矢野経済研究所は、物流17業種の市場調査を実施した。
<物流17業種総市場、規模推移・予測>
※「その他」には冷蔵倉庫事業、引越事業、航空貨物輸送事業、鉄道利用運送事業、軽貨物輸送事業、国際宅配便事業、鉄道貨物輸送事業、トランクルームおよび周辺事業、バイク便輸送事業、納品代行事業を含む。
2015年度の物流17業種総市場規模は、前年度比0.9%減の20兆4110億円と推計した。
国内は消費税増税の反動減から徐々に回復し、堅調に推移している。インターネット通販を中心とした通信販売、医薬品・医療機器分野、コンビニエンスストアや食品スーパーチェーンの温度管理の必要な低温食品分野の物流サービスが好調。
一方、海外需要が物流17業種総市場に影響を及ぼす割合が高くなってきている。
2015年度は海外需要がやや低迷していることが影響し、前年度割れとなった。
2016年度の国内物流市場全体は堅調に推移しているが、海外需要は中国や東南アジアの経済成長の鈍化や欧州経済の低迷の長期化、海運を始めとする運賃市況の低迷などの影響により、同年度の総市場規模は前年度比4.0%減の19兆5970億円を見込んでいる。
国土交通省のデータによると、国内では貨物量が減少傾向にあるが、2017年度以降は、東京オリンピック・パラリンピックに向けた内需の拡大により引き続き堅調に推移すると予測する。
海外は各国・地域における需要動向が見通しづらい状況にあるが、世界情勢や世界各国の経済状況などを考慮すると、2017年度は、20兆1755億円、2018年度は20兆8475億円と緩やかな拡大基調を予測する。
注目すべき動向として、物流の業務範囲は拡大し続けている。国内の貨物量は全般的に減少傾向にあるが、業務領域の拡大は物流市場に好影響を与えており、拡大基調の一要因となっている。
物流事業の専門性はますます高度化しつつあり、物流事業の業種を超え、専門性を追求するための企業合併や買収、業務提携や、効率的な物流を担うための情報の一元化など通じた物流サービスのプラットフォーム化といった改革も進んでいる。
人手不足に対して、IoTや人工知能などを活用した省力化・自動化といった部分的支援が一層進展することで、人手に頼らない「スマート物流」に変革する兆しが徐々に見られるようになるものと考えられるという。
■物流17業種
海運事業、システム物流事業、宅配便事業(国内)、特別積合せ運送事業、普通倉庫事業、フォワーディング事業、一般港湾運送事業、冷蔵倉庫事業、引越事業、航空貨物輸送事業、鉄道利用運送事業、軽貨物輸送事業、国際宅配便事業、鉄道貨物輸送事業、トランクルームと周辺事業、バイク便輸送事業、納品代行事業。
システム物流は、ロジスティクス提案を含めて、特定荷主の物流業務を一括で請負う業務のことを指し、共同配送や3PLに加え、運送業務を担う物流業者が企画提案を行うもの全てを対象とする。