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経済産業省/新経済成長戦略で、物流インフラ整備重視

2006年06月12日/SCM・経営

経済産業省は、新経済成長戦略を「国際競争力の強化」と「地域経済の活性化」を二本柱とし、継続的に人口が減少するという逆風の下でも「新しい成長」が可能なことをまとめた。

「新経済成長戦略」詳細は、下記アドレスを参照。
http://www.meti.go.jp/press/20060609004/senryaku-hontai-set.pdf

物流についての主な内容は下記の通り。

流通・物流サービスについて
(1)流通分野
流通ニーズが多様化・高度化する中で進んでいる、卸・小売の事業所数の減少、企業間の合併等、集約化の動きは、高度な消費文化や狭隘な国土といった制約の中で、流通分野の生産性向上に寄与していると言える。

その上で、情報技術をより効果的に活用しメーカー・卸・小売間のサプライチェーン全体で円
滑に情報共有するなど、効率化・高付加価値化する環境が必要である。

ネット取引は、生産性の高い新たな流通手法として注目されているが、取引が増大する中、取引主体の匿名性ゆえに、不十分・不適切な情報提供や詐欺等、消費者保護が十分図られない面があり、更なる発展の阻害要因となりかねない。

(2)物流分野
物流は、単に財を物理的に移動する機能にとどまらない。生産と消費の間の財の流れ(=物流)に関する情報共有を通じて、自社と取引先を含むサプライチェーンの全体最適化と効率化が可能となる。

こうした物流機能の重要性を踏まえ、物流事業者は、IT活用による在庫管理、共同配送、配送経路の見直し等、より付加価値の高いサービスや物流改革を荷主に提案していくことが重要。

また、わが国物流分野では、国際物流及びこれに接続する国内物流のトータルコストやリードタイムにおいて国内物流の占める比重が高い。このため、国内物流の生産性の向上を図ることが必要であるとともに、国際物流と継ぎ目の無い連結の実現を図ることが必要。

[具体的施策]
①流通システムの情報化・標準化による効率化・高付加価値化
企業間商取引でやりとりされるデータのうち、消費ニーズへの対応において差異化の源泉にならない部分について標準化を推進する。

また、最新のテクノロジーを活用して、生産から消費に至るまでの流通全体の効率化・付加価値向
上を実現するとともに消費者満足を向上させる「フューチャーストア構想」を推進するなど、流通システムの高付加価値化を図る。

中小卸・小売等についても、消費需要の多様化に対応すべく、販売情報等の情報収集、安定した商品調達力等のリテールサポートの強化、製・配・販や業種・業態を融合した新たなビジネスモデルの構築を図る。

②インターネット取引における消費者保護の徹底
利用者、消費者が安心・安全に取引できる環境の整備を図るため、不適切な広告表示の排除や法令で求められた表示事項の遵守確保、安心・安全な支払方法の普及を促進。裁判外紛争処理(ADR)メカニズムの充実に向けた取組を支援する。

③国際・国内の物流システムの標準化等を通じた生産性の向上
輸出入や港湾手続に関する電子化の促進、電子タグやコンテナの標準化等を通じた国際的な物流基盤の整備等により、国際物流と国内物流の継ぎ目のない連結の実現を図る。

また、パレット等の輸送機材の標準の普及、電子タグ等の情報技術の標準化や実用化の促進、安全・安心、確実で、標準的な物流サービスを持続的に提供出来る方策の検討等により、国内物流の生産性の向上を図る。

生産手段とインフラのイノベーションについて
〔目標〕
生産手段の新陳代謝の促進と産業・物流インフラの戦略的整備を通じ、経済成長と競争力を支える良質な資本形成を促進する
〔問題意識・課題〕
・これまでの我が国の経済成長は、資本投入の拡大と生産性の向上が寄与してきた。しかしながら、少子高齢化・人口減少の進行により、貯蓄率の一層の低下を通じて、国内における資本蓄積が減少し、経済成長の低下圧力となることが懸念される。

今後、我が国が経済成長を続けていくためには、海外からも資本を呼び込むことで資本の量を確保すると同時に、国内において生産性向上につながる質の高い資本投入、すなわち良質な資本形成を促進していくことが重要な課題となる。

・特に、経済成長を支える企業の競争力を維持・強化する観点からは、資本の中でも、「設備」と「インフラ」の効率を高めることが重要である。

企業がその生産手段である設備の効率を高めるため、思い切った設備投資ができる環境整備を行うとともに、アジアとの最適分業体制の進展や地域産業集積を踏まえた産業・物流インフラの整備・機能強化を行う必要がある。

(2)産業・物流インフラの戦略的整備の必要性
・我が国の経済成長を支える良質な資本形成を促進する観点からは、産業の競争力を高める産業・物流インフラのあり方も重要な要素である。

・ITの急速な発展は、情報の瞬時の伝達を可能とし、距離という概念を取り除いたが、「モノ」の移動は、時間と距離の制約からは逃れられず、依然として企業にとっての大きなコスト要因として残されている。

・我が国企業は、経済のグローバル化・国際競争の激化に伴い、製造業を中心として、アジア諸国を始め開発・生産・販売拠点等のグローバル展開を進めている。

例えば、高度な部品・材料や付加価値の高い製品を国内で開発・生産し、アジア諸国で汎用品の生産や完成品の組立を行い、欧米等最終消費市場に輸出するなど、アジアを中心とした最適分業体制の構築しつつある。これに伴い、必然的に「モノ」の移動が増大し、企業の物流コストを押し上げることが予想される。

・企業の競争力に影響を与える物流コストの低減のためには、港湾や空港といった物流インフラの整備・充実が重要な役割を果たすが、かつてアジアのハブ港湾であった神戸・横浜・東京は今や香港・シンガポールや上海・釜山等に取扱量で大きな差を付けられている。

空港に関しても、中国、韓国など東アジア地域で複数の滑走路を有する大規模空港の整備が進んでおり、我が国の国際的地位は低下してきているのが現状である。

空港は、観光立国の実現や国際物流機能の向上などによる国際競争力・地域競争力の強化等を図るために不可欠な航空輸送を支える基盤であり、特に大都市圏拠点空港(成田、羽田、関空、中部)の機能強化は我が国全体の競争力の向上にとって重要な役割を果たすものである。

さらに、空港・港湾などの物流拠点と高速道路とのアクセス状況についても、欧米と比較して依然として低い水準にある。これを放置すれば、取扱量の減少等が物流コストの増大を招き、産業立地の低迷や企業の国際競争力の低下につながるおそれがある。

・既に政府としては、昨年11月に総合物流施策大綱(2005-2009)を閣議決定し、国際拠点港湾・空港の機能向上、空港・港湾アクセスの整備を始めとする国際・国内の輸送モードの有機的な連携による円滑な物流ネットワーク構築に関する諸施策を進めつつある。

今後、アジアとの最適分業体制の急速な拡大が見込まれることを踏まえると、特にアジアにおける効率的なサプライチェーンの実現に焦点を当てた戦略的な物流インフラの整備・機能向上が急務となる。

・また、物流インフラは地域における産業立地の観点からも重要である。例えば、我が国の臨海部における産業集積は、港湾拠点とともに発展してきた。

最近では、地方の整備された港湾とその周辺地域に最新鋭工場等が立地する例が多くなり、また、北部九州において自動車産業等の集積が進んでいる。

物流インフラが、地域の産業集積と有機的に連携することができれば、当該産業集積に関連する企業の物流チェーンが効率化され、競争力の向上につながるとともに、当該地域の物流インフラの利用コストが下がることが更なる企業立地を呼び込むといった、「産業集積を通じた地域活性化と企業の物流コストの低減の好循環」を産み出すことが可能となる。

実際に近年新規工場立地の大半が高速道路インターチェンジ周辺で行われており、また、高速道
路整備と合わせた企業立地も行われている。このような産業集積と物流インフラの連携は、我が国の国土の狭さを逆に強みに転換する効果もあると考えられる。

・日本の製造業の強みは、高い技術に裏打ちされた部品・材料等を供給できることにあり、その高速輸送手段である航空輸送の効率を向上させることにより、更に競争力を高めることが期待される。

加えて、このような付加価値の高い製品の研究開発と生産活動を国内において一体的に行っていることも日本の強みの一つである。

したがって、日本国内での協業・分業体制も考慮し、都市-地方間において、モノだけでなくヒトの流れの効率化を図るためのインフラ整備が、国際競争力の向上、地域経済活性化につながるものと考えられる。

・こうした産業インフラの整備は、主に公共投資により行われるものであるが、近年は財政再建の要請から減少傾向にある。今後は、従来型の「量」を重視した公共事業とは性格を異にする、限られた財源の中で既存資産の機能を最大限引き出す形での「質」を重視した戦略的なインフラ整備が求められる。

加えて、企業のグローバルな競争が激化している中、こうした物流インフラ整備への取組は時間軸を意識したスピード感のあるものでなければならない。

(2)産業・物流インフラの戦略的整備
①アジアとの「距離」を短縮する港湾等の機能強化
・我が国企業のグローバル展開、特にアジア最適生産体制の進展等に伴い、アジアとの貨物輸送量が増大している。

また、トラックのシャーシごとコンテナを積載する国際フェリーやRORO船を活用し、これをトラック輸送、貨物鉄道などの国内の陸上輸送と組み合わせる複合一貫輸送が増大しつつある。

このため、国際基幹航路確保のためのスーパー中枢港湾プロジェクトを推進するとともに、アジア諸国との「時間距離」が短く、ゲートウェイとなる九州などの港湾のターミナル機能の高度化、車両の相互乗り入れの円滑化等を図る。

また、陸海複合一貫輸送の促進のため、港湾アクセス道路の整備、貨物鉄道と国際フェリー等を組み合わせて輸送する「SEA&RAILサービス」の展開を促すための長距離鉄道貨物の輸送力増強を図る。

②地域産業集積と物流インフラの有機的連携の促進
・北部九州の自動車産業に見られるような、地域における特色ある産業集積を物流インフラの整備や機能向上と結びつけることにより、地域の活性化と企業の競争力強化の同時達成を図る。また、港湾機能の強化と連携する形で、臨海部工業地帯の産業集積の再活性化や大都市圏環状道路の整備等による地域産業集積と国際物流拠点の一体化を図る。

・関西や九州地域においては、産学官の連携による地域活性化のための総合的な物流ネットワーク構築に向けた検討が行われている。こうした産業界・学界・自治体・関係省庁等の一体的な取り組みを各地域において促進することにより、物流インフラの効率化を通じた地域産業の活性化・企業の競争力強化を図る。

③我が国産業の強みを活かした空港等の機能強化
・我が国の高度な部品・材料の供給基地としての性格を強める中、国際物流に占める航空輸送の重要性が増大しつつある。国内に付加価値の高い製品を開発・製造する企業を確保し、その競争力を高める観点から、製造業にとって使いやすい効率的な大都市圏拠点空港(成田、羽田、関空、中部)の存在が重要である。

このため、成田空港については2009年度内に約1割の能力増強のための施設整備、羽田空港については2009年内に約4割の能力増強のための施設整備とともに国際定期便の就航を図るほか、関西国際空港において2007年に2本目の滑走路を供用するなど、我が国の経済活動を支える国際物流・人流の基盤となる大都市圏拠点空港の整備・活用を重点的に進めるとともに、空港への道路アクセスの向上、24時間化の実現、電子タグの導入・活用による通関手続等の効率化を図る。

・また、日本の製造業は研究開発機能と生産機能の一体化・連携を強みとしている。都市部の研究開発拠点と地方の生産拠点の緊密化により競争力を一層高める観点から、地方空港の有効活用、関連する道路・鉄道等を含め、総合的に産業インフラを整備することにより、都市部と地方の人流を含めたコミュニケーションの効率向上を図る。

④国際物流競争力のための官民連携の強化
・グローバルに経済活動を展開する我が国企業にとって、製品を製造拠点から販売市場に迅速かつ効率的に投入できるSCMを確立することが国際競争力を左右する。

しかしながら、前述の国内における物流インフラ上の課題に加え、日本企業が展開するアジア諸国における物流インフラや関連制度の整備が不十分という問題がある。

このため、物流事業者の国際展開を含め、我が国企業のグローバルな経済活動をサポートするには、グローバル企業がSCM上に抱えるボトルネック(物流インフラの未整備、非効率な通関制度、貨物航空便数の不足等)を抽出し、その原因を地域別・主体別(日本政府、現地政府、物流事業者等)に整理し、課題解決を図る必要がある。

このため、関係産業界(航空会社、海運会社、フォワーダー、商社、物流ユーザーである製造業・流通業、その他関係産業)及び関係省庁(経済産業省、国土交通省等)が密接に連携して、機動的に課題解決策の検討と対応を進める体制を強化する(国際物流競争力パートナーシップ)。

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