帝国データバンク(TDB)は8月20日、トランプ関税が日本経済に与える影響(2025年8月)について、試算結果を発表した。
トランプ関税に対する日米交渉は7月23日に合意に至ったものの、大統領令の記述内容の相違などにより、25%の関税率が適用されたままとなっている。
TDBマクロ経済予測モデルを用いた分析によると、今後、合意内容に沿った形で修正された場合、2025年度の日本の実質GDP成長率はトランプ関税がなかった場合と比較して0.4ポイント低下すると予測している。
<トランプ関税による2025年度日本経済への影響シミュレーション結果>
特に懸念されるのは輸出の伸び率で、1.3ポイントの低下が見込まれている。自動車・同部分品は、2024年に日本の対米輸出額21兆2948億円のうち7兆2575億円、構成比34.1%を占めている。
9月中旬以降、関税率は15%へと引き下げられるとみられるが、「従来の関税率2.5%から大幅に上昇することで、裾野が広い自動車関連への高水準な関税は輸出全体を押し下げる最大の要因となる」とみている。
また輸出の伸び率低下は、企業の設備投資にも波及し、民間企業設備投資の伸び率は0.2ポイント低下する見通し。
輸出や設備投資に対する影響は、民間法人企業所得(会計上の経常利益に相当)にも影響し、経常利益の伸び率は1.7ポイント低下すると予測。トランプ関税の発動により、5年ぶりに減少へと転じる可能性もあるという。
こうした状況は労働者の所得にもマイナスへ働き、個人消費を下押しする要因ともなることから、民間最終消費支出の伸び率は0.2ポイント低下する見通し。
全国企業倒産への影響についても、2024年度に1万70件と11年ぶりに1万件超となった状況下、2025年度の倒産件数を2.6ポイント(264件)上振れさせると見込んでいる。
トランプ関税に関する日米交渉は、7月23日に相互関税率および分野別の自動車・同部品への関税率を15%とすること、米国の中核産業の再建と拡大のため、また自国の市場を米国からの輸出品に対してさらに開放するため、米国に5500億ドルの投資を行うことなどで合意した。
日米交渉で合意した相互関税率は8月7日より発動される予定だったが、自動車・同部品への実施時期は未確定のままとなっており、8月1日に署名された大統領令に、日米合意の内容が反映されず一律15%の関税が上乗せされるミスが見つかった。
米国が大統領令を適時修正する措置をとること、また同じタイミングで自動車などの関税を下げるための大統領令を発出することも確認されたが、修正時期は未定で、現在(8月20日時点)も、関税率がベースライン関税10%に15%上乗せされる状況が続いている。
分野別では、鉄鋼やアルミニウムに25%、銅に50%の関税率が課されている。8月6日時点で米国の実効関税率は、これらの関税発動により2024年時点の2.5%から18.6%に上昇するとの試算もあり、1933年以来92年ぶりの高い水準となっている。
企業にとっては依然、判断の難しい状況が続いており、特に分野別関税における半導体や医薬品は、今後決定される見込みで、引き続き注視すべきだとしている。
また中小企業は、直接的に海外取引を行っていなくてもさまざまな経路を通じて影響を受けることになり、政府はこうした影響を緩和する対応策を効果的に実行する必要がある一方、企業は「自らできる範囲で情報を集め機動的に対応していくことが重要」だと結んでいる。
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