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英国規格協会/サプライチェーンへ浮上してきた3つのリスクを分析

2022年02月17日/SCM・経営

BSIグループジャパン(英国規格協会)は2月16日、最新のBSIサプライチェーン・インサイトレポート「2022年の5つの重要課題」により、グローバルサプライチェーンにおいて、「犯罪組織」「気候変動」「コンバージェンス(脅威の融合)」がリスクとして浮上していることを明らかにした。

ビジネス改善企業で標準化機関であるBSIグループは、BSI独自のウェブベースのインテリジェンスシステム「Connect Screen」のグローバルデータの分析を基に、これらの脅威の重要性に関するインサイトを提供するとともに、リスクを軽減し対策を講じるためのベストプラクティスの分析と、実践的なガイダンスをまとめたものだ。

それによると、グローバルサプライチェーンにおける主なリスクとして、まず犯罪組織を挙げている。新型コロナウイルスによるパンデミックは、世界中のあらゆる規模の企業に「適応することの重要性」を示したが、犯罪組織も例外ではない。BSIは2020年に、倉庫管理、輸送、流通に携わる正規の企業を装い、物流サプライチェーンに侵入しようとする犯罪組織が相当数存在していることを確認し、犯罪組織が増加している国での偽装運送業者の問題を指摘した。

さらにBSIは2021年にかけて、南アフリカにおいて、失業率の上昇が組織犯罪や貨物トラックのハイジャックの増加と密接に関連していることを報告している。2021年上半期に失業率が32.6%に上昇したため、ハイジャック犯罪も約24.6%増加1した。

同様に、世界中の麻薬カルテルもよりクリエイティブになっている。BSIでは、ヨーロッパにおけるコカインの押収数および押収量が2020年と2021年に着実に増加しており、2022年も引き続き増加すると予測している。エクアドル、ブラジル、コロンビアの犯罪組織は、大量のコカインをヨーロッパの港に出荷している。ベルギーのアントワープ港とオランダのロッテルダム港は、ラテンアメリカからのコカインの最多・最大の押収量を記録しているが、アイルランド、フランス、モンテネグロ、ギリシャでは著しい量の出荷停止があり、麻薬カルテルのルート多様化が一段と明らかになっている。麻薬密売市場はラテンアメリカとヨーロッパの間だけでなく、BSIはアジア、中東、アフリカ、北アメリカからも多数の麻薬が押収されたことを記録している。

これらの問題において、企業はサプライヤーを採用する際の適切なデューデリジェンスを行う必要性があると考えている。企業のサプライチェーンのエンド・ツー・エンドのリスク評価を行うことにより、世界中における個々の企業との提携に潜むリスクを軽減することが重要だとしている。

2点目は、気候変動―サプライチェーンのグリーン化。世界中の企業が、気候変動の影響から自社のサプライチェーンを守り、より環境に優しい未来に向けて自らの役割を果たすことを求めている。進化し続ける規制環境の中でESGコンプライアンスを維持するには、サプライチェーン全体への影響を考慮する必要がある。例えば、BSIは2021年に、複数の業界にまたがる少なくとも18社が、アマゾンの森林破壊を助長している企業から製品を調達していることを確認した。このような関連性は、企業に重大な風評被害をもたらし、最終的には収益の低下を招く可能性がある。

さらに2021年は、平均以上だった出荷遅延の傾向が回復したものの、8月に米国で発生したハリケーン「アイダ」や9月に中国で発生した台風「チャントゥ」に起因した、グローバルサプライチェーンの混乱により、カリフォルニア州の施設に到着する貨物の頻度が低くなり、累積的に様々な遅延を引き起こした。これにより、米国の輸入量の約3分の1を占めるロサンゼルス港とロングビーチ港に新たな負担がかかった。気候変動によって自然災害の発生頻度が高まることが予想される中、企業はこのような不安定な状況の中で、従来のサプライチェーンのパートナーをはじめ、手法や技術を見直し、その先を見据えた施策を講じる必要があるとしている。

最後にコンバージェンス(脅威の融合)―積み上がる課題を挙げている。サプライチェーン全体におけるリスクは、組織が事業継続性、持続可能性、企業の社会的責任(CSR)、セキュリティなどの個別の検討事項を包括的に対処せず、それらが相互に関連していることを認識していないというリスク。事業継続の脅威はセキュリティの脅威につながることもあれば、その逆もあり得る。

半導体の世界的な供給不足は、その典型的な例だ。台湾は、世界の半導体チップ製造能力の約90%を有しており、その過剰な依存が世界的な半導体不足を招いた。さらに、2020年4月から7月にかけて台湾で発生した干ばつや新型コロナウイルスの感染拡大などが生産能力に影響を与え、世界的な供給不足に拍車をかけている。

6月には、香港で高価な半導体チップを輸送中のトラック運転手の助手が犯罪グループに襲われ、65万ドル相当の貨物が盗まれる事件が発生するなど、セキュリティ面での懸念もあった。また、半導体の模倣品の横行も指摘されている。ある日本企業が自社の半導体の流通を調査したところ、30%以上が模倣品だったことが明らかになった。

コンバージェンスに対応するには、企業がコラボレーションを強化し、組織のすべての部門とそのパートナーがサプライチェーンに対する統合的な脅威を理解し、チームが協力してそれに対処することが必要。企業は、グローバルサプライチェーンの状況と、その進化し続けるダイナミクスが将来にどのような影響を与えるかについて、明確なインサイトを持つことが不可欠としている。

結論として、進行中のパンデミック、不可逆的な気候変動、進化し続ける規制制度、複数のビジネス課題の集約は、組織が困難な決断を迫られていることを意味する。組織は積極的かつ先見性を持って、変化を受け入れる必要がある。組織にとって、サプライヤーのパフォーマンス監査は重要であり、サプライヤーがそれぞれビジネス関係を正しく管理していることを確認する責任がある、ということを理解する必要がある。

私たちを取り巻く課題の収束に取り組むには、組織内だけでなくバリューチェーン全体で、モノの相互関連性を十分に理解することが極めて重要。そして、柔軟で拡張性のあるフレームワークを確立し、変化を恐れるのではなく、むしろ変化を歓迎する文化を醸成すること。前例のない気候変動を背景に、企業は進化し続ける規制に迅速に対応し、これまでとは異なる方法でサプライチェーンを理解する必要がある。企業が世界的なパンデミックから学んだ教訓を活かしてよりレジリエントになろうとする中で、「消費者行動の変化」と「自動化」は、注視すべきもう一つの重要なトレンド。2022年は、再び重要な年になることを確信している、と締めくくっている。

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