日立製作所は九州地区を中心に食品や酒類などの卸売業を行うヤマエ久野との協創を通じて、多様な顧客向けの商品を取り扱う汎用倉庫での食品カテゴリーの発注業務で、AIにより需要を予測し、適正な在庫量を勘案して、自動発注をするシステムの稼働を4月から開始した。
システムは、これまで多様な業種に豊富な実績のある日立のLumadaソリューション「Hitachi Digital Solution for Retail/需要予測型自動発注サービス」を応用したもの。ヤマエ久野ではシステム導入により、稼働開始後2か月(2024年6月末)の時点で、複数の熟練担当者が1人・1日あたり約3時間を要していた発注業務時間を約1時間半に短縮(約50%削減)できたことを確認した。
汎用倉庫は多様な顧客向けの商品を扱うため、需要の予測が難しく、システムを導入しても発注時間の短縮などの効果をあげることが難しいとされてきた。これに対し、特定の取引先からの大幅な受注増を検知し、過学習を抑制する「スポット特売機能」を実装することで、需要予測精度が安定化し熟練担当者が算出した発注数量と同水準で発注計算が実施できることを確認した。
また、汎用倉庫は各倉庫やエリアによって多様な特性が出るため、標準化された需要予測自動発注システムでは効果の最大化が難しい傾向がある。 今回の取り組みでは、倉庫のサイズや取り扱いアイテム数が異なるなどに応じた、最低在庫や発注頻度の「自動チューニング機能」などを実装することで、複数の異なる拠点(4拠点)にシステムを適用することに成功した。
今後、ヤマエ久野としては販売エリアの拡大に対応するため、発注作業担当者を集約しつつ作業の生産性を高めていく予定。また、物流2024年問題への対応のため、仕入先からの入荷回数や仕入数をコントロールすることで倉庫内作業の効率化の実現もめざす。さらに、ヤマエ久野と日立は、ヤマエ久野の業務効率化や働き方改革、食品ロスの削減を推進するとともに、システムにより算出されたデータを活用したサプライチェーン全体の最適化に取り組むとしている。