ESRは5月23日、神奈川県川崎市の東扇島で竣工した最新の物流施設「ESR東扇島ディストリビューションセンター(東扇島DC)」で報道陣向けの内覧会を開催した。
東扇島DCは東扇島の東端に位置しており、自動車メーカーのモータープール跡地を取得して開発した。全高約70mの超高層建築物、国内最高層となる地上9階建て延床面積35万m2の倉庫で、大規模な倉庫が立ち並ぶ東扇島の中でも巨大さが一際目立つ施設だ。
目を惹くのは施設の巨大さだけではない。東扇島DCでは地域のランドスケープとしての美観を意識し、オフィスビルで多く採用されているカーテンウォール(ガラスの壁)をESRとして初めて採用したほか、照明演出にもこだわっており、夜間にはライトアップされた施設を望むことができる。また、羽田空港から至近の立地であるため、外壁のロゴやテラスに設けられたオブジェは、離発着する飛行機からの視認性を考慮して配置されている。
東扇島DCでは、他の物件と同様、ESRが物流施設の基本理念に掲げる「HUMAN CENTRIC DESIGN.(人を中心に考えたデザイン)」に基づいた施設づくりが行われている。
従業員用の休憩ラウンジは東西2か所に設けられており、西側は8階、東側は8・9階のメゾネット型になっている。ラウンジは東西で特徴が分かれており、西ラウンジは木目調のテーブルや椅子が並んだ比較的シンプルな内装で、好天時には窓から富士山が眺望できるそうだ。
一方で、東ラウンジは随所に配置された間接照明やベロア張りの椅子など、西側とは一転してムーディーな空間演出がされており、9階は暖炉やバーカウンター、プライベートダイニングを備えた空間で、さながらホテルのラウンジのようだった。そして、8階には物流施設でおそらく初であろうボーリングレーンや、マシンジムまで併設されており、これらの施設は従業員が無料で利用することができる。
アメニティスペースには、倉庫スペースとの比較で床面積あたり2倍強の費用をかけており、従業員がいかにくつろげるかを追求した。
ラウンジのコンセプトについて、デザインを担当したタカトタマガミデザインの玉上 貴人代表は「東西ともに物流倉庫の高い天井高を生かしており、西ラウンジでは天井高に高低差をつけることでさまざまな印象の空間を作り出し、従業員が自分に合った場所を選んでくつろげるようにした。東ラウンジは、8階が席数を多めにとっているのに対して、9階は空間にゆとりを持たせることでホテルのラウンジのような空間を演出した」と語る。
ESRが物流施設でいち早く提案したという託児所は、建物南側の1階に設置。保育室が複数に分かれており、預かる子どもの年齢によって部屋を使い分けることができる。床材には毛足の短いカーペット材を採用し、飲み物などをこぼれても拭き取りやすいように従来の施設から改善した。屋外には砂場や吊り橋上のアスレチック遊具を設置してあり、子どもの冒険心をくすぐるデザインとなっている。
<事務所スペースは全体で約1万m2と中規模のオフィスビル並み>
東扇島DCでは、物流倉庫としての機能も最高品質を提供している。
中央車路を挟んで東西にトラックバースと倉庫スペースが配置されており、各階の車路には上り下りでそれぞれ専用のランプウェイで接続することで車両動線を一方通行とし、1日に最大で1500台の出入りが見込まれる同施設でオペレーションの安全性を高めている。
各階の倉庫スペースは、多様なニーズに対応するため仕様に特長を持たせており、1階では両面バース(低床・高床のハイブリット)の採用や冷蔵冷凍倉庫への対応が可能になっているほか、2~8階ではスプリンクラーの設置によって1防火区画あたりを3000m2(通常は1500m2以内)とし、壁が少なくフレキシブルなレイアウトが可能な空間を実現。8階は下層階よりも柱本数が少なく、さらに保管効率の高い仕様とした。
現在、全体の2割でテナント契約が完了しており、1階の2区画には小売業の配送を請け負う3PL企業、6階の2区画と7階の3区画には常温商材を扱う3PL企業の入居が決定。そのほかの区画についてもハイテクノロジー系やアパレル系の商材を扱う企業からの引き合いがある状態という。
内覧会の後に行われた記者会見では、ESRのスチュアート・ギブソン代表が登壇。東扇島DCについて「ESRは常にベストな施設を作ることを目指して物流施設の開発に取り組んでおり、東扇島DCも前回竣工した横浜幸浦を超えるクオリティに仕上がった」と評価。リーシングについては「東扇島には冷凍冷蔵倉庫も多く移転や増床の需要が見込めるほか、企業からの引き合いも多く、今後1年程度で満床になるだろう」と語った。
また、同社が基本理念に掲げるHUMAN CENTRIC DESIGN.については、「施設づくりに対しては『自分がここで働きたいか?』を念頭に入れて計画を練っている。今の日本では雇用の確保が非常に難しく、企業にとって一番コストがかかるのが雇用だ。充実した就労環境を提供することで企業が雇用を確保しやすい環境を提供したい」と述べた。
さらに、ギブソン代表は東扇島で2棟目となる物流施設開発計画に言及。東扇島DCから500m程離れた場所に6万6000m2の開発用地を確保しており、延床30万m2規模の施設を2025年にも着工し、2028年以降に完成させる計画であることを明かにした。
■「ESR東扇島ディストリビューションセンター」概要
所在地:神奈川県川崎市川崎区東扇島21
アクセス:首都高速湾岸線「東扇島IC」1km
敷地面積:7万7725m2
延床面積:34万9003m2
構造:地上9階建・PCaPC造・免震構造
竣工:2023年3月31日
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