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連載 現場が変わる人財育成 第16回 菅田 勝

2025年03月05日/コラム

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Z世代の活かし方・育て方(16)

前回までは、改善提案制度を活用した第一線組織の活性化策や事例について紹介してきました。

今回からは、物流企業の組織目標(QCDSS:品質・コスト・納期・安全・サービス満足)達成に有効な組織運営の進め方として、物流KPI活動( Key Performance Indicator:重要業績指標管理)について紹介します。

私はこれを有効活用し全員を巻き込み、積極的な協力を得て、大成功(業績向上と新規業務の連続獲得)を実現しました。

1.そもそもKPIとは何ぞや?

皆さんは、自部門の組織目標をいかに達成するか、に日々苦労されていることでしょう。

私も現役時代、拠点長を兼務していた時は、若者やパートさんを含む物流現場の第一線メンバー(物流センター内や輸配送部門)全員のやる気、チャレンジマインドを喚起しつつ、顧客満足と組織の業績目標を同時達成するため、積極的にKPI活動を導入活用してきました。

KPI指標には多数の説明文献がありますが、実務的には、自部門組織のQCDSS改善のために、自分たちの業務を遂行した結果のモニタリング指標であり、その指標を用いるPDCA改善活動の手法を指す言葉だと考えています。

昔、京セラや日本航空で評判になった「アメーバ経営:全員参加経営」と同じ経営手法です。

(1)第一線業務を実際に担当している作業メンバーに分かりやすい、腹落ちしたモニタリング指標であること
(2)自ら活動した結果が即把握でき、どうすればこの好結果を出し続けることができるか、考えながら業務を工夫し継続できるモニタリング指標であること

この2つが重要なポイントだと私は考えています。

<図1>20250228sugata - 連載 現場が変わる人財育成 第16回 菅田 勝

この<図1>は、私が現役時代から、今でも説明に使っているKPI概念図です。

物流の現場では、日によって物量が大きく変動するため、安定的・効率的にオペレーションを遂行することは大変難しいです。人員配置の設定も難しく、最小限の人員でやりくりしなければならない場合も多々あります。

収益性も厳しい場合が多く、皆には「作業のムダ・ロス・ミスなど 3割はありそう。ぜひ力を貸してほしい。トヨタは乾いた雑巾を絞っているが、我々はまだ雑巾がバケツの中にある。取り出して皆で工夫して改善していこう」と訴え続けました。

私は物流部門に異動して、工場勤務で学んだ「作業工程管理」の考え方を活用し、「問題点の見える化→ KPI指標の把握→全員参加 物流現場の改善活動」に取り組んできました。

その効果は大きく、作業生産性は3~4か月後には早くも15~20%程度アップ。顧客クレームは1年後に1/11にまで激減。荷主から社長あてに感謝の言葉をいただけました。

業績改善や顧客満足に貢献したということで、当時、プロ野球の長嶋監督を模して「菅田ミラクル」と全社方針発表会で称えられました。

2. KPI指標値の抽出調査の仕方

全員の参画意識を得るために、<図2>のような調査シートを準備しました。

<図2>
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改善提案サークルごとに私も検討会に参加します。どのようなKPI指標が適切か。算出式? 過去の実績値? 今後どれぐらいの水準値が狙えるか(目標値への考え方)? 競争意識を喚起するため社内他部門はいかほどの水準? 荷主に対する競合他社とのベンチマーク比較水準値? などを意見交換しました。

直接指揮を執る現場フロアリーダークラスや経験豊富なパートリーダークラスの改善能力を向上するために、積極的に巻き込み、算出の仕方や改善策のヒントなど勉強会も開催。彼らがリーダーシップを発揮して推進してくれるよう、バックアップに努めることが大切です。

【KPI指標を活用する5大メリット】
(1)問題点の見える化(なるべく定量化して、現状認識を全員で共有化)
(2)職場の改善コミュニケーション・ツール(共通認識による意見交換が活発化)
(3)努力している人が評価・顕彰される仕組み(個人別には、2倍程度の差異が存在することを相互確認してもらい、低い人は改善努力してもらう)
(4)現場第一線リーダークラスの育成(視野が広がり、メンバーを励まし、自らは考えながら仕事を遂行できる人財創り)
(5)荷主を我が社の改善発表会に招待し、上長責任者ではなく、若手やパートさんでも改善当事者が自ら発表することで、頑張って改善できている状況を説明し理解・安心してもらえる

発表者にとっては、「人前で人生初の発表」と緊張感が走る瞬間でしたが、場慣れすると、やる気とさらなる改善活動への意欲が醸成されてきます。改善提案も増加、闊達な意見が出始めて、組織も強くなります。

3. KPI活動は、 ロジックツリーの考え方で
現場活動メンバーに落とし込みコミットを

組織全体目標(例:部門利益額〇〇百万円以上)を、第一線作業者のアクション行動にリンクするよう、<図3>のようなロジックツリーで考えてみましょう。

<図3>
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具体的なアクション項目までブレークダウン(分解)、そして業務遂行者全員の納得と共感、達成協力へのコミットメントを得ることが重要です。

トラック輸配送拠点の場合、例えば、高騰する燃料費を圧縮したいなら、運転手一人ひとりの車両サイズ別燃費目標(〇〇km/リットル)まで分解、彼らの目標必達へのコミットメントを得ることで、達成できる可能性が高まります。

私が支援している運輸会社では、交通エコモ財団のエコドライブコンクール優秀賞に毎年入賞。燃料費は高騰していますが、走行km当たり燃費(円/km)は13年間ほぼ横ばいで、素晴らしい燃料費削減効果を維持できています。

当然、車両の事故率も少なく、損保割引率は最高76%です。車両運行コストで見ると、他社比で大きなコストメリットが得られています。

私が現役時代に設定したKPI指標は全部で135項目でしたが、17年間のコンサル活動が経過した今現在では、食品やドラッグ関係もあり、250項目ほどに増えています。

しかし常温品物流では、業務改善に供するKPI指標値としてはほぼ出尽くした感があり、類似のものばかりです。

今後は、働き方改革、物流事業者間の共同輸配送、さらに荷主と協力したSCM改善に資するKPI指標値が増えてきそうです。

皆さんも、KPI指標を積極的に使いこなして、改善成果を上げられますよう、期待します。次号も引き続き、KPI活動について紹介します。

<参考文献>
国土交通省H27年3月【概要版 物流事業者におけるKPI導入の手引き】
日本ロジスティクスシステム協会【詳細版 ロジスティクスKPI活用の手引き】

■連載 現場が変わる人財育成

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