Z世代の活かし方・育て方(22)
第16回から前21回まで、KPIを活用して全員を巻き込み、やる気を喚起、積極的な協力を得て部門組織としての成功(業績向上と荷主満足向上による新規業務獲得、人材育成)を実現する方策について、事例を交えて説明してきました。
読者の皆さんは部門経営者も多いと思いますので、今回はKPIサマリーとして、KPI指標を組織の経営マネジメント活動(方針展開)に取り込み、有効活用していく方策について説明します。
■経営マネジメント活動
図1をご覧ください。皆さんの経営マネジメント活動は、概念図の上半分の通り、(1)から(4)への流れで遂行されているはずですね。
(1)新年度における「経営理念方針・中短期経営戦略・業績目標(案)」の 提示
(2)各事業部門での「クロスSWOT分析等に基づく今後の進め方検討」
何を重点に推進すべきかを抽出する活動。自社経営方針の理解、顧客ニーズの把握分析、競合他社や業界動向の把握などに基づく自部門のクロスSWOT分析とその考察が重要です。これが的外れだと、改善効果は得られません。日頃から、顧客第一思想(第6回の図参照)で荷主や市場・業界動向にアンテナを張って、調査活動を続けていく必要があります。
(3)戦略基本ストーリー・事業計画書の考察と作成
自部門の置かれている状況に対して、具体的にどのような戦略の背景・流れで考察され、実現可能性の高い具体的方策(5W1H)で推進するのか、全員に分かりやすく、納得感のある、役割分担が明確な、事業計画書が必要です。効果的なコミュニケーションや問題解決のカギとなる計画書です。
(4)執行体制構築による「改善実施活動とその結果集計」
経営戦略に基づく組織体制が整備され、各自の役割責任がアサイン(明確化・指示)され、実行に移されていきます。改善(提案)活動が活発化し、必要な専門スキル育成活動も実施され、適切な日常管理マネジメント(PDCA)コントロール活動も重要です。
■KGI→KFS→KPIロジックツリー
上記の経営マネジメント活動の流れ・ステップに沿って、図1の概念図の下半分には「KGI→KFS→KPI ロジックツリー(第16回の図3参照)」の設定運用法を表示しました。
ご覧の通り、(5)~(7)などもKPI指標で集計されるべきですね。
(5)事業部門の全体業績目標をKGI(キーゴールインデックス)とします。例えば、売上高・利益増額(例:1億円以上)を必達(実現)する、などです。
(6)全体業績目標KGIを実現するための成功要因は何か。これをKFS(キーファクターフォーサクセス)と称します。例えば、業績目標額1億円以上を実現するためには、何をやらなければいけないか。昨今の3PL物流各社の取り組みでは、人件費や運行3費(燃料代やタイヤ代)などの諸物価が高騰しているので、荷主に輸配送サービス単価UP交渉を要請するとか、今まで無償で実施提供していた付帯サービスの費用(例:指定場所への納品保管など)を頂戴するとか、生産性向上による輸配送件数のUPなどが考えられます。
(7)上記の成功要因KFSが上手く実現しつつあるのか、どのようなKPI指標で測るのかがKPI指標になります。例えば、値上げ要請8%に対して6%UPが認められた場合、この効果金額はいかほどか。未達分2%をいつまでに引き続き値上げ交渉要請していくのか。実現できた値上げ要請効果金額はいかほどの額になるのか。
■KPI指標にこだわって粘り強く収集
KGI→KFS→KPI指標は、その項目内容に応じて、達成度合いを毎日見直すべきもの(収支日計指標)、毎週見直すべきもの(週報告指標)、月次で見直すべきもの(月報指標)などがあります。
部門経営者の皆さんには、これらKPI指標にこだわって粘り強く収集し、改善活動(PDCAコントロール)していってほしいです。そして、これらKPI指標を、個人の手持ち資料にするのではなく、改善活動に協力してくれる全員と密に共有してほしいと思います。
良い結果であれば感謝・顕彰し、悪い結果であれば奮起を促し、顧客満足の提供者として、同じ志を持つ仲間として、皆のやる気を喚起し続けると、自主的に行動してくれるプロ集団となり、大きな改善効果を得ることができるようになってきます。
特にZ世代を含む若い従業員には、マメに声掛けをして、励まし、相互に信頼感が芽生える有効なコミュニケーション努力を重ねることで、職場雰囲気が変化してきますので、粘り強く取り組んでください。
私の企業コンサル指導では、朝昼礼や会議などの場で、良き実践行動に対しては、 積極的に個人名やチーム名を紹介し、全員で拍手をしよう、と称える発表の機会づくりに努めました。皆さんの職場で、拍手が起こるような場を設けることは多いですか? おそらく非常に少ないと思います。
頻繁に拍手が起こると、名前を呼ばれ紹介された人たちやチームは、皆から賞賛の拍手を受けるわけですから、さらに積極的になってくるので、スパイラルアップの好事例に変身してくれます。朝昼礼を単なる業務指示の場だけにするのではなく、対話し合う、ワクワクする、賞賛する相互コミュニケーションの参加型の場として、ぜひ積極的に取り入れてください。
元浦和レッズの槙野智章選手のように、組織メンバーが奮起するよう努力しましょう。私自身、彼のチーム(とファン応援団)のまとめ方には励まされ、実践努力してきました。職場が明るく、前向きでチャレンジャブルな組織文化が醸成されてきますよ。
■集計するだけでなく密なコミュニケーションを
前回も書きましたが、物流KPI項目を設定して、データ集計開始することは簡単ですが、集計しているだけでは、ほとんど何も改善活動が進まず、業績向上につながりません。KPI指標を使って、しっかりとコミュニケーションしていくことが重要です。
特に、物流品質の向上(納品クレーム・車両フォーク事故・在庫差異などの減少、明るい職場づくり・スピード感ある顧客対応と内容の巧拙度合い、多能化スキル者の育成向上、職場や車両の5S改善活動など)は、全員の巻き込み協力を得ないと改善が難しく、巻き込み程度により、結果の良否が大きく影響を受けます。
大手3PL会社の高度にIT装備化された物流サービスに対して、中堅・中小規模の物流会社のアナログ的物流サービスでも、互角以上に優れた顧客満足度を提供したりして、生産性向上などで競争力ある企業も多々存在します。
お金をかけなくても戦える戦略は数多くあります。
私は現役の時、荷主から褒められた、着荷主から感謝された、といった件数やその内容を積極的に収集し、もれなくKPI集計して、頻繁に朝昼礼や会議の場で好事例として紹介してきました。
その結果、従業員の皆さんの気運が醸成され、ドンドン元気になり、うれしい話を再度聞きたいがために、さらに積極的に改善活動にまい進してくれる好循環が生まれていきました。
この連載でもう何回も申し上げましたが、やらされ感「Don’t!Do!(これはやるな、こうしてほしい)」型で運営される組織運営ではなく、良くやった「Well Done!また頼むよ」型で運営される組織運営のやり方です。
もう一つ、私が部門責任者としてやっていた戦略で、KPI指標の活用事例を紹介しますと、パート定着率アップ(目標90%)や、友達の紹介入社数(例:半期で10人以上など、いわゆるリファラル採用人数)もKPI指標として有効活用し、お礼を述べていました。また管理監督職やリーダーの皆さんにも、意識して努力するよう要請していました。
読者の皆さんには、例え規模が小さくても、工夫することにより「現場力で勝つ」競争力ある物流会社として、荷主(発、着)の満足度・信頼感を得て、業務を拡大し、成長してほしいと願っています。私の25年間に及ぶ物流コンサル経験上、全員を巻き込むのが上手い責任者は、総じて業績は好結果ですよ。

