「運ぶ」から「品質を管理する」へ。物流の価値が転換期を迎えるなか、輸送プロセスをいかに可視化し、制御できるかが問われている。その最適解を提示すべく、半導体やネットワーク・サイバーセキュリティ分野で国内トップクラスのシェアを誇る技術商社であり、テクノロジーの目利きとしての顔を持つMacnica(マクニカ)が、物流の現場にテクノロジーの実装を進めている。同社が提供するモニタリングサービス「Macnica Tracks®(マクニカトラックス)」は、米・クアルコム製の高性能デバイス「QTS110」を核に、位置情報や温湿度、気圧、衝撃、開封(照度)などの状態を一気通貫で管理するものだ。このデバイスは物流の何を変えるのか。その核心に迫った。
(取材日:2026年1月26日、於:マクニカ品川オフィス)
多角的なデータ計測の意義
可視化と共有がもたらす効率化
―― 物流の透明化が求められる一方で、必要な輸送データが点在し、確認や分析に手間がかかっているケースも多いと聞きます。そもそも、位置情報だけでなく、温度など様々なセンサーデータをセットで計測するデバイスには、どのようなメリットがあるのでしょうか。
大川 最大の強みは、荷物の状態を「点」ではなく「多角的な面」で分析できることです。実は導入をご検討いただく方の多くが、これまでは位置情報と温度を別々のデバイスで管理されていました。しかし、それでは異常が起きた際、二つの異なるデータを手作業で突き合わせて原因を探らなければなりません。これでは現場の負担があまりに大きい。
われわれのソリューションは、複数のデータを同時取得し、一括でクラウドに集約します。データ照合の手間をなくし、トラブルの「真因」を即座に特定できる。このスピード感と正確性こそが、今の物流現場に求められている価値だと考えています。
―― データの可視化が進むことで、荷主企業や、実際にハンドルを握るドライバーの方々にとっても大きな変化がありそうですね。
大川 まさにそこが重要です。API連携も容易にでき、物流事業者だけでなく顧客側のシステムにもデータを共有可能ですから、CLO(物流統括管理者)など役員・経営層に向けた可視化がしやすくなります(下図ダッシュボード参照)。荷主側が物流データに直接アクセスできない実態が課題となるなかで、「見える化」のために荷主からお問い合わせをいただくケースも多いです。
<ダッシュボードのイメージ。位置情報と各種グラフ例(左)、アラート状況例(右)>

大川 取得データ(温湿度/衝撃/落下/開封検知等)の自動記録、共有、データ出力ができるので、従来のドライバーの手作業による温度情報などの日報への記録といった手間も削減でき、記録ミスや改ざんも防げます。昨今、業務効率化が課題となっているドライバーにとって、運転に集中できる環境を整えられる点も、大きなポイントになってくるかと思います。
―― これまでもトラッキング用のデバイスは存在しましたが、より高度な管理を求めるなかで、コストや性能のバランスに頭を悩ませるケースも出てきているように思います。マクニカの視点から見て、輸送品質管理を次のステージへ進めるための「決定打」は何だったのでしょうか。
大川 物流DXが進むなかで、現場で求められるデータの精度や鮮度が、これまで以上にシビアになってきたと感じています。「より多角的なデータが欲しい」「過酷な長距離輸送でもバッテリーを持たせたい」といった高度な要求に対し、従来の延長線上ではない解決策が必要になってくると。
その一つの答えとして私たちが提示したのが、モバイル通信の世界で磨き上げられた世界標準のプラットフォームを、物流ドメインへ最適化するというアプローチでした。
米・クアルコム社のチップセットは、すでにスマートフォンなどの分野で年間数億台規模の出荷実績があり、極めて高度な処理能力と省電力性能を両立しています。この信頼性の高いベースを活用することで、最高水準のセンサー機能を備えつつ、導入しやすいコスト感に収めることができました。
特に、GPSに加えてWi-FiやLTE基地局からも位置を特定する「ハイブリッドな検知能力」は、世界中、屋内外問わず、その力を発揮し、追跡場所に応じて自動的に通信方式を使い分けることによって、GPSの使用頻度が下がります。その結果、バッテリーの長時間稼働も実現しています。
リチウムイオン電池の発火リスクも回避
温度・気圧の連動計測が守る輸送安全
―― 具体的に、どのような運用シーンでコスト削減や付加価値の向上に寄与しているのでしょうか。
大川 顕著な例としては、海上輸送における「資産の保護」と「管理コストの極小化」の両立が挙げられます。長距離の船舶輸送では、数週間にわたる連続稼働が絶対条件となりますが、従来のデバイスではバッテリーの制約から、頻繁な充電やメンテナンスが必要で、それが運用コストを押し上げていました。その点、このデバイスは通信の最適化により100日以上の稼働を担保できるため、メンテナンスフリーでの長期間管理という「実利」を現場にもたらしています。
また、付加価値向上の面では、アパレルブランドの国際輸送における盗難対策といった非常にユニークな事例もあります。高付加価値な商品ほど盗難リスクがつきまといますが、ここでは「照度センサー」が決定打となりました。コンテナの不正な開封、つまり「光」が差し込んだ瞬間にアラートを飛ばす仕組みです。
これにより、異常が発生した「時間」と「場所」を即座に特定できる。これは単なる追跡ではなく、「盗難の抑止力、あるいは発生時の責任所在を明確にする」という、荷主に対する強力な信頼の付加価値となっています。こうした「特定の瞬間だけを賢く検知して通信する」という制御が、バッテリー寿命の延長とリスク回避を高い次元で結実させています。
―― 例えば医療機器や精密機器など、特に高い安全性が求められる「高付加価値貨物」の輸送においてはいかがでしょうか。
大川 保険会社様と連携した「医療機器の輸送品質管理」の事例があります。保険を運用する立場からすれば、当然ながら事故そのものを減らすことが最優先です。私たちのデバイスは、衝撃だけでなく場所や時間、温度、湿度、気圧といった項目を同期して記録するため、万が一の際にも「いつ、どこで、何が起きたか」を極めて正確に再現できます。
この精緻なデータがあれば、単なる事後の処理に留まらず、具体的な対策を講じて「事故の発生率そのものを下げる」ことが可能になります。検証に必要な客観的データを容易に抽出できる点は、リスクマネジメントの観点から非常に高く評価されています。
また、安全性が厳格に問われる「リチウムイオンバッテリー」の輸送でも活用が進んでいます。バッテリーは単価が高いだけでなく、夏場の高温環境下では発火のリスクを伴う非常にデリケートな貨物です。現在は、耐久性の高い専用ボックスと私たちのトラッキング技術を組み合わせ、どこで管理されているかの位置情報のほか、ボックス内の温度や輸送中の衝撃有無をリアルタイムで監視しながら安全を担保する。そんな高度な輸送スキームをフォワーダー様と連携して構築しており、グローバルな運用も含めた検討が加速しています。
―― まだ実現していない、ユースケースのイメージなどがあれば教えてください。
大川 例えば建設資材や重機、建機などの盗難防止、紛失防止にも活用できます。過疎地でもつながるLTEを確保していますし、モーションセンシングによって稼働状態そのものを監視することも可能です。日本全国、どのエリアで何台の建機がどれだけ稼働しているかを把握することが出来るのは、建機メーカー、レンタル事業者、建設会社にとっても資産管理や配置の最適化などの視点から非常に有益なデータになります。
また、これはプライバシーの問題から実現には至っていませんが、旅行業界からは「インバウンドや海外ツアーにおける危機管理」として注目されたこともありました。具体的には、自由行動の際などに発生する、「ツアー参加者の所在不明」というリスクへの対策です。特に連絡手段を持たない高齢の参加者が、不慣れな土地で迷われた際の迅速な安否確認は、旅行会社にとって大きな運営課題です。
さらに資材や工作機器など、物流に限らず運搬物をトラッキングしたいという需要は多くあります。今後ハードウエアを増やしながら、そうした部分も含めて展開していきたいところです。
―― 最後にLNEWSの読者へメッセージをお願いします。
大川 輸送品質の向上は、今後の物流業界において大きな提供価値になっていくと考えています。温度・湿度管理だけでなく盗難防止などのセキュリティなど、その需要は多岐にわたりますが、いずれも輸送品質の改善ということに変わりありません。ツールを通じて物流効率化で重要なデータ連携、DX化に寄与していくことで、業界全体のサービス向上へつなげていけるよう、課題をお持ちの方にソリューションを届けていきたいと思います。
<鷲巣あきらプロダクトセールス(左)と大川賢司プロダクトセールス第2部長(右)>

■製品リンク(公式サイト)
「MacnicaTracks」サービス一覧
ユーザー事例(医薬品輸送時のロスや品質トラブル防止に多大な貢献)
物流ニュース/マクニカ、関通が登壇「”物流を止めない”リスクマネジメント」セミナー2月25日開催





