大日本印刷（DNP）とUltimatrust（アルティマトラスト）は6月23日、AMR（自律走行搬送ロボット）の経路を最適化するアルゴリズムと、その導入効果を検証できるシミュレーターを開発したと発表した。
この取り組みでは、アルティマトラストのデジタルツインプラットフォーム「Wisbrain（ウィズブレイン）」に、量子コンピュータで用いられるアニーリング手法をGPU（Graphics Processing Unit）を利用した並列計算により高速化したソフトウェア「DNPアニーリング・ソフトウェア（DAS）」を搭載。
両社の技術を掛け合わせることで、常に変化するAMRや障害物等の位置を把握して最適な移動経路を短時間で計算し、AMRの稼働率を高めるほか、シミュレーターにAMRの台数や稼働領域マップ、経由地等の条件を設定することで、このアルゴリズムの効果を検証できるようにした。
＜左：シミュレーションのイメージ、右：各AGVの移動距離を示したシミュレーション結果（10台すべての移動量が従来の手法を下回っていることが確認できる）＞
開発したアルゴリズムでは、DASを活用し、現場の環境やロボットの稼働状況等の膨大な選択要素の中から、「AMR同士の衝突回避」や「現場全体での高効率なロボットの動作順序」等の条件を加味して、最適な搬送経路を提示する。
125×200mの倉庫内でランダムに抽出した8つの経由地を各AMRが通るという条件で、10台のAMRをシミュレーター上で稼働させたところ、最短経路を導くために従来から使われているダイクストラ法と比べて、AMRの移動距離を約34%短縮できた。
また、ロボットの経路上に突発的に発生した障害物に対しても、このアルゴリズムでは、Wisbrainを通じてカメラやセンサーから得る障害物の情報を活用することで、経路をリアルタイムで再探索し、障害物の存在を前提に経路を提示することで、衝突や停止の事前防止につなげることができる。
両社は、物流倉庫や製造・物流関連の企業、飲食業界等に向けて、PoC（Proof of Concept：概念実証）等を通じて、ロボット導入による効果検証を示していくほか、2023年度中に同アルゴリズムを用いたAMRの経路最適化システムを開発し、提供していくとしている。
