矢野経済研究所は7月24日、物流17業種総市場を調査し、17業種別の動向、参入企業の動向、将来展望を明らかにした。
それによると、2021年度の物流17業種総市場規模(17業種各市場の積み上げ)は、前年度比115.7%の23兆1860億円と推計した。
新型コロナウイルス感染拡大の影響により世界的に経済が停滞したことで、2020年度の物流市場も縮小したものの、2021年度は多くの産業で事業活動が再開されて荷動きが回復し、各物流業種における取扱物量も増加した(2019年度比112.9%)。しかし、その要因については、「物量の拡大といった要因ではなく、運賃等の物流費の高騰」と指摘。2020年度に発生した海上輸送と航空輸送の需給ひっ迫による運賃高騰が2021年度も継続したことで、海運や航空貨物輸送、フォワーディング等の国際物流に関連する物流業種で大幅に市場規模が拡大し、物流17業種総市場を押し上げる結果となった。
なお国内物流では、依然として半導体不足は続いたものの自動車業界等で荷動きが回復し、3PL等の物流業種で市場規模の復調がみられた。また、2020年度に続きECによる高い輸送需要により、宅配便市場は堅調に推移したが取扱物量という観点では、「コロナ禍以前の2019年度水準に完全には戻っておらず、コロナ禍のダメージから回復途上にある」としている。
このほか、注目されるトピックスとして、「新型コロナウイルス感染拡大によって市場環境が大きく変化したことで、物流業界の変化のスピードは加速している」と分析。国内物流においては、「トラック輸送方法の効率化や無人化などトラックによる長距離輸送を見直す検討が始まると同時に、トラック輸送から鉄道輸送や内航海運などへ輸送手段を変更する動きもみられる。輸送方法や輸送手段の変更は荷主の協力が不可欠。今後の国内物流市場は、いかに物流事業者と荷主が協力して取り組むことができるかにかかっている」とした。