欧州連合(EU)は1月30日、新しい税関到着前セキュリティ・安全プログラム「輸入管理システム2(ICS2)」の適用範囲を、2024年4月1日から鉄道、道路にも拡大すると発表した。
これにより適用済みの航空、海上、内陸水路に加えて鉄道、道路が適用対象となり、すべての輸送手段に対して標準化された到着前通関手続きが導入されることになる。
ICS2は、EUに入る貨物の安全性とセキュリティを強化することを目的としたもの。
輸入貨物がEU域内に到着する前に、正確かつ完全な搬入略式申告(ENS:Entry Summary Declaration)データの提出を義務付けることで、税関当局が輸入貨物に関連するリスクをより適切に評価できるようになる。
これによりEUの関税法違反の防止・取り締りにおける機能が向上し、最終的にはより安全かつ確実な貿易環境が確保されるという。
2025年4月1日以降、道路および鉄道輸送業者はEUを仕向地とする、またはEUを経由する貨物について、到着前に必要事項を記入したENSの提出が義務付けられるようになる。
この義務は、上記の輸送手段を使用して貨物を輸送する郵便事業者、宅配便業者、運送業者などの経済事業者にも適用される点には注意が必要だ。
また、特定の状況下では、EU域内に所在する最終荷受人にもICS2によるENSデータの提出を求められる場合もある。
当該期日までにICS2に対応する準備が整わない経済事業者は、遅くとも2025年3月1日までに事業者登録・識別(EORI)番号を取得したEU加盟国のナショナルサービスデスク(国家税関当局)に連絡の上、猶予期間の申請を行う必要がある。猶予期間は、申請が行われた場合のみ許可されるシステムだ。
ICS2の要件に準拠するために、対象事業者には、顧客から正確かつ完全なデータの収集、ITシステムと業務プロセスの更新、従業員に対する適切なトレーニングの実施が求められる。
また、経済事業者は税関当局にアクセスしてメッセージを交換する能力を検証するため、ICS2接続前に、自己適合性試験を確実に完了する必要があるという。
貿易業者がICS2の要件を期限内に満たさない場合は、貨物はEUの国境において差し止められ、税関当局による通関許可が得られない可能性がある。