日本郵船は3月7日、ANAホールディングス(HD)との間で、同社連結子会社である日本貨物航空(以下、NCA)の全株式をANAHDに対して譲渡することに関する基本合意書を締結したと発表した。
NCAは、国際貨物専門の航空運送事業を行う会社として、1978年に複数の事業者が参画して設立された。日本郵船はNCA設立以来、主要株主としてその経営に関与してきたが、海・陸・空の総合物流企業を目指し、2010年には同社を日本郵船グループの貨物航空運送専業の完全子会社とした。しかし、運航・整備体制の拡充のための継続的な機材導入、運航・整備に従事する人員の継続的な育成には相応のコストを要し、ボラティリティの高い航空運送事業において、そのコストに見合うレベルで事業規模を拡大することに課題を抱えていた。
ANAHDは、日本を拠点とした国際航空貨物ネットワークと商品・サービスを飛躍的に充実させ、国内外問わずグローバルな経済活動の発展に貢献することを目的として、NCAを同社の事業ポートフォリオに加えた後、ANAグループの貨物事業と将来的に統合・再編して経営体質を強化することで、サプライチェーンの高度化に対応しうる高品質かつ国際的に競争力のある貨物航空運送サービスの提供を実現することに、強い意欲を示した。
日本郵船は、「近年、『コロナ禍でも物流を止めない』との使命の下でサービスを継続するなど、貨物航空運送事業を通じて社会に価値を提供し続けてきたNCAが、今後長期的な視点で環境対応も含めて更に成長し、企業価値向上を実現するためには、同じ事業を営み、従来より整備体制強化に向けて協力関係にあるANAHDへの譲渡が最善の施策である」との考えから、ANAHDと協議を重ねた結果、同取引を相互に推進・検討することについて基本合意に至り、同日基本合意書を締結した。
ANAHDが、NCAの発行済株式の全てを日本郵船から一括して取得することに合意し、具体的な取得方法(スキーム)等については、引き続き両社で協議の上、決定する予定。クロージング日は、競争法上のクリアランスが得られること等を条件に、NCA株式取得の実行日を2023年10月1日またはANAHD及び日本郵船で別途合意した日とする。