共同配送で期待されている効果
配送とは、原則として短距離であり、センターや倉庫などから複数の店舗や住宅などに貨物を届けることである。このため、共同配送も、都市内や地域内などでの面的な配送が対象となる。直送と共同配送を比較するとき、よく使用されている図がある。この図によれば、直送では、着地での車両台数が各3台(計9台)と多く、配送経路は9本であり、荷役(積・降)回数は計18回となる(図1)。
この結果、共同配送の効果として、「3か所の着地の貨物を1台に積載できれば、車両台数は3台から1台に削減でき」、「積載率が向上し、トラックの台数が削減でき、走行距離も短縮する」などと表現されることが多い。さらには、「物流コストの削減」、「交通渋滞の緩和」「総走行距離の短縮」「CO2削減による環境問題の解決への寄与」なども期待されている。
共同配送への素朴な疑問
一方で、共同配送の効果については、素朴な疑問もわいてくる。たとえば、「出発地での貨物車の積載率は、常に低いのだろうか」、「共同配送センターは、常に発地と着地の中間に位置するのだろうか」などである。
また、誰のためかを考えるとき、「台数の削減は、荷主にとって効率化になるが、物流事業者にとっては事業縮小になるのではないか」、「共同配送センターの建設運営は、物流事業者にとっては事業機会の創出であるが、荷主にとってはコスト増ではないのか」などである。これらの疑問を突き詰めていけば、共同配送の導入可否の検討につながっていくだろう。
共同配送で優先すべきこと
共同配送が万能ではないとすれば、その導入検討にあたっては、「何かを優先し、何かを断念すること」が重要と考えている。たとえば、3か所の発地の3種類の貨物について、「共同配送センターでの品揃えや小分けが必須」であれば、「いくら積載率が高くても、いくら遠回りで走行距離が増加しても、共同配送センターに寄らざるをえない」ことになる。なぜならば、流通センターで店舗別に仕分けするような場合には、共同配送センターでの作業が必要不可欠だからである。
この一方で、「品揃えや小分けが不要で、発地での満載」であれば、「走行距離も短く、積みおろしの回数も少ない直送を選択する」ことになるだろう。このように、共同配送の選択の可否は、優先すべき項目次第という面があるだろう。
直送と共同配送の選択にあたって
共同配送を選択するために、5つの項目(品揃え、積載率、走行距離、配送密度、到着台数)について、直送と共同配送に適した条件を考えてみよう(図2)。
第1の品揃えでは、配送にあたって共同配送センターで、店舗別の品揃えや小分けが必要であれば、共同配送が適していることになる。逆に、品揃えの必要もなく単に立ち寄るだけであれば、荷役回数の少ない直送が良いことも多い。
第2の積載率では、発地での貨物車の積載率が低ければ、途中で積合せをする共同配送が向いていることも多い。逆に、積載率が高いのであれば、共同配送センターに寄って積みおろしをするよりも、直送する方が荷役回数も少なく走行距離も短くなることが多い。
第3の走行距離では、共同配送センターの位置により大きく変化する。たとえば、発地と着地の中間に共同配送センターが位置していれば、走行距離も短くなる可能性が高い。しかし、都市での共同配送のように、発地が広く分布していて、一度郊外の共同配送センターに寄ってから、再度都心に向かうような場合は、走行距離が長くなることは多い。
第4の配送密度では、配送先(着地)の密度が高く一地域に集中しているのであれば、共同配送により短時間で配送できる。しかし、密度が低く配送先間の距離が長くなれば、時間もかかり、共同配送の効果は低い。
第5の到着台数では、配送先(着地)において到着台数を削減したいとき、共同配送が適していることは多い。しかし、共同配送センターの位置によっては遠回りになってしまい、貨物車の走行距離が長くなることも多い。
結局のところ、共同配送は、「誰のために、どの項目を優先するか。逆に、どの項目なら我慢できるか。このとき、共同配送に適した条件を満たすか否か」などが重要と考えている。
連載 物流の読解術 第19回:共同配送センターの位置と平面型共同輸送-物流共同化を考える(7)-