昨年9月に開催された国際物流総合展で、最新鋭のロボットやシステムが並ぶ中、ユニークなブースが設けられた。物流会社向けにノベルティ制作やユニフォームデザインなど提案するという。出展者CAPESは、物流センター立ち上げ、自動化設備導入などを支援する物流コンサルティング会社。どうしてここまでやるのか。なぜ物流にクリエイティブの力が必要なのか。代表取締役の西尾浩紀さんと、ブランドディレクター・コミュニケーションプランナーの澄田果林さんに話を聞いた。
■異彩を放ったブース出展
CAPESが国際物流総合展の会場ビッグサイトで出展した、その名も「物流百貨店」。梱包資材など物流現場でよく見る色や柄をモチーフにした、グッズが並んだ。オリジナルクラフトビール「LOGI BEER」の缶もカラフルだ。
ブースに立った澄田さんによると、「ほとんどの人から『何の会社ですか?』と聞かれました」。
コンサル業と並行し、倉庫内サインや空間のデザイン、企業ブランディングのためのグッズ制作など提案していることを説明すると、「実は自社のノベルティ、ありきたりだと思っていました」。そんな声も返ってきた。出展を機に、複数の商談が進んでいるという。
ビールの反応も上々だ。こちらは物流業界で働く人をねぎらう1杯であると同時に、たくさんの人を介して物流が成り立っていることを生活者に知ってもらうためのアイテム。フェスなどに出店すると、狙い通り、若い人たちが一目見て「かわいい」と手に取っていく。
「実は物流の会社が販売しているビールだと伝えると、会話を通じて『物流なしには暮らせない』と気付いてくれる。ふと物流の重要性を意識する、きっかけづくりになっています」と澄田さん。
■原動力は「暗いイメージを変えたい」
西尾代表は大学卒業後、ジュピターショップチャンネル、アビームコンサルティングを経て2015年、モノタロウ入社。モノタロウではAGVピッキングシステムを始めマテハンを多数導入した9万m2の物流センター立ち上げを率いた。経験を生かし2018年、1人でCAPESを設立した。現在40歳。20~30代のメンバーが加わり、10人ほどで稼働している。
振り返って、西尾代表はこう語る。「物流業界で働く人がもっと胸を張れるようにしたい。私自身、新卒当時は世間から暗い仕事だと思われていると感じ、物流の仕事にポジティブなイメージを持てていませんでした。そこを変えたいという思いが原動力になっています」。
CAPESの売上高の8割がコンサル事業によるものだが、デザインや文化創造に関わるクリエイティブ部門の事業は必須だとこだわる。
欧米では誉れ高い仕事のイメージがあり、物流を経験していなければ経営者になれないほど重要視されるが、日本では特定荷主のCLO(物流統括管理者)設置義務化もこれから。西尾代表は、実際の仕事の重要性と世間のイメージにはギャップがあると見て、業界内からポジティブな発信をしていきたいのだという。
人口減少、人手不足が深刻な社会課題となる中、若者や女性にも就労先として選ばれるよう、物流現場も労働環境の改善が求められている。
そこでCAPESは、優秀な人材を物流業界に呼び込むとともに、「働き続けたい」と思わせる構造づくりとして、物流センター内の動線を良くしたり、ビジュアルに統一感を持たせつつ分かりやすいサインを考案したり、空間デザインも手掛ける。
庫内サインは、無料でダウンロードして使えるタイプも用意。現場に溶け込むシンプルさで、少しホッとするものを提案している。
■モノが安く早く届いて当然か
CAPESは人材育成事業にも力を入れている。多くの物流会社が「自動化や効率化を推進できる人材が社内にいない」「プロジェクト管理やファシリテーションの苦手な担当者が多い」といった課題を抱えているからだ。
企業から個別に相談を受け、ニーズに合わせて新入社員研修から専門領域の研修まで、さまざまな教育サービスを提供する。
またプロロジスのパートナーとして、西尾代表は「プロロジスアカデミー」の講師も7年前から務めている。将来の役員クラスを目指す若手を対象に毎年度、少人数制でディスカッションやケーススタディーを重ねる。
こうした教育場面で西尾代表は、時に「理想の物流センターの絵を自由に描いてみよう」などと投げ掛けてみる。ところが、みんな手が動かない。
物流現場の思考の特徴として、運送会社はどちらで、要求されるリードタイムはどれくらいで、等々、現状の最適化を進めることにとらわれ、制約なしに考えることが苦手な傾向にあるという。
西尾代表は「自動化も効率化も生産性向上も、もちろん重要です。しかし、安く早く届いて当たり前だった時代は続きません。高くて遅くてもいいと思ってもらえるような新たな価値を生み出すにはどうすればよいか、真剣に考えたことはあるか。そこが圧倒的に足りないと感じます。物流=コスト、安いほど良いとされ、人件費を抑える。そんな所で働きたい人はいませんよね」と話す。
そして、こんなアイデアで揺さぶる。
――トラックがアーティストとキャンバスを乗せ、絵を描きながら輸送するサービスがあるとする。作品を求める客にとっては、配送料が高く、即日配達でなくても、時間をかけて届けられる絵には価値がある――
前例踏襲が最善かと疑ったり、価値の置き換えにトライしたり、そんな場面でクリエイティブ思考が生きてくる。
■業界の裾野を広げて活性化
CAPESが物流業界の内外に向けて取り組むのは、物流業界の裾野を広げることを大切に考えているから。
物流というと「梱包」や「配送」を典型的な仕事として思い浮かべる人は多い。しかし見えていないだけで、広く捉えれば部品の調達も、製造も、ラベルの制作や箱のデザインも、さらにはドライバーが利用する食堂や宿泊所などでも、たくさんの人が物流に関わって働いている。
澄田さん自身、異業種からの転職で、以前は物流をこんなに身近なものとは理解できていなかった。「物流の仕事の魅力を発信することで、かつて働いていた人が戻ってくる、働いている人のモチベーションが上がる、関心のなかった人が就職先として考えるようになる、そんな広がりが生まれればと考えています」と話す。
CAPESのオフィスでは、ECサイトで扱うオリジナルグッズを直接購入でき、最近ではトラック、鉄道、航空機など国内外の物流を想起させるデザインの古着も集め、販売している。物流をもっとかっこよく、おしゃれに、がモットーだ。
西尾代表は言う。「楽しそうに仕事しているな、面白そうだな、そんなふうに見える物流会社が増えていくことに意味があると思うんです」。
取材・執筆 稲福祐子
【CAPES】
所在地:東京都目黒区青葉台3-1-6
Webサイト:https://capes.jp/
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