英国規格協会は3月21日、2024年のグローバルサプライチェーンのリスクに関する報告書「2025 サプライチェーンリスク&オポチュニティレポート」を2月28日に発行し、その抄訳版を公表した。
レポートによると、多くの主要国でのインフレと食品価格の上昇を背景に、食品・飲料および農作物が引き続き世界のサプライチェーンにおける盗難リスクにさらされており、昨年の盗難事件件数のほぼ3分の1(32%)を占めているという。
サプライチェーンインテリジェンス分野のBSIコンサルティングの分析によると、2024年には食品、製造、建設、製薬、ハイテク、小売業など、ほぼすべての業界で盗難が急増していることが明らかになった。この急増は、BSIが盗難の監視・報告方法を毎年改善しているため、記録される盗難数が増えたことが要因のひとつに上げられる一方で、企業の直面する課題が、範囲と規模の両面で拡大していることを示している。
また、食品・飲料の盗難は件数ベースで前年比79%増、農作物は73%増となり、両カテゴリーで輸送中のハイジャック全体の約半数を占めている。食品・飲料は全盗難製品の22%を占め、サプライチェーンにおけるハイジャックの3件に1件(29%)に該当する。農作物は全盗難製品の10%を占め、電子機器(9%)とともに被害額の大きい上位3品目に含まれている。注目すべき事件としては、米国で250万ドルの高級オリーブオイルが盗まれた事件や、アルゼンチンで約1000トンの大豆が盗まれた事件などが挙げられる。
今回の分析では、企業や従業員が自社のトラックを乗っ取り、不正な保険金請求を行うケースや、倉庫の管理者や従業員が不完全な記録を利用して追跡されていない商品を横領したりするケースが見つかった。また時間をかけて少量ずつ盗む窃盗団が増加し、最終的に大きな損失となるケースも増えている。さらに手の込んだ手口では、従業員が不正な鍵を作成して制限区域に侵入するケースもあった。調査では、関税のような経済的手段が、政治的な影響を及ぼし、地政学的目標を主張するための戦略的ツールとしてますます利用されていることが判明した。
2024年、テクノロジーは引き続きグローバルサプライチェーンに影響を与え、企業はAIなどの最新技術を活用したが、これは同時に新たなリスクをもたらした。地政学的な不確実性の中で、サプライチェーンは関係者による窃盗や労働運動に引き続き取り組まねばならず、これらの要因が相互に関連し、世界中の企業、政府、社会に影響を及ぼすことを浮き彫りにした。企業が通過しなければならない複雑な市場環境のため、サプライチェーン、リスク、調達の管理者にとって、一貫した統合的な視点を通じて自社の脆弱性を評価することがますます重要になっているとしている。
■「2025 サプライチェーンリスク&オポチュニティレポート」(英語版)
https://www.bsigroup.com/en-US/insights-and-media/insights/whitepapers/2025-supply-chain-risks-and-opportunities-report/
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