LNEWSは、物流・ロジスティクス・SCM分野の最新ニュースを発信しています。





アスコット中林社長/高速至近・住宅地・駅チカの厳選立地で勝負

2022年09月14日/物流施設

2021年に物流施設開発への参入を表明したマンションデベロッパーのアスコットが、第1弾となる物流施設「アスコット・プライム・ロジスティクス加須」の着工を翌日に控え、9月14日に埼玉県加須市で地鎮祭を執り行った。

物流施設について「ラストワンマイルの一端を担う中小規模の施設をスピード感を持って開発していく」という同社だが、同規模の施設開発には近年参入企業が相次ぎ競争が過熱している。そのなかでアスコットはどう勝ち抜いていくのか、同社の中林 毅(たけし)社長と、染谷 哲也 執行役員 不動産投資事業本部長に話を伺った。

<左から中林 毅(たけし)社長、染谷 哲也 執行役員 不動産投資事業本部長>
20220914ascot5 520x347 - アスコット中林社長/高速至近・住宅地・駅チカの厳選立地で勝負

――  第1号物件が無事着工を迎えました。

中林  アスコットは創業以来、分譲や投資用のマンションデベロッパー事業を手がけてきた会社です。会社をより強固なものにするため事業の多角化に踏み切ることを決断し、2020年12月に110億円の増資を行い、いくつかの新規事業部を立ち上げました。そのうちの1つが、今回着工する「アスコット・プライム・ロジスティクス加須」の開発を担う不動産投資事業本部です。物流施設開発の構想を練りはじめたのが2020年のことなので、足掛け3年でようやく着工に辿り着くことができました。

――  物流不動産の市況をどう捉えていますか。

中林  さすがに一時期ほどの勢いはなく、作ればすぐ借り手が付くような時期は過ぎつつあるように思えます。一部に供給が過剰なエリアも見られますし、テナント誘致に苦労している物件もあると認識しています。ですが、ECの普及で物流事業者はラストワンマイルの物流網を強化していますし、老朽化した倉庫の更新需要もあるため、未だ大きなビジネスチャンスであることは確かです。実際にコロナ禍においてもマンションと物流施設の利回りは安定しています。

このような環境の中で、アスコットは大手と競合するような大規模物件ではなく、中小規模でかつ比較的住宅に近接したラストワンマイル配送の拠点に絞って開発を進めていこうと考えています。エリアは東名阪のほかにも仙台や福岡などを対象に、高速道路や住宅地、駅、商業施設などに近接した立地の良い物件に絞って投資を行っていく方針です。

開発する施設にはマンションで培ったデザイン性を取り込み、アスコットらしさを出していきたいと思っています。住宅地での開発になりますので、周りに溶け込みやすいようなデザインを外観に取り入れたり、従業員用のアメニティを充実させるなど、テナント企業の雇用確保にも配慮した物件を作っていく考えです。

――  このたび着工する「アスコット・プライム・ロジスティクス加須」は、まさに供給が過剰になりつつある圏央道沿いでの開発となりますが。

染谷  確かに、圏央道エリア全体で見れば施設の供給に過剰感があるのは事実です。ですが、一言に圏央道沿いと言ってもロケーションはさまざまです。加須は東北道に繋がっていることから仙台と東京を繋ぐゲートウェイの役割を持っており、他の圏央道エリアとは異なる特性があります。そのうえで、この物件は高速道路のICから10分以内でアクセスでき、駅から徒歩圏の住宅地にあるため従業員の採用面でも有利です。競争優位性は十分確保できると考えています。

――  すでにテナント企業は決定しているのでしょうか。

染谷  現時点では未定ですが、いくつかの企業から声がかかっている状態です。施設の仕様としては最大2分割に対応しているのですが、1棟全体を利用したいという声が多いですね。現状では精密機械などの高付加価値品を扱う業種からの引き合いが強いです。

<鯉のぼりの街「加須」ならではのデザインを取り入れた「アスコット・プライム・ロジスティクス加須」の完成予想図>
20220914ascot1 1 520x299 - アスコット中林社長/高速至近・住宅地・駅チカの厳選立地で勝負

<加須駅前で風にたなびく鯉のぼり>
20220914ascot2 1 520x693 - アスコット中林社長/高速至近・住宅地・駅チカの厳選立地で勝負

――  物流施設開発でのアスコットの強みは。

染谷  企業から直接土地を確保できることがまず1つの大きな強みです。今回の土地も元は三菱鉛筆の配送センター跡地だったものを取得しました。

もう1つの強みとしては、狭小地でマンションを開発していた経験を生かし、その土地に馴染んだ施設を作れることです。いくら法的な用件を満たしていても、周辺と調和できていない施設は周辺から反対されてしまいます。アスコットには、その街の歴史や景観と調和した施設づくりのノウハウが蓄積していますので、それを生かした開発を推進していきたいと思います。

加須は鯉のぼりの生産地なので、鱗をイメージしたような外観デザインを計画しています。入居を検討している企業からもこの外観デザインは好評です。我々がターゲットとする中小型の物流施設はデザイン性が簡素なものが多いですが、目を惹く外観デザインを採用したり、アメニティに女性目線を取り入れるなどの工夫を凝らすことで、パートタイマーをはじめとしたテナント企業による従業員雇用の一助になればと考えています。

――  マンション開発のノウハウが生かされているのですね。

中林  アスコットでは、マンション開発のメンバーが物流施設の企画にも一部関っています。外部から引き入れた物流に知見のあるメンバーと、マンションチームとが共同で開発をしているユニークな会社です。染谷 執行役員をはじめ、不動産投資事業本部のメンバーは他社で物流の実績を積んでおり、相対で土地を取得するためのネットワークも持ち合わせています。そこにマンション開発で得たデザイン性を組み込むことで、アスコットらしい物流施設ができると考えています。

――  今後の開発計画は。

中林  敷地面積が2000坪から最大でも5000坪程度の施設を年間3~4棟のペースで開発していく予定です。これより大きな物件については、何社かあるパートナー企業と共同事業で取り組むことも検討しています。今回は圏央道沿いでしたが、より都心部に近い場所での開発にも取り組む方針で、冷蔵倉庫の開発も検討していきたいですね。

<「アスコット・プライム・ロジスティクス加須」建設地>
20220914ascot3 1 520x390 - アスコット中林社長/高速至近・住宅地・駅チカの厳選立地で勝負

<地鎮祭 集合写真>
20220914ascot4 520x347 - アスコット中林社長/高速至近・住宅地・駅チカの厳選立地で勝負

■「アスコット・プライム・ロジスティクス加須」概要
所在地:埼玉県加須市土手2-1329-5
交通:東北道「加須IC」4km、東武伊勢崎線「加須駅」徒歩15分
敷地面積:5035.29m2(1523坪)
延床面積:8782.98m2(2657坪)
建物構造:鉄骨造・地上3階建
用途:倉庫・事務所
竣工予定:2023年夏
設計:スピリッツ・オフィス 一級建築士事務所
施工:ナカノフドー建設 名古屋支社

関連記事

物流施設に関する最新ニュース

最新ニュース