上回る上昇率を記録した。
2023年以降も鈍化傾向にあるものの、足元でもなお前年同月比+3%程度で推移しており、日銀はこの目標値が「安定的に続くことが見通せる状況になった」とし、3月18日・19日の金融政策決定会合で、マイナス金利の解除を決定した。
インフレが定着する兆しがみられるなか、第二次集計結果が+5.25%と昨年の水準を大きく上回り、物価上昇率の高まりは賃金の底上げにもつながっている。レポートでは、日銀が目指す「賃金と物価の好循環」がみられる環境となれば「賃料の上昇ペースも従前の水準を上回る可能性はある」とした。しかし、事業用不動産の市況は供給動向や構造的変化による需給バランスの影響も大きく、海外市場においても実際に不動産投資がインフレヘッジとして機能するのかどうかについて定まった見解はないという。
<オフィスと物流施設の賃料と消費者物価指数(CPI)の動向>
日本の事業不動産投資市場で投資額が最も多いオフィスと物流施設の賃料動向をみると、2020年以降、オフィスは下落傾向にあり物流施設は概ね横ばいで推移している。一方、CPIは特に2021年以降加速度的に上昇したが物流施設の賃料とは好対照になっていることから、「日本でも物価以外の要素が賃料動向に大きく影響している」と示唆した。
<首都圏物流施設の需給動向>
物流施設のテナント需要はEC市場の拡大や2024年問題対応を含む物流効率化の動きなどが引き続き需要を牽引し、首都圏では2023年の新規需要が過去2番目の高水準となった。しかし首都圏では新規需要を上回る供給が2021年・2022年・2023年と続き、2024年から2025年にかけても高い規模の供給が予定されている。このため「首都圏物流市場の空室率は向こう2年余り、昨年末の実績である9%付近で推移する可能性が高い」と予測。
しかし新規供給のリーシングが進み空室率が低下した局面で、日銀の目指す「賃金と物価の好循環」の環境が実現している場合、「これまでの実績を上回るペースで賃料の上昇が続く可能性はある」とした。
CBRE/首都圏の大型マルチ型物流施設の空室率は9.7%と横ばい