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中小企業庁/卸から小売への「手厚い」物流サービス、双方にデメリット

2007年05月28日/調査・統計

中小企業庁は5月25日、「中小商業者における効率的な物流取引の構築に関する調査研究」の調査結果をまとめた。小売業者の要望を「断ることができない」ことから卸売業者が行う“手厚い物流サービス”がコスト、売上に与える影響を探ったもの。

調査では、「卸売事業者の物流サービスは真の意味で小売事業者に貢献しているのか」との疑問に対し、「『返品可』が前提の取引や短納期・多頻度小口の物流サービスの存在等を容認する商慣行」が根強く存在しているとし、一方で「商品を店頭に並べたところで売れるかどうかわからないというのが市場の実態」と指摘。高いコストをかけて物流サービスを行っても「売上、利益には結びついていないという懸念」がある、として、実態把握を行った。

卸売業者が行う物流サービスについては、短納期、多頻度・小口納品が「当たり前のように行われている実態が明らかになった」とし、こうした手厚い物流サービスは「相当なコストがかかる」一方で、顧客からの要望である以上やめるわけにいかない、といった経営上の悪循環に陥っている姿が浮き彫りとなった。

逆に、サービスを要求・享受している側の小売業者については、「このような手厚い物流サービスの存在が、大きなロスの原因となっている」との実態を明らかにした。

調査対象は「小売業を主な販売先とする中小消費財卸売事業者」を想定。回答企業は食品が200社と最も多く、繊維、日用雑貨が100社。売上規模では20億円以上が最も多い。

納期は「24時間未満」を約束している顧客(小売業者)が全体の28.2%、「24時間以上」が47.0%。「取り決めなし」は24.8%だが、「事実上短納期」というケースも多い。24時間未満の納品を「短納期」とした場合、その比率は4割以上になる、と分析している。届け先別にみると、短納期の比率が最も高いのは「小売物流センター」。

次に、回答企業の8割以上が「緊急注文がある」と回答。顧客1社当たりの月間平均「緊急注文回数」は、1.41回だった。

配送頻度は「週に1-2回」の顧客が48.4%、次いで「週に3-4回」が26.3%、「週に5回以上」が24.7%の順となっている。配送頻度は小売店側の在庫の量と関係して決まり、日配品を除けば毎日配送する必要はないはずだが、週3回以上の配送を求められている卸売事業者が約半数ある――との実態が分かった。

付帯作業については、納品に伴うものとして「値札付け、各種シール貼り」、「袋詰め・個別包装」、「詰め合わせ作業」の実施状況をたずねたところ、卸売業者の2割~4割がこれらの作業を実施している――と回答。付帯作業を実施している卸売事業者では、8割以上が無償で行っていることが判明した。

こうした手厚い物流サービスが求められる背景として、小売事業者にヒアリングを行ったところ、「店頭で発注を行うスタッフは、売れ行きに合わせて必要な量を発注するための情報もなく、正しい発注を行うための教育もない」というのが多くの実態となっていた。

一方で、新製品が大量に投入されるために、「よほどコントロールしないと店頭はたくさんのアイテムでいっぱいになってしまうため、売れ筋の商品は頻繁に欠品し、死に筋の商品ばかりが並んでいるという状態になってしまう」とした上で、「アイテムが拡散した状態では正しい発注を行うことはそもそも無理がある」と指摘した。

小売店がこのような状態で発注の精度が低いために、「少しでも早く、一個からでも納入してほしい」という手厚い物流サービスが求められる、と結論付けている。

また、調査では手厚い物流サービスが小売業者のデメリットになっている事例として、ある食品関連の卸売事業者で、顧客である小売店の売上と物流サービスの関係を調査。

手厚い物流サービスを受けている店舗のほうが売上が悪い、販売効率が悪いということを示す例として、同じ量販チェーンに属する同規模の店を比較した。注文行数ではA店が114行に対し、B店は196行と多頻度注文。さらに、B店は注文行数のうちほぼ半分が「1個注文」で、頻繁な注文活動を行うことにより、一層「多忙」になっていることすら想定される、とした。

結果としてA店に対する売上は18万円超であるのに対し、B店は10万円。売上に対する出荷コスト比率を計算してみると、A店は3.2%、B店は5.3%となった。B店には手厚い物流サービスを行ったコストが反映されているにもかかわらず、コストがかかっただけで売上によい影響は出ておらず、卸売事業者にも小売事業者にもよいことはないようだ――とした。

手厚い物流サービスから脱却しようとしている卸売業者の事例として、ある酒販卸売事業者では、物流ABCにより納品にかかるコストを明らかにし、取引条件を決める際にここで得られた情報を活用している事例を紹介。

この業者の場合、コスト項目として、注文の方法(電話かFAXかオンラインか)、時間指定の有無、荷卸環境(駐車場はあるか、助手が必要か)などに整理。これらについてコストを把握すると、物流サービスの内容を変更することで、納入価格をもっと安くできるという提案もできる――と指摘し、顧客別に採算が取れているかどうかについても常に確認を行っている、と説明している。

あるアパレルの製造卸売事業者の事例としては、中小零細規模ながら大手量販店を顧客にし、そこから販売情報などを入手、綿密に分析して商品補充・開発に活用しているケースを掲載。

例えば販売情報の分析から、店舗ごとに、よく売れる日に新しい商品が入るよう、納入のスケジュールを決めていることから、納入の回数はまとめられて物流コストを抑えられ、しかも売上もベストの状態にできている――とし、SCMの取組みは物流サービスを最適にする取組み、と強調している。

今後、卸売事業者は「小売事業者のメリットも明確にしながら、物流サービスを最適化することへの取組みが重要」としつつ、この取組みは物流効率化につながるほか、環境問題の改善にもつながる、と結論付けた。

詳細は、下記URLを参照。
http://www.chusho.meti.go.jp/shogyo/shogyo/download/070525itakukekka.pdf

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