Z世代の活かし方・育て方(18)
今回は、物流KPI活動でしっかり成果を出すために欠かせない、成功のためのアプローチとして、私が活用しているKPIロジックツリーの事例を紹介します(第16回もご参照)。
1. 全社的なKPIゴールを現場活動に落とし込み連動させる
「5ステップ・ KPI活動ロジックツリーのフレームワーク」
皆さんの会社組織での日常活動は、全員の前向きな実践行動が組織のゴールや目標達成につながっていると、実感できていますか?
自組織や会社全体の方針やゴールを明示して、その内容に従業員も納得感があり、積極的に協力し、最高のパフォーマンスを発揮してくれて、結果的に、業績が好転したり取引先が喜んでくれたりする好循環にしたいものですね。
残念ながら、全社としての明確な経営方針や中期計画目標(業績、施策等)を打ち出しているにもかかわらず、第一線メンバーへの説明が不十分で、現場での改善活動への落とし込みが弱いと感じる企業も多いです。
現場への周知徹底・共有化が弱く、日々の改善活動に熱気が感じられない企業があります。結果系の粗いKPIデータ集計(例:交通事故や労災事故、商品破損件数)のみにとどまり、この悪い結果データに悪影響を及ぼす原因系KPIデータまでを掘り下げ、実態把握して全員で共有化、教育や改善活動に活かせていない企業もあります。もったいないですね。
このような企業は、改善の王道である「PDCA改善サイクル」が正常に機能していない状態です。もう一歩共有化を深めれば、オペレーション水準が上がるのにと残念です。
経験の浅い後輩や若手に、改善のコツを伝承していくためにも、もっと現場で発生している(原因系)KPIデータや事実を有効活用する改善マネジメント習慣が強化されれば良いのにと感じます。
<図1>は、私がセミナーや企業内研修・経営コンサルティング活動で、時々紹介する資料です。
ユニクロ、良品計画、ダイキン工業、丸和運輸などの企業経営者は、計画もさることながら、できるまで実行し続けることに強い執着心を持っておられました。
あきらめないで粘り強く、やり続けた結果、素晴らしい成果(業績)が実現できました。計画ももちろん大切ですが、実行・実践はもっと大切。やらずして結果は出てきませんから、現場の原因系KPIデータまで深堀りし、PDCA改善サイクルを回し続ける「ねばっちょる取り組み」が大切だと、私は説いています。
<図1>は苦しい時期を一歩一歩乗り越えてきた粘り強い実行力ある企業群です。良き教本として、優れた会社だと紹介しています。
少し脱線しました。本論に戻します。全社的なKPI活動の場合、全社の組織が関与した多数の活動プロセスの達成度を集積した結果データであり、全社ゴール(目標)が達成できているか否かの指標になります。
全社ゴール(目標)が未達成の場合、そのロジックツリーをさかのぼり細分化し、原因プロセスを見つけて、改善を図り、再度目標達成を目指す必要があります。
場合によっては、特定少人数チームのパフォーマンス良否に大きく影響を受ける場合もありますから、精緻な見直しが必要です。
全社的なKPI活動を成功させるには、全社から全部門(組織)の日々の現場活動に連動させる必要があり、私は<図2>のような「5ステップ・KPIロジックツリーのフレームワーク」を使って考察しています。経験の浅い後輩や若手にも理解しやすいフレームワークだと好評です。
このロジックツリーの5ステップが合理的に設定できれば、全社ゴール(目標)を見据えた全組織の日々の活動も明確化し、シンクロナイズ(連動)してきます。
実現可能性も高まってきますので、事業部門責任者や部署長である皆さんは、若手を含む従業員のチャレンジ精神を鼓舞し、やる気を醸成しつつ達成に向かってPDCA改善サイクルを回し続けてください。必ず、好結果が得られますよ。
PDCA改善サイクルでは、この連載(第3回~第15回)で説明してきた「全員の励まし・巻き込み・職場活性化」「改善提案活動」「人財育成スキルアップ活動」「モチベーションアップ活動(表彰制度他)」が有効に機能し始めますので、積極的に取り組まれることを推奨します。
2. ハインリッヒの法則 と 5ステップ・KPIロジックツリー
読者の中には、物流企業の輸配送部門で働く人も多いと思います。この部門での改善活動では、事故防止の安全管理が最重要テーマであり、労災事故を含めて、事故防止活動が盛んです。ところが、採用されているKPIデータは、内容や発生率の集計ではなく、圧倒的に事故発生件数のみの集計が多いです。
私は、この件数データだけでは、運ぶ商品・作業内容、組織や車両数・サイズ等、規模もバラバラなので、他部門とも直接的な比較が難しいと考えています。競争意識も働きにくく、結果、自分たちの良否も判断しづらいですよね。
よほど大きな事故でない限り、反省や見直しも通り一遍の注意喚起程度となり、残念ながら、これでは大きな改善効果は得られないと判断しています。
理由は、この事故発生件数KPIデータは、典型的な結果系データのみであり、「安全運転に注意しなければいけない」という警告(注意喚起)にはなりますが、原因系については、何一つ有益な情報を提供できていないので、事故から日数がたつと、注意しなければいけないという意識も消え失せてしまいます。
「気を付けて運転してください」という注意喚起だけでは、残念ながら長続きせず、事故は減りません。交通事故等を減らしたいなら、注意喚起するだけの集計フィードバックでなく、事故発生の原因となった行動内容の撲滅活動まで踏み込まないと、減りません。
例えば、交通事故の原因として、速度超過が原因だった場合、デジタコ記録による運転手の癖分析(スピード出し過ぎの発生回数等)を個人別に集計して、当人にフィードバックし、控えめ運転を遵守するように指導し、実践してくれれば褒めることが不可欠です。
<図3>は、ハインリッヒの法則に基づき、交通事故防止の安全KPI活動への落とし込みを図った事例紹介です。画面の制約上、簡素化していることをご容赦ください。
事故低減を実現したいならば、死亡・重傷事故等の件数集計や原因分析をしているだけでは不十分で、もっと、水面下に潜むヒヤリハットや、不安全なドライバーの習慣(悪い癖)にも焦点を当てた分析が必要です。
これらの結果に基づき、ドライバーたちには、穏やかな良運転への転換が必要だと説いています。そしてこれらの実践行動が運転習慣として定着していくようにフォローしていく仕組みづくりも必要です。例えば、安全運転表彰制度、公的機関認証制度へのチャレンジなどです。
事故が発生しない穏やかな防衛運転の励行が遵守できるようなドライバー集団に育成できたら、事故は激減していきます。
<図3>の左側下部に記述した、基本動作の徹底(指差し声出し呼称、コメンタリー運転等)、KYT訓練、安全教育の継続実施などは、古くから言われてきた活動内容ですが、職場にどのように導入定着していくか? 皆さんの覚悟と粘り強い実行力が問われています。ぜひKPI指標を積極的に使いこなしていただきたいと願っております。
次回も引き続き、KPI活動について紹介します。