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Gaussy/物流はコストではなく重要な機能 ロボット導入は人手不足の切り札

2025年03月27日/物流最前線

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Gaussy(ガウシー)は倉庫内作業の自動化を実現するロボットとソフトウエアを取り扱っている会社だ。約3年前に立ち上げたが、既に国内に多くの顧客を獲得している。櫻井社長は「物流業界は今も人手不足ですが、将来的にはさらなる規模の人手不足が確実視されています。その解決策として切り札となるのがロボットによる自動化・DX化です」と語る。人間の作業をロボットに置き換えるだけではない、新たな価値を生むロボット導入・DX化について語ってもらった。
取材:3月4日 於:Gaussy(ガウシー)本社

<Gaussy(ガウシー)の櫻井 進悟社長>
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<Gaussyのショールーム>
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2024年問題は緒に就いたばかり
人手不足は着実・確実に進行する

――  2025年を迎え、物流の「2024年問題」についてどのように分析されていますか。

櫻井  全体は把握できていませんが、荷主側では少子高齢化による生産人口の減少から、ドライバー不足で「運んでもらえない危機感」や「運賃の高騰」といったものが当初から想定されており、その対策をどうしようかと揺れ動いた1年だったと思います。一方、物流事業者側でも、例えば慢性的なドライバー不足と共に、長距離ドライバーに関する労働時間規制の改正がなされたことから、中継拠点を設けるとか、モーダルシフト化を図るといった、物流の大きな変革期だった1年だと思います。

――  大きな混乱が予想されましたが。

櫻井  少なくとも今のところは大きな混乱にはなっていませんが、その水面下では多くの問題が山積したままだということも忘れてはなりません。ただ、一部の物流企業はドライバーの稼働時間の削減により、中継拠点の整備等、早くから手を打っていましたからね。さらに、荷主側も輸配送費については、適正な運賃交渉で上がるということは想定していたと思います。荷主によっては2024年問題が始まる前から、物流会社に対して輸送費アップを認めるといった話も聞きました。多分、物流はコストではなく、商品を販促するための重要な機能だと少しずつ認識が改まってきたのではないかと思います。

――  確かに当初言われていた「運べない危機」とまでは至っていないようです。

櫻井  今はなんとかやっていけている状況だと思います。ただ、今後確実に生産人口の減少に伴い、ドライバーの数も減ることは確実ですから、さらなる努力が必要なことは言うまでもありません。これまでドライバーにお願いしていたような倉庫でのフォークリフトの操作や荷下ろし等の作業負荷についても、頼めなくなると、新たな労働力が必要になってきます。顧客に聞いた話ですと、倉庫の従業員の採用についても現在は厳しく、特にフォークリフトを操作するフォークマンは採用が難しくなっているようです。

――  フォークマンも一朝一夕には育てられませんからね。自動フォークリフトも登場していますが、一般化するにはまだ時間がかかりそうです。

櫻井  物流現場の人手不足は恒常的なもので、早くから危機感を抱いていたという側面もあると思います。それが、具体的に2024年問題として顕在化し、国民の意識の中にある程度定着し社会問題化したとみています。

例えば、倉庫なら、昔は拠点として人が集まる場所が最適とされたのですが、今やそのような場所に倉庫を構えることは非常に難しくなっています。さらに、集まりやすい場所でも、倉庫の従業員として集めることも困難な状況です。

――  2024年問題に対しては、政府が方針を出して、自動化・DX化を進める等、様々なものがありますが、まだ緒に就いたばかりです。御社はロボットによる自動化を進めているわけですが、物流現場のロボット化・DX化が必要になる時代が来たと。

櫻井  そうですね。私は以前、物流不動産に携わっていたので、倉庫現場に人が集まらない状況はよく理解していました。それを改善するためにはどうしてもロボット化や自動化は必要になると確信していました。そこで、2022年7月に事業を開始したわけです。

<フォークリフト代わりにもなる重量物搬送可能なAMR>
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マーケットインが基本方針
アフターフォローが強力な武器

――  創業から約3年目ということですが、ロボットメーカーというのは当時スタートアップを含めて相当な数があったと思いますが。

櫻井  確かに当時も今もですが、たくさんのロボットが登場していました。省人化にロボットは必要だと確信はしていましたが、本当にロボットで生産性を高め、省人化が図れるのかという根本から考えていきました。ロボットはロボットであり、人が作った機械で故障しないものなんてありませんし、完全なロボットは存在しません。

弊社は、必ず自分たちで実証した上でマーケットに出すということを実践しています。当然試行錯誤しながら、失敗も重ね、これならマーケットに出しても効果があると確信してからマーケットに出すプロセスを大切にしています。

――  御社のロボット群は海外製ですか。海外製は導入後の不安が大きいともよく耳にします。御社ではなにか特徴的なことはありますか。

櫻井  今のところはそうです。決して日本製を排除しているわけではなく、良いものを選ぶことから、このような商品群になっています。あくまでも、考え方がプロダクトアウトではなく、マーケットインなのです。顧客起点で倉庫現場ではどういった課題があって、どういうロボットを導入したら一番よくなるか、改善できるか、生産性が上がるかを考えての選考です。また弊社の特徴としては、倉庫の業務フロー毎に適したロボットを扱い、ロボットの安定稼働や生産性向上のために顧客と伴走し続ける点に拘っています。

――  ロボットのラインナップには、どのようなものがありますか。

櫻井  現在商品展開しているのは、仕分けでは、OmniSoter(オムニソーター)、AMR(自律型ナビゲーションロボット)ではFlexシリーズと1.5トン運べるMAX、GTP(棚搬送型ロボット)ではMushiny T6シリーズ、Ranger GTP等があります。

――  倉庫内の自動化ロボットが勢ぞろいですね。顧客と伴走というとアフターフォローのことですか。

櫻井  そういうことです。導入して終わりではなく、大切なのはロボットが稼働してからで、当初予定していた生産性が出るのか、出ていない場合はどうしたらよいのか、顧客と一緒に伴走し、生産性を高めることを実行しています。万が一の故障に備え、365日24時間体制のコールセンターも設けています。このコールセンターで8~9割くらいの問題に対処できています。ディスプレイが割れたとか、ロボットの消耗品が壊れた場合のようなときには、弊社のスタッフが急行します。このような万が一のトラブルが起きる前に、定期的に顧客サイトを訪問してトラブルを未然に防ぐことにも注力しています。

――  アフターフォローは「物流を止めない」観点からもとても重要ですね。

櫻井  物流を長時間止めることは許されないことですからね。特に、オムニソーターの導入の際には、顧客からこの部分には高い評価をいただいています。オムニソーターのシステムの中では、仕分けを担うロボットが10台前後縦横に稼働していますが、ロボット2~3台を予備として置いておくと、故障かな?と思ったときにロボットを入れ替えるだけで代替が効きますし、基本的に長時間物流を止めないということに最大限の重点を置いています。

<オムニソーター内部にある仕分けを担うピンクのロボット>
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――  ロボット化やDX化を図る場合、現場でよく聞くのが、荷主側のシステムに合わせて欲しいという要望だということですが。

櫻井  確かにそれはあるでしょうね。その点では、「STREAM(ストリーム)」というソフトウエアを自社開発しています。ロボット自体を動かすコントロールシステムはロボットメーカー自体が開発していますので、その部分と現場倉庫のWMSとを連携させないといけません。WMS改修は、モノによっては何千万円の資金と半年間程度の期間がかかる場合があります。これだと、ロボットとは別にコストが上乗せされるので、ロボット導入を躊躇する場合も出てきます。そこで、STREAMというミドルウエア(中間ソフト)をセットで提供することで、基本的にWMSの改修が必要なくなるものです。弊社ではロボットと共に、このSTREAMを提供していることも大きな特徴の一つです。

<自社開発ソフトウエアSTREAMの画面イメージ>
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<柔軟性の高いAMR、Flexシリーズ>
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ROIと現場と経営者の乖離
今はそのせめぎあいの時期

――  ロボットを導入することが生産性の向上につながることは多くの人が理解できると思うのですが、中小企業中心にやはり初期投資が結構ネックになっていませんか。

櫻井  そうですね。やはりROI(Return on Investment:投資利益率)という考え方があって、そこは結構各社さんとも意識されていますね。何年で回収できるんだといったように、ROIは絶対的と思われている方がいる一方、人件費も上がり人も集まらない状況では機械化・自動化は必要という考えの方もいらっしゃいます。いろいろなロボットを導入して、機械リテラシーを高めていこうという方たちですね。今は、そのせめぎあいの時期だと思います。面白いことに、隣の芝生は青く見えるというか、ロボット導入で実績を上げている企業の噂を聞いたある企業が、突然こちらにお声がけしてくれ、導入に至ったケースもあります。

――  物流事業者の中には、荷主からWMSシステムを荷主側に合わせて欲しいという要望もかなりあるようですが。

櫻井  WMSは基幹システムですから、先ほど申したように改修は簡単にはできませんし、費用もかかります。その点、弊社にはSTREAMが用意されていますので、その点は大きなアドバンテージになると思っています。実際、STREAMがあることで、成約につながったところもあります。

――  ロボット化・自動化についての現場と経営層の乖離といったものはどうでしょうか。

櫻井  これは両方ありますね。一つは、経営層がロボットの導入を考えていても、現場はどうにかできると今の状況を変えたくないということ。もう一つが、現場は人手不足で限界だから、ロボットを入れて欲しいのに、資金的な面や先ほどのROIで消極的な経営者という具合です。ただ、なんとか省人化していかないと、業務が回らなくなってきている事だけは認識していますね。それらで悩んでいる企業は多いと思います。

――  しかし、2030年までに時間はそんなにありませんよね。

櫻井  ないですね。例えば、ロボットを導入しても、荷主との契約が切られた場合、ロボットは不要になります。AMR等のロボットは移転できるとイメージできますが、弊社の仕分けロボット、オムニソーターは分解して他の場所に移転できるのも特徴です。倉庫の賃貸契約が満期となって出ていかなければならないケースもあるため、そこはフレキシブルな対応が取れるわけです。これも弊社のユニークな点だと思っています。

――  移転ができる点は素晴らしいですね。ところで現場の意見が二つに分かれているとは思いませんでした。多分、人手不足で仕事量が限界だから、今すぐにもロボットを入れて欲しいと思っていましたが。

櫻井  現場でやる気のある人ほどロボットを入れて欲しいと思っているようです。そういう方ほど、上手にロボットを使いこなせていますし、生産性を上げていますね。ロボット自体に名前を付けたりとか、あの子、この子といった呼び方をしていると、なぜか生産性も上がっているようです。ロボットは仲間なんですね。

――  ロボット導入時の、ベテランの高齢者や若者との違いはありますか。

櫻井  基本的にはないですね。個人の差になると思います。例えば、RangerGTPやMushiny T6シリーズのような棚を運んでくるようなロボットは、画面に表示されたとおりに実行すれば誰でも操作できます。どのロボットも基本的に初心者でも、最初の教育を受けていただければ、大丈夫な仕様にしています。これも弊社の特徴のひとつですね。

<棚搬送型ロボットMushiny T6シリーズを使っている様子>
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<冷蔵倉庫でオムニソーターを使用している様子>
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<オムニソーター>
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業種問わず多彩な導入事例
生産効率アップに伴走する

――  御社のサイトを見せていただくと、導入事例として、ZOZO、日本郵便、佐川グローバルロジスティクス、エイシン、日本トータルテレマーケティング、スミレ・ジョイント・ロジ、LIXIL、ディーエムソリューションズ、吉田海運ロジソリューションズ、三菱商事ロジスティクス、日本梱包運輸倉庫等、様々な企業規模・業種の倉庫に導入されていますね。

<オムニソーターを導入したZOZOの現場>
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櫻井  そうですね。例えばオムニソーターを導入したEC企業の日本トータルテレマーケティングさんでは、1台目を導入した後に2台目を導入しています。これは、労働力不足に対して、オムニソーターが決められた時間内にきちんと100%の品質を担保して稼働することで生産効率をアップさせています。品質がきちんと担保されていることは、企業にとっては利益に繋がります。人間がやると、どうしてもヒューマンエラーは避けられません。

――  ZOZOの導入事例では、柔軟性・拡張性が高いことが決め手になったとしていますね。

櫻井  オムニソーターは、柔軟性・拡張性が高いソリューションだったので現状のレイアウトに合った効率化を目指せるとのことから導入を決めて頂きました。現状、前年対比では120%以上の生産性向上の確認がとれているそうです。また、導入の効果を最大化するために日々の運用を更に改善中です。今後の労働人口減少に伴う担い手不足に備えて、戦略的に自動化の検討化を進めたいとお考えのようです。

――  2024年10月にオムニソーターの食品モデルが登場しましたね。これはどういうものですか?

櫻井 業種問わずにオムニソーターの導入が進んでいるのですが、食品物流への導入も多く、その食品物流に必要な機能が揃ったモデルです。食品物流における知見が蓄積していったので実現しました。顧客の声をダイレクトに聞き、すぐに必要なものをマーケットに送り出す。顧客と共に物流を良くしていこうというシナジーの賜物です。

<オムニソーター食品モデルの仕分け間口の一例>
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その食品物流の労働環境でいうと、冷蔵倉庫は寒いので労働環境がより過酷で、かつ物量も多く作業員の負荷が高いのが実情です。仕分け工程の効率化が負担を軽減させる一つのピースとなっています。実際に、最新の事例で言うと三菱食品から4拠点、南日本運輸倉庫からは3拠点に導入がされています。

――  さて、これまで導入企業の事例についてみてきましたが、今後このロボット化・自動化に乗り遅れるとどうなるでしょうか。

櫻井  まず、サステナブルな物流、安定した物流サービスが提供できなくなると思います。次に、人手不足から物量を処理できなくなり、売上が減ることも考えられます。さらに、現場には高齢者の方が現在多いのですが、一斉に引退する時期にきています。そうすると、ベテランの技でこなしていた業務も滞ることになります。若者に教育する時間も経費も必要になります。そういった影響が考えられますが、それ以前に新しい人が採用できるかといった難しい問題もあります。

――  若者が目指すような職場にしないといけないということですね。

櫻井  やはり現場作業は肉体的にも精神的にもきついし、間違いは許されないといった面があります。労働環境の改善を図らないと、人はやってこないと思います。その意味で、ロボット化というのは、人間はロボットのオペレーターですから、見学してもらえば未来の職場のように感じてもらえます。受ける印象は変わってくると思いますよ。

――  現在、多彩なロボットを扱っていますが、今後の展開については。

櫻井  一部の県を除いて、北海道から沖縄まで、全国で導入実績があり、広がっています。特にオムニソーターは物流事業者に多く導入してもらっています。一方、GTPとかAMRとかは荷主側が多いですね。商材は多そうに見えますが、まだまだ増やしていきたいと思っています。今、いろいろ検討している最中で、先に話しましたようにマーケットにフィットするかどうかの検証を続けています。年に1機種ぐらいは出していきたいと思っています。現在ロボットのラインナップが複数ある中で、主力になっているのがオムニソーターです。それと、棚を運ぶGTP、そして1.5tの重量物を運ぶAMRも非常にユニークです。1.5tというのはあまり聞かないですから、かなり問い合わせが増えています。

――  最後になりますが、LNEWS読者にメッセージを。

櫻井  マーケットインの思想で良い製品を見つけ、我々の独自ソフトであるミドルウエアのSTREAMと共に導入いただき、成果が出るまで伴走し、最後まで一緒にやっていくというポリシーを最も大切にしています。2024年問題での人手不足の社会課題にも現場改善や、現場の省人化等で寄与できればと考えています。もし、こういったところを省人化できないかといった相談があれば、良いロボットを必ず見つけてきますので、気軽に相談いただければと思います。

――  長時間ありがとうございました。伴走という言葉にビジネスの本質を見た感じがしました。

取材・執筆・撮影 山内公雄 石本融藝

<櫻井 進悟 社長>
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■プロフィール
櫻井 進悟(さくらい しんご)
国際物流実務を経て物流不動産の投資・開発事業に従事、産業REIT上場を経て、2010年香港赴任し、香港物流会社社長、中国不動産投資事業を担当。帰国後、不動産運用会社出向等を経て、倉庫DX事業のリーダーとして当社立上げを主導。事業投資先管理業務を経て、2024年4月に当社CEOに就任。

■Gaussy公式サイト
https://www.gaussy.com/

農林水産省/農産物・食品の流通は荷主と物流事業者との共同作業

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