日本郵船は9月27日、自動運航の実現に向けた船橋(せんきょう)の新たなコンセプトを完成させ、グループが船舶管理を行う大型コンテナ船に採用したと発表した。
情報統合型船橋と呼ぶ新コンセプトでは、船橋や航海計器のデザインと配置を人間工学に基づいて最適化するとともに、機器のIoT面を強化し、航海の安全と効率の向上を図っている。
コンソール(操作卓)は、主要な航海情報の確認や機器の操作を手元で同時に行えるよう、従来比3分の2程度のサイズに統合配置しており、周囲の状況把握に集中しやすいよう着座式を採用。
加えて、衝突を避けるための避航操船も着座状態で容易に行えるようジョイスティック式オートパイロットを採用したほか、緊急時の手動操舵用のミニホイール(舵輪)をコンソールに設置するなど安全に配慮した。
船橋全体では、窓の大型化や窓間部分での死角の最小化、ワイパーの遠隔操作機能の採用、船橋形状の最適化などを図り、着座位置から十分な視界を確保し、航海当直時の労働環境向上や疲労低減が可能な配置設計とした。
出入港や離着桟時などウイング(船体左右に出ている船橋の張り出し部分)での操船を考慮して大型窓と床窓を採用し、遠隔操作スタンドやマルチファンクション・ディスプレイを配置したコンソールなどを設置した。
航海士と水先人による船橋内での情報共有を効率的に行うため、日本郵船がMTI、日本無線と共同開発した「J-Marine NeCST」を導入したことで、多くの船舶が行き交う輻輳海域などで航海士の当直人数を増やした時でも容易に情報を共有でき、ヒューマンエラーや機器の故障による重大事故の予防効果向上が期待できる。
情報統合型船橋は、自動車専用船・原油タンカーへの採用が決まっており、ほかの船種への採用についても検討が進められている。
将来的には、自動運航船の実現も視野に入れ、情報統合型船橋をさらに進化させる予定だ。