キリングループロジスティクス(GL)は2月14日、東京都内のキリンHD本社において、2024年事業計画を発表した。また、同日「物流2024年問題」への対策について、トラックの集車力・配車力・配送力の向上を主とする「輸配送戦略」と、物流拠点の能力・グループの拠点ネットワークの最適化を主とする「拠点戦略」を強化するとの方針を示した。
<安藤弘之社長>
安藤弘之社長は2023年を振り返り、「売上高は前年比7億8000万円増の739億3400万円で着地し、三大物流被害・2大品質事故0件を更新している。2024年問題に向けての取り組みを計画通り実行し、概ね準備が完了した」と報告。将来的にも「運びきる」体制を実現するため、人材育成やグループでの新規事業の受託を進めるとの考えを明らかにした。
2024年を「2024年問題に向けて準備してきたことを実行する年」と位置づけ、全体計画として「輸配送能力強化」と「拠点能力強化」を掲げた。具体的には、1.必要台数の確保と2.限られた車の有効活用、3.構内作業体制の強化、4.DXなど事業基盤の強化の4つに取り組み、売上高は2023年比で約2%増の755億9200万円を見込む。
キリングループは「物流2024年問題」に対する考え方として、「輸配送戦略」と「拠点戦略」両軸のもと、「トラック運行数の削減」・「必要トラック台数の確保」・「限られたトラックの有効活用」といった視点で段階的に解決策を実施することを表明している。
キリンGLではこれを実現するため、「輸配送戦略」では、運送会社やドライバーが働きやすい環境を作り、集車力の強化につなげることを目的に、 トラックドライバーの運賃改定を図る。
運賃改定ついて同社はこれまでも継続的に対応してきたが、2024年4月以降、労働時間が規制の基準を超過する場合、追加的な運行が行えない状況が発生し、輸送会社各社の運行生産性が低下する可能性がある。これらは輸送会社各社の経営に直接的な影響が想定されるため、2024年4月よりキリングループ貨物のタリフ改定を行う。2020年比で全国平均10.3%の上昇率となる。
また同時に、これまでトラックあたりの輸送する貨物の重量ベースで算出していた運賃を、トラックの車型ベースでの算出に改定する。これにより積載状況の変動を受けず、トラックドライバーの安定的な収入につながる環境を整備する。
次に、 長距離輸送の削減(長距離ルートにおける中間拠点の設置およびモーダルシフトの加速)だ。550Km以上の長距離輸送ルートは、モーダルシフトまたは中継拠点で貨物を積み替えるバウンド輸送に変更することで、トラックドライバーの労働時間を削減する。2024年目標値は、550km以上のモーダルシフト化率:72%(2021年比:約2割拡大)。目標達成時には年間3130トンのGHG削減見込みとなる。
「拠点戦略」では、「トラックを『待たせない』=キリンを選んでもらう」(安藤社長)ことで、運行生産性向上を目指す。 同社の小林信弥常務・物流管理部長兼輸配送戦略部長によると「現状の構内滞在時間についてはデータをとっており、おおむね60分前後で推移している。繁忙期は60分以上となる場合もあるが、今後限りなくゼロにしていくことを目指したい」とした。同社ではキリングループの各拠点に、可視化ツール等のシステムの導入を進めるとともに、新ピッキングシステム導入についてもスピード感を持って取り組む。
さらに「事業基盤の強化」への課題として「DX化への取り組みの遅れ」をあげ、今年下期にはDX推進室を立ち上げる。人材育成にも注力し、早期キャリアアップや女性経営職比率を2030年には30%にする計画。男性の育休取得も推進するなど、多様化を推進し魅力ある会社づくりに取り組む。
安藤社長は「2024年プランはゴールではなく、スタート。『2024年以降問題』を、従業員とともに『全員経営』のスローガンのもと実行していく。4月以降、今のプランに修正も入ると思うが、『変化対応力』に磨きをかけ常に進化し続け、運びきることを目指したい」と展望を語った。