日通総合研究所は8月8日、東日本大震災について荷主企業(製造業、卸売業)2500事業所へのアンケート調査を実施した。
この結果、生産の東北離れのおそれがあるとして「民間企業による復興支援策を助成し、東北地方における生産活動に対してインセンティブを付与するシステムを構築すべきだ」と提言した。
調査結果による最悪のシナリオは、東北地方における生産拠点が最大で約4分の3に減少し、東北地方からの原材料・部品・製品等の調達が最大で約半分に縮小するというもの。
<東北地方での生産をシフトする動き>(グラフをクリックすると拡大します)
原発事故の収束の目処が立たず、復旧・復興も遅れているなかで、このままの状態が続くならば「多くの企業が東北地方からの撤収を余儀なくされる事態が起こりかねない」としている。
最悪の事態は絶対に回避するため「政府は早急に復旧・復興後のグランドデザインを描く必要がある。さらには、復旧・復興に向けた積極的な公共投資の実施に加え、民間企業による復興支援策を助成し、東北地方における生産活動に対してインセンティブを付与するシステムを構築すべきだ」としている。
「トヨタ自動車は東北地方の復興支援の目的もあって、エンジン工場の新設を決めた。次に続く企業が待望される。今まさに、“モノ作りニッポン”の正念場」と訴えている。
アンケートは、東北地方における生産の国内他地域・海外へのシフトの動き、原材料・部品・製品等の調達先の東北地方から国内他地域・海外へのシフトの動き、生産・調達を国内他地域・海外へシフトする理由について把握した。
東北地方で生産を行っていた事業所に対して、東北地方での生産を国内他地域・海外にシフトする動きについて、回答事業所数177件(複数回答)のうち、「現状のまま東北地方での生産を継続する」との回答が134件(75.7%)と、全体の約4分の3にとどまった。
「東北地方以外の国内他地域に生産の一部(全部)をシフトする」は14件(7.9%)で、主なシフト先として中部地方と九州地方がそれぞれ4件で、概ね関東以西に集中している。
東北地方から原材料・部品・製品等を調達していた事業所に対し、調達先を東北地方から国内他地域・海外にシフトする動きついて、回答事業所数500件(複数回答)のうち、「現状のまま東北地方からの調達を継続する」は242件(48.4%)と過半数を下回った。
「東北地方以外の国内他地域に一部(全部)の調達先をシフトする」は126件(25.2%)だった。
生産または調達を東北地方から国内他地域・海外にシフトする理由では、回答事業所数171件(複数回答)のうち、最も多かったのが「生産・調達を行っていた拠点が廃業したため、あるいは、生産・調達を行っていた拠点における生産活動の再開の目処がたたないため」(92件;53.8%)という回答だった。
「リスク回避策として、生産や調達先をより分散するため」(86件;50.3%)についても、過半数の事業所がシフトの理由としてあげている。
■“大規模かつ広域的な地震災害”に対応した「震災ロジスティクス」のあり方
http://www.nittsu-soken.co.jp/report/logistics/file/logi_r19.pdf