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新スマート物流/共同配送×ドローン物流で2024年問題に挑む

2023年07月07日/3PL・物流企業

全国新スマート物流推進協議会は7月7日、都内で「第2回新スマート物流シンポジウム」を開催した。

同協議会は、既存の共同配送とドローン配送の組み合わせなど地域のモノの流れを効率化・最適化する「新スマート物流」を通じて、地域社会が共通して抱える買物弱者、医療弱者、交通弱者、災害対応等の社会課題の解決に寄与することを目指している。

2022年に続いて2度目の開催となった今回のシンポジウムでは、「物流2024年問題に挑む~加速する新スマート物流の取組みと今後の可能性~」をタイトルに据え、2024年問題解決の一助となるべく普及を進める「新スマート物流」について、これまでの取組みの成果や今後について紹介したほか、佐川急便等の物流事業者が2024年問題への対策を語ったパネルディスカッション、また、河野 太郎デジタル大臣や国交省の鶴田 浩久自動車局長(物流・自動車担当)による2024年問題やドローン物流に関する講演を行った。

<全国新スマート物流推進協議会の竹中会長>
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会の冒頭では、全国新スマート物流推進協議会の会長を務める竹中 貢 北海道上士幌町長が挨拶。同町でのドローンを使った和牛の受精卵の輸送や、市街地から離れた農村地への新聞の即日配達の事例を挙げ、「新スマート物流が地域に入り込み、住民のニーズを調査することで続々と新たなサービスを創出している」と取り組みの成果について語ったほか、共同配送について、「先般、大手物流2社が協業を発表しているが、このような流れは今後さらに加速してくだろう。官民一体で流れを加速させ、誰一人取り残されない社会をつくりたい」と抱負を述べた。

<国交省の鶴田自動車局長>
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国交省の鶴田 浩久自動車局長(物流・自動車担当)による「物流2024年問題への対策とドローン物流への期待」と題した講演では、小口多頻度化の進行や荷主による物流コストの低下、トラック運送事業者の長時間労働・低賃金、再配達といった物流を取り巻く問題に触れたうえで、2025年までの物流政策大綱や6月2日に公表された政策パッケージで国が進める対策について説明。

また、ドローン物流については買い物難民、在宅医療ニーズ、ドライバー不足といった問題解決に向けて、レベル4飛行の解禁や、全国での実証事業を進めており、今後も全国展開を支援していく方針であると語った。

<NEXT DELIVERYの田路(とうじ)代表>
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全国新スマート物流推進協議会で理事を務めるNEXT DELIVERYの田路 圭輔代表からは、新スマート物流の導入事例について、同社が本社を構える山梨県小菅村や、北海道上士幌町、福井県敦賀市、茨城県境町、千葉県勝浦市などでのサービスの創出事例を紹介。

また、先日発表された「SkyHub TMS」とKDDIスマートドローンの運航管理システムとの連携によってドローン物流における機体の位置確認や配送完了有無の確認が可能になることに触れ、同機能によってSkyHub TMSの実装が加速すると語った。

<パネルディスカッション>
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「物流2024年問題に挑む~持続可能な地域物流の実現に向けて」をテーマにしたパネルディスカッションでは、全国新スマート物流推進協議会で理事を務めるセイノーホールディングスの河合 秀治執行役員をモデレーターとし、パネリストとして佐川急便 東京本社 事業開発部の佐藤 諒平事業開発担当部長、静岡県袋井市に本社を構える物流事業者であるサンワNETSの山崎 康二専務、国土交通省の鶴田 浩久自動車局長(物流・自動車担当)が登壇。

<佐川急便の佐藤事業開発担当部長>
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政策パッケージの実践事例として、佐川急便の佐藤部長は「自社センター発のトラックについてはドライバーの荷役分離を実施し、荷役時間の削減を図っている」と、取り組みを紹介。また、今後については「ロールボックス活用による貨物のユニット化や、積み込み作業をロボット化するなど、ドライバーへの負荷を軽減していきたい」と語った。

<サンワNETSの山崎専務>
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サンワNETSの山崎専務は、「ドライバーの労働時間短縮には荷主の協力が不可欠」とし、自社での取り組みとして、地元スーパーマーケットから受託している24時間365日稼働の店舗配送業務について、日曜日の稼働を休止した事例を紹介した。

<国土交通省の鶴田自動車局長>
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国土交通省の鶴田自動車局長は、両社の取り組みを踏まえて、「荷主と物流事業者の関係は対立構造ではない、一緒にやるという事が大切だと感じた。2024年問題は物流業界にとって環境を変化させるための大きなチャンスであると捉え、皆でポジティブに取り組むべき」とコメントした。

また、共同配送や貨客混載の取り組みについては、佐川急便の佐藤部長がドライバー不足の解消や輸送力向上等のメリットが見込める一方で、オペレーションや配送の時間軸、サービス内容、システムなどが企業ごとに異なる点を課題として挙げ、国に対してデータ連携の標準化を主導するよう求めた。

サンワNETSの山崎専務は、トヨタが自動車部品の調達物流で共同配送を実施していることに触れ、同事例をもとに他の産業でも展開していくべき、と考えを述べた。

2024年問題に向けては、佐川急便の佐藤部長が「社内で対応が加速している。自社だけではなく、協力会社や同業者とも協力しないと乗り越えられない問題だ」と、連携の重要性を説いた。

サンワNETSの山崎専務は、「物流業や自社が、若手に選ばれるようにしなけらばならない。来年4月の労働条件改善後でも、物流業の待遇はまだ他産業よりも悪い。業界、会社の改善を進めていく」とし、待遇改善の必要性を訴えた。

これらの意見を受けて、モデレーターの河合氏は「トラック事業者、荷主、国、自治体などが連携して2024年問題に挑んでいきたい」と締めくくった。

<河野 太郎デジタル大臣>
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基調講演で登壇した河野 太郎デジタル大臣は、 「デジタルの力で実現する地方発の豊かな社会づくり」をテーマに講演。

河野大臣は 「物流が大変だという話はさまざまな地域で聞く機会が多い。新潟の阿賀町で6月にオンライン診療とドローンによる処方薬配送の現場を見たが、人口減少と高齢化が進む中、地方の課題解決にはデジタル化が大きな手段になる。人口減のなかで人が人に寄り添う社会をつくるには、人は人がやるべき仕事をし、それ以外はロボットやAIに任せるべきで、その手段がデジタル化だ」と、デジタル化の重要性を強調した。

また、ドローン物流については、「人が少ない地域で飛ばす前提なのに、現場を知らない省庁がルールを作っている影響で規制緩和がなかなか進まない」と苦言を呈したほか、「新しい取り組みにリスクは付き物。エラーやリスクをある程度許容しながら進めていくべき」と、考えを語った。

<全国新スマート物流推進協議会の参加状況>
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全国新スマート物流推進協議会には7月7日現在、19の市町村や、新スマート物流に関連する技術・製品を展開する12の企業・団体のほか、同取り組みを支援する14の都道府県が参画している。

会員になると、新スマート物流の導入に関する相談や情報等の提供が受けられるほか、導入事例の視察ツアーや会員限定オンラインセミナー等への参加が可能で、同協議会ではより多くの市町村や企業等に参画を呼び掛けている。

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