厚労省/トラック運送業の過労死対策、荷主との取引関係改善を

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厚生労働省は10月7日、「2016年版過労死等防止対策白書」を発表し、過労死等の防止対策の実施状況について、トラック運送業を取り上げている。

トラック運送業はコストに見合った適正な運賃が十分収受できない中、「ジャスト・イン・タイム」での納品を求められるなど、近年、発注者である荷主の要請が厳しくなっているとされている。

荷主側の都合による長時間の手待ち時間が発生するといった問題も見られる。こうしたことが一因となり、トラック運送業では、トラック運転者が長時間労働を余儀なくされている実態がある。

例えば、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(2015年)では、1か月の所定内実労働時間数及び超過実労働時間数の合計は、営業用大型貨物自動車運転者では218 時間、営業用普通・小型貨物自動車運転者では215時間となっており、調査産業全体の平均の177時間を大きく上回っている。

また、総務省「就業構造基本調査」(2012年)では、週の労働時間が60時間以上の雇用者割合について、全体の平均が11.6%であるのに対し、自動車運転従事者では35.3%となっている。

産業別でみても、道路貨物運送業の年間総実労働時間(パートタイム労働者を除く)は、全産業の中で最も長い、2443時間(所定内労働時間2018時間、所定外労働時間 425時間)であり、平均の 2026時間を大きく上回るなど(厚生労働省「毎月勤労統計調査」(2015年)、各種調査においてトラック運転者の長時間労働の実態が明らかとなっている。

厚生労働省「過労死等の労災補償状況」(2015年度)を見ても、脳・心臓疾患の全支給決定件数251件のうち79件が、精神障害の全支給決定件数472件のうち27件がトラック運転者に対するものであり、すべての労働者の中に占めるトラック運転者の割合が大きな比率を占めている。

トラック運転者の長時間労働の実態は深刻であり、その改善は急務であるが、トラック運送事業者側のみの努力でこれを解決することは困難であると考えられることから、発注者との取引関係のあり方も含めて改善を図っていくことが不可欠であるとしている。

なお、2012年度から「トラック運転者労働条件改善事業」として、荷主企業、元請運送事業者とその元請運送事業者の下請運送事業者(1次、2次下請等を含む)を含めた協議会を設置し、アドバイザーによる個別指導等を通じて、荷主企業とトラック運送事業者の協力により、トラック運転者の長時間労働を改善する取組を行ってきた。

2015年度にはアドバイザーによる個別指導等を引き続き実施するとともに、過去3年間(2012~2014年度)の成果から作成した取組事例集を用いて、全国各地で開催したセミナーで好事例を紹介することにより、荷主企業とトラック運送事業者に対し、両者の協力によるトラック運転者の労働条件改善策について周知・啓発を行った。

2015年5月、トラック運送業における取引環境の改善と長時間労働の抑制を実現するための具体的な環境整備等を図ることを目的として、学識経験者、荷主、トラック運送事業者、経済団体、労働者団体、行政(厚生労働省、国土交通省、経済産業省)などにより構成される「トラック輸送における取引環境・労働時間改善協議会」を中央において開催した。

2015年7月以降、すべての都道府県に同様の協議会(地方協議会)を設置した。中央協議会及び地方協議会については、2015年度はそれぞれ合計3回ずつ開催され、トラック運送業の長時間労働の実態を委員間で共有した上で、荷主とトラック運送事業者が一体となって長時間労働の抑制に取り組んだ事例を紹介するなどの取組が行われた。

トラック運転者の長時間労働の要因等を明らかにし、今後の対策検討に生かすことを目的として、2015年9月に、全国5000名以上のトラック運転者とその運転者が所属する事業者を対象に、「トラック輸送状況の実態調査」を実施し、2016年2月に調査結果を公表した。

今後、調査結果を基に、各都道府県において、その実態に応じた課題に対応するべく、荷主とトラック運送事業者の協働によりトラック運転者の長時間労働の抑制に取り組むパイロット事業(実証実験)を実施する。

■2016年版過労死等防止対策白書
http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/karoushi/16/dl/16-1.pdf

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