全日本空輸(ANA)は10月16日、成田国際空港に新設した第8貨物上屋を公開した。
公開に伴い、新設した第8貨物上屋を「ANA Cargo Base+(エーエヌエー カーゴ ベース プラス)」と命名。これまで分散されていた貨物上屋を、既存の第7貨物上屋と第8貨物上屋に集約し、業務の効率化を進める。なお、輸出入の貨物は11月より全面的に第7貨物上屋および第8貨物上屋に移行する予定だ。
第8貨物上屋の延床面積は成田空港内で最大の約6万1000m2、第7貨物上屋と合わせた上屋面積は従来から1万m2増え4万8000m2にもなった。集荷場所の集約と取引量の増加で、顧客のトラックドライバーに対する利便性の向上が狙いだ。
また、このために道路を新設、既存ルートとは別の道を作ることで渋滞の緩和なども対策されている。
第8貨物上屋では無人搬送車(AGV)を60台導入し、人力で行っていた輸出のオペレーションを一部自動化する。
上屋外縁は搬入口として人力のフォークリフトが移動、上屋中心部をAGVのエリアとし、輸出先の管理はバーコードなどで行う。搬送台に刻まれたバーコードを読み込ませることで、基幹システムから回収命令が出て、AGVが搬送台ごと物品を集荷していく仕組みだ。
電池残量に応じて適宜充電を行うシステムで、2時間の充電により最大8時間稼働できる。一方で、電池残量次第では貨物の運搬を優先するといった命令も可能だ。ピーク時には導入した60台をフル稼働させ、24時間体制で上屋の運営を行う。
なお、生鮮物、医薬品、冷凍物といった物品については、AGVを使わずに運搬する。また、搬送台に収まらないサイズの大きな物品も、AGVの対象外だ。
<無人フォークリフト(AGF)による左側搬出口への運搬デモンストレーション>
輸入搬出口では無人フォークリフト(AGF)も5台導入されており、自動高層ラックと合わせて、こちらも24時間体制で貨物の搬出を行う。空港ハンドリングでは世界初となるだけでなく、自動高層ラックとの連携は、空港以外の倉庫も含め国内初だ。
輸出・輸入ともに自動化によってミスを減らすほか、業務にかかる時間の大幅な短縮が見込めるとしている。特に輸入・輸出エリアが隣接したことも含め、今後は三国間貨物の取り扱いを強化していくという。従来は飛行機の到着から出発まで300分かかっていたところを、自動化により180分(うち上屋内では60分程度)まで短縮可能だ。
ANAの井上慎一 代表取締役は式典の挨拶の中で、デジタルを駆使した上屋の開設が「新しい成田空港構想」に大きく寄与すると発言。さらに航空貨物事業で重要な3点として、ANAの持つコンビネーションキャリアから「ネットワークと輸送力」、コロナワクチンや特殊機材を取り扱う社員の高い「輸送スキル」、第8貨物上屋が稼働することで得られる「貨物を取り扱う上屋」について述べた。
デジタル技術導入によるオートメーション化にも触れ、「ANAの貨物事業に重要なピースが加わり、世界のライバルと戦う準備が整った」とアピールした。
今後の貨物事業の位置づけとしては、大型・中型の貨物キャリアを持つことから、貨物はもう一つの柱事業としていくとも述べた。今回の第8貨物上屋の稼働も、旅客業と比べて貨物事業がサブという印象を改める側面もあるようだ。
成田国際空港 田村明比古 社長は、祝辞の中で「全国的な人手不足やサステナビリティといった、1978年の開港時には想定していない問題が顕在化する中、5年前からANAと成田空港の理想的な施設をどうするべきか議論してきた。今後のカギを握る、三国間のトランジット貨物を拡大するANAの取り組みに敬意を表するとともに、こうした取り組みが成田空港の一大物流拠点としての機能をさらに強固にしていくと確信している」とコメントした。
ANAは第8貨物上屋の稼働に際し、「顧客利便性の向上」「多様化するニーズへの対応」「サステナブルな未来への投資」といったコンセプトのもとで機能を最大限活用し、付加価値の高い貨物事業を展開していくとしている。