日本通運は6月21日、日本電気(NEC)とDX(デジタルトランスフォーメーション)による価値共創に向けた業務提携契約を6月17日に締結したと発表した。
DXによる価値共創への取り組みとして、1.短期的な取り組み‐IoTを活用した倉庫オペレーションの効率化・省力化・無人化、2.中長期的な取り組み‐デジタル技術を活用した両社の新たな事業の発掘と創造を実施する。
短期的な取り組みとして、IoTを用いて倉庫現場の人や物の動きなどを高速かつ適切にデータ化し、AIによりタイムリーに分析することで、作業員のノウハウや暗黙知をデジタル化する。これにより、倉庫のパフォーマンスを最大化し、労働力不足の解決に寄与するとともに、作業員が安全・安心に働ける環境を実現する。
将来的には、輸配送現場も含めた物流現場全体での事故ゼロや人員配置最適化にもつなげていく。また産業軸では、重点領域である電機・電子から始め、半導体、自動車のサプライチェーンへの展開も検討している。
中長期的な取り組みのひとつとしては、距離を超えて人が人を支える社会づくりの可能性を探索する。働き手が減少している産業、労働環境の悪い場所、危険な地域、地球の裏側など、これまで人力による作業の提供が困難であった場所で、AIや遠隔操作ロボットなどを用いて作業を提供することを想定している。
最初は、日本通運の倉庫作業の遠隔操作で実証を開始し、ロボット操作人材の育成や動作プログラムの構築などを通じて知見を蓄積する。世代、国境、産業の垣根を越え、社会の発展を支える。
また、サステナブルな社会実現に向け、物流プロセスにおける CO2排出量の可視化と削減をテーマに掲げ、取り組む。自社の改善に留まることなく、パートナーや顧客などサプライチェーン全体へ拡大することで、社会の環境負荷低減に向けて活動していくとしている。
日本通運は、世界最大級の物流ネットワークと蓄積された高度なロジスティクスのノウハウとあらゆる輸送手段を駆使し、社会インフラの一端を担う企業として安定したサプライチェーンの維持に努めている。
NECは、「Value Chain Innovation:企業と産業のDX」をコンセプトに、AIやIoT、ロボット制御など最先端のデジタル技術を活用し、顧客企業のDXを支援している。
両社は、2013年にグローバルな物流サービス事業の強化に向けた業務提携契約を締結し、日通NECロジスティクス社を運営するなど、これまでも物流の高度化・効率化に取り組んできた。
日本通運は、創立100周年に向けた長期ビジョンにおいて「イノベーションによる新たな価値創造」を掲げている。今回の取り組みを通じて、物流現場でのデジタル化の推進、高度化を行い、また新たな成長領域を創造することで、サプライチェーン全体のDX実現を目指す。さらに、グループ一体となって社会課題を解決することで、持続可能な社会の実現に貢献していくとしている。