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プロロジス 会長兼CEO ハミード R. モガダム氏/トップインタビュー

2018年06月28日/物流最前線

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プロロジスのハミード R. モガダム会長兼CEOが6月22日に来日、「プロロジス 未来その先へ」と題し、今後のプロロジスの物流施設開発での基本方針を明らかにした。

「箱ものだけの提供は過去の話、我々はイノベーションを基軸に、よりエンドユーザーの要望に沿う開発を進める」と明快に語った。

新時代の物流施設開発が今後どのように進むのか、何が必要になるのか、プロロジスのビジネス戦略を聞くとともに、併せて地震に対する日本と海外市場での違いについても聞いた。

<米国でのプロロジスの物件 カリフォルニア州トレーシーにあるアマゾンのフルフィルメントセンター>
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■米国アマゾンのフルフィルメントセンター
https://www.prologis.com/industrial-logistics-warehouse-space/california/tracy/tracy-phase-ii-building-08

<米国ワシントン州シアトル市ジョージタウンのプロロジスの物件。米国では前例がないランプウェイを備えた多層階の施設となるため、日本法人が設計に協力している>
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■米国ワシントン州シアトル市ジョージタウンの施設
https://www.prologis.com/industrial-logistics-warehouse-space/united-states/seattle/prologis-georgetown-crossroads

世界に誇る日本の耐震・免震技術

<プロロジスのハミード R. モガダム会長兼CEO>
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―― この6月18日、大阪北部地震が発生しましたが、先進的大型物流施設では大きな被害はなかったようです。地震対策での耐震、免震構造に関してのグローバルなプロロジスの方針は。

モガダム 日本では地震が多く、さらに高層階の施設が多く、耐震、免震構造は必須でしょう。海外では、平屋建てが多く、屋根と壁が分離せず、壁が倒れてこない構造であればよいというアプローチです。カリフォルニアも地震が多いのですが、平屋建てが多く、立体構造が崩れない設計にしています。しかし、日本のように地震が多く高層階だとより複雑な構造が必要になってきます。

―― 高層階の物流施設は日本以外にはあまりないと。

モガダム そうですね。日本のような構造、つまりランプを持ち、複数階にトラックが上がっていける構造は少ないですね。香港やインドネシア等では高層階の物流施設がありますが、ランプはありません。荷物はエレベーターで運び上げるタイプです。欧州でも同様です。イタリアは地震が多く、耐震・免震がある程度必要ですが、平屋建てが多く、ドイツ、フランス、イギリスなどは地盤が安定していて、地震の恐れがあまりありません。耐震・免震構造技術の進んだ物流施設が一番発達しているのは日本の施設です。

―― 高層階で地震の多い国には必要な技術ということですね。

モガダム プロロジスでは、米国・シアトルで多層階の物流施設を開発しています。米国では今回が初めての多層階開発となるため、日本のプロロジスのチームに協力してもらっています。日本発のイノベーションが米国で活用される好事例になると思っています。

イノベーションのグローバルなトレンドは3つ

―― さて、「プロロジス 未来、その先へ」では、プロロジスの発展はイノベーションの歴史だったと。

モガダム イノベーションはプロロジスのDNAです。1983年に創業して以来、組織全体の理念として、今日に至っています。これは、新たな事業機会を創出し、コスト効率を高めるための道筋でもあるのです。

―― プロロジスのイノベーションとは。

モガダム 例えば、1998年には土壌改良した土地で初となる物流施設を竣工、2001年に日本第一号案件として、プロロジス初の多層階の施設開発を開始、2009年には社内に再生エネルギーグループを組成、物流不動産会社として初めて100MW以上の再生可能エネルギーを生成するなど、いち早く時代の要請に応えてきました。プロロジスのイノベーション戦略とは、カスタマーやパートナ―企業と協業し、様々な機会を提供することで、グローバルサプライチェーンの変革に寄与してきたことです。

―― 今後のプロロジスのイノベーションのトレンドにはどのようなことを考えていますか。

モガダム イノベーションのグローバルなトレンドには3つのキーワードがあります。「ネットワーク」「データ」「インテグレーション」です。すでに物流施設という箱物提供だけという業態は我々にとっては過去のものになっています。ネットワークというのは、物流施設同士のネットワーク化、あるいはロジスティクスとリアルエステート(不動産)を結び付けて提供するということです。2つ目のデータは、ビッグデータの活用です。例えば、物流施設へのトラックの出入りや、倉庫内作業で大量に生まれるデータを収集・加工し、カスタマーにビジネスで役立ててもらうことです。

―― 3つ目のインテグレーション(統合)とは。

モガダム 今現在、物流という観点で見た場合、どこに物流施設を建てるのか、従業員の手配は、実際の輸送はどうするのか等、各々で部署が違い、ばらばらの状態でサプライチェーンが組まれています。カスタマーからすると、これを1か所でまとめて、全体としてどうなのかと判断したいと思っていると思います。そのため、今分離されている個々の活動がインテグレートされて、統合された形での全体としてのコスト管理、効率化が必要だと思っています。我々は戦略的にレベルアップし、このような課題に応えられることが必要です。そのためには、エンドユーザーが何を求めているのかを適宜つかんでいくことが大切なことです。

―― エンドユーザーとは一般消費者ですか。

モガダム 当然、我々のカスタマーだけでなく、一般消費者の動向を掴んでおくことは非常に大切なことです。消費者の動向により、流通も物流も製造も形態を変えていきます。消費者の動向を掴まずして、先を読むことはできません。例えば、インターネットで商品を注文した人が5分後にその商品を欲しいとすれば我々は何をしなければならないのかを考えることです。少しでも消費者の要望に沿っていこうとすれば、当社のカスタマーは、より消費者の近くに、より多くの商品を常備しなくてはなりません。ここでは、スピード、セレクション、バラエティがキーワードになります。

―― 物流施設開発も新しい段階に入ったと。

モガダム 先ほども申しましたが、箱だけを貸していた時代はとうに昔の話です。我々は新しい時代に入っているのです。「プロロジス 未来、その先へ」はプロロジスのタグラインですが、常に時代は動いていますし、当社のカスタマーのビジネスも常に進化を続けているのです。このような変化に遅れてはならず、ほんの少し未来を先取りしたビジネスが戦略的に必要です。これまでもこれからもその重要性に変わりはありません。

―― デベロッパーとしての業務の範囲が広がることになると。

モガダム 当然、業務の範疇は広がるでしょうが、誤解されては困りますが、物流施設提供が我々デベロッパーの役割であり、なんでもやるという意味ではありません。あくまでも物流施設にかかわる用途において、さまざまなサービスなり技術が役立つということを言いたいわけです。

<プロロジスのハミード R. モガダム会長兼CEOと日本法人の山田御酒社長>
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変化を恐れず、自分から飛び込んでほしい

―― 現在、ワールドカップが賑やかですが、日本では2019年にラグビーワールドカップ、2020年には東京オリンピックも開催されます。需要面からすると大きなスポーツイベント等により倉庫需要への影響はありますか。

モガダム マイナス要素とプラス要素があります。マイナス要素では、例えば日本では東京オリンピックが決定したのち、建設コストが20~30%も上がりましたが、これは我々の立場からするとマイナス要素です。オリンピック需要による経済の活性化も試算されていますが、これはプラス要素です。しかし、いずれも長期化するわけではなく、いずれ平準化していきます。影響はごく短期的なものとみています。

―― さて、プロロジスの会長として世界を飛び回るハードなスケジュールの中、そのエネルギーはどこから。

モガダム 趣味ではゴルフ、車、スキーといろいろやりますが、一番のエネルギーの源は仕事ですね。私は仕事に関する興味、関心、意欲が非常に強いのです。仕事で人と会うことで、さまざまな話をし、多くのエネルギーを得ているように思います。常に良い高揚感に包まれています。私自身を振り返ると26歳で2人の仲間とともに起業した小さな企業が今やグローバルな企業に発展しました。何千人という人と会って語り、触れ合ってきました。こんなことができた人はそうは多くないでしょうし、私はとてもラッキーな人間だと思います。これまで自分がしてきたことも愛しているし、一緒にやってきた仲間も愛しています。

―― 読者にメッセージを。

モガダム すべてのビジネスマンに申したいのは、ビジネスでは変化を恐れず、変化を求めて自ら飛び込んでほしい。そうすることによって成功への道筋が見えてきます。もちろん、やったことがないことをやるわけですから、失敗も多くあります。でも、失敗をいち早くすることが大切なのです。いち早く失敗することがいち早く学びを得ることができ、成功へとつながります。

<プロロジスのハミード R. モガダム会長兼CEO>
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■プロフィール
1956年8月生まれ。出身地はイラン・テヘラン。
スタンフォード大学ビジネススクールで経営学修士号、マサチューセッツ工科大学で理学修士号を取得。
1983年にプロロジスの前身であるAMBプロパティコーポレーションを共同で設立。1997年に新規株式公開を行い、2011年にプロロジスと経営統合した。
全米不動産投資協会(NAREIT)の会長を務めたのをはじめ、Plum Creek Timber社の取締役や不動産ラウンドテーブルの設立メンバーとなるなど、不動産業界で数々の戦略的役割を果たしてきた。
また、スタンフォード大学の理事を務めるほか、スタンフォード・マネジメント社の会長も務めている。加えて、Urban Land Instituteの取締役会の執行委員を務めている。
サンフランシスコ湾岸地区の地域活動にも積極的に携わっており、カリフォルニア科学アカデミーや少年たちのための教育組織(Town School for Boys)、若手経営者の組織であるYoung Presidents Organizationの北カリフォルニア支部で議長を務めるなど、様々な事前活動やコミュニティボードに参加している。
アーンスト・アンド・ヤング社の年間最優秀起業家賞Ellis Island Medal of Honorを受賞しており、4つの業界紙・誌で8度にわたり年間最優秀CEO賞に選出されているほか、全米不動産投資協会の業界リーダーシップ賞など数々の受賞歴がある。

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