日本電気(NEC)は、AIをはじめとするデジタル技術をベースにした新たなロジスティクスプラットフォームの開発、提供を進めている。直接の物流プレーヤーでないからこそ、中立的な立場で、ユーザーとともに個別の課題を解決しながら物流革新につなげることができる。 NECの新たなプラットフォームのコンセプトや特徴、今後の方針などについて、スマートILM統括部の大久保 聡 上席プロフェッショナルに聞いた。(取材日:2025年10月24日、於:NEC本社)
得意のAIなど駆使して顧客の
課題解決につながる場を提供
―― どのような経緯で新たな「ロジスティクスソリューション」の開発・提供に至ったのでしょうか?
大久保 われわれのスマートILM統括部は、人や物の移動をはじめとする交通・物流分野などを対象に新たなビジネスを発掘する組織ですが、物流の世界では数年前からいわゆる2024年問題への懸念が取りざたされており、2030年に向けてさらに危機感が高まる中、NECとして何ができるかを2022年ごろからチームで議論してきました。2025~30年といった将来を見据えて何が必要か、物流業界や輸配送の枠組みはどうなっていくのかということを考えながら議論を進める中で、われわれが得意とするAIを使って顧客の課題を解決していく場を提供するという方向性が見えてきました。顧客に「伴走」しながら、物流の課題解決に向けてデジタルの力でサポートしていくというコンセプトを軸に開発を進めました。
<ソリューションのコンセプトについて語る大久保 上席プロフェッショナル>

―― どのようにして企業などに参加を呼び掛けているのですか?
大久保 今後深刻化することが見込まれる物流課題への対応は、メーカーや物流事業者単独での取り組みでは難しく、NECだけで解決することもできないので、顧客と一緒にやっていくことが重要だと考えています。われわれとしては、2030年や2035年といった事業としてのゴールラインを持っていますが、最初の一歩を成功させなければ、その先の発展はないので、トライアル&エラーで進めています。顧客はエラーを嫌うかもしれませんが、まずはスモールでスタートしてみて、改善しながら次に行くというステップがベターだと思っています。顧客にも「3年後5年後を見て、最初の一歩をスモールでもいいから一緒に始めませんか」とお伝えしています。
―― 新たに開発・提供されているソリューションのメニューについて教えて下さい。
大久保 大きく分けて「パレット荷役自動化ソリューション」「共同輸配送プラットフォーム」「通関業務効率化(AI税番判定サポート)」の3つのメニューの開発・提供に取り組んでいます。このうち、パレット荷役自動化ソリューションについては、AIをはじめとするデジタル技術を活用して荷役業務の自動化や最適化などにつなげるプラットフォームの開発を鋭意進めており、2026年中のリリースを目指しています。
入力する情報を絞ることで
マッチングの可能性高める
―― 「共同輸配送プラットフォーム」の具体的なシステムの内容を教えてください。
大久保 「グルーピング」では、各社の物流データをプラットフォーム上で共有し、段階に応じて情報を開示するとともに、共同輸配送の相手候補を自動抽出します。既存のプラットフォームでは、ユーザーが登録する際に詳細情報の入力を求められ、その結果、条件に合致する企業にたどり着くことができないようなケースが目立ちました。NECが提供する新たなプラットフォームでは、「グルーピング」で輸送区間の大まかな地域を入力してもらい、「プランニング」で共同輸配送の運行計画支援や運行計画の条件調整、代替案提示などを行うことで探索・調整をデジタルで円滑に進めます。その後の「オペレーション」の段階では、企業間での荷量見込みの共有などを行った上で共同輸配送の実行につなげるとともに、実績情報を把握するなどデータの蓄積を通じて、共同輸配送のさらなる利用拡大を実現する仕組みとしています。
―― 「共同輸配送プラットフォーム」には現在、どの程度の参加がありますか。
大久保 荷主企業・物流事業者の約20社にご利用いただいております。これまで、共同輸配送の必要性を感じているメーカーや卸、物流事業者をはじめとする関係者が多かったと思いますが、さまざまな阻害要因により進んでこなかった面があることが分かりました。そこで、「グルーピング」「プランニング」「オペレーション」の各段階で阻害要因を排除することで、使っていただきやすくマッチング率が高まるシステムの構築を目指しました。
―― 従来の共同輸配送には、どのような阻害要因があったのでしょうか。
大久保 まずは、「条件に合致する企業の探索」です。この課題に対しては、共同輸配送プラットフォームの「グルーピング」により、プラットフォーム上で共有された各社の物流データを基に、適切な共同輸配送の相手候補を自動抽出します。次に、「条件調整や継続が困難」という阻害要因が挙げられます。これに対しては、「プランニング」で、共同輸配送プランの条件調整や・最適化のほか、定期的なアップデートを行います。そして、「オペレーションの煩雑さ」という阻害要因に対しては、企業間での荷量見込みの共有や共同輸配送の利用推奨案の提示に加え、実績情報の把握を行うことで、実際の運行にかかわる煩雑な作業を排除します。
<横河電機と三井倉庫サプライチェーンによる共同輸配送の事例>

―― プラットフォームを実際に利用して どの程度の効果につながったのでしょうか。
大久保 ルート登録後1か月を基準に計測したところ、共同輸配送グルーピングの成立率は85%に達しています。また、横河電機と三井倉庫サプライチェーンによる東京エリア(武蔵野市・大田区)~東海エリア(名古屋市・三重県)間での共同輸送の事例では、制御装置と半導体トレーの積み合わせにより、積載率が10 ポイント以上改善したほか、荷量増加時に運行していた臨時便の手配・運行が不要になるなど、大きな効果を挙げています。
将来的には蓄積された情報や
知見の幅広い活用の可能性も
―― 着実に効果を挙げているようですが、「共同輸配送プラットフォーム」の今後の展開は。
大久保 現在はスモールスタートの段階ですが、運用していくうちにユーザー数も増え、情報の蓄積が加速されていくものと見込んでいます。また、それぞれのユーザーに寄り添い課題解決を行う「伴走支援」を通じてオペレーション段階での不安を取り除くとともに、ユーザーとわれわれの共同輸配送に関する知見・ノウハウのさらなる向上にもつなげます。こうして得られた情報や知見を、共同輸配送にとどまらずサプライチェーン全体の効率化などにも活かすことができればと考えています。そうなれば、現在は実務者の方の利用にとどまっているプラットフォームを、管理者や経営の上位層の方々にもご活用いただくことができる可能性があります。
―― 3つのソリューションメニューのうち、 「通関業務デジタル化」の内容や導入効果については。
大久保 通関業務効率化については日本通運・福山通運など数十社に利用いただいております。また、新たに生成AIを活用した新サービス「AI税番判定サポート」の提供も5月に開始しました。輸出入業務ではグローバル化により処理件数が増加する一方、通関士不足という課題に直面しています。そこで貿易書類の電子化(AI-OCR)や生成AIによる税番判定サポート、関税計算書のデジタル化を組み合わせて業務量を削減します。あるユーザーの事例では、導入前の業務量を100とした場合、AI-OCRの導入によりExcel転記作業が77%削減、関税計算書システムの導入により関税計算作業が74%削減しました。
―― 新たなユーザーの獲得に向けては 、どのような取り組みをされていますか。
大久保 2024年10月に「ロジスティクスシェアリングコミュニティ」を立ち上げ、共同輸配送について押さえておきたいトレンドや業務に関する理解を深めるためのセッションを行ったり、同じ取り組みを推進したい企業同士が交流することができる場を提供しています。共同輸配送ユーザー企業によるパネルディスカッションなど、これまで6回コミュニティでの会合を開いており、今後も定期開催を予定しています。「ロジスティクスシェアリングコミュニティ」の参加条件は、ロジスティクス・物流改革、共同物流・共同輸配送の実現を目指している荷主企業(製造業・卸売業・小売業)および物流会社の方で、費用は無料です。共同輸配送に興味のある関係者の方の参加を期待しております。
<「伴走支援」の思いを胸に顧客の課題解決への貢献を目指すスマートILM統括部のメンバー。左から、永瀬 祥夏氏、大久保 聡 上席プロフェッショナル、梅田 陽介 プロフェッショナル ※所属は取材日時点>

■NECロジスティクスソリューション関連ホームページ
https://jpn.nec.com/logistics/index.html
https://jpn.nec.com/logistics_service/kyouhai-pf/index.html
https://jpn.nec.com/nec-community/logisticssharing/info.html
https://jpn.nec.com/logistics_service/tsuukan/index.html
物流DXの切り札になるか―NECの共同輸配送プラットフォームに迫る


