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物流最前線・SBSHD/M&Aで2025年には5000億円企業

2024年04月19日/物流最前線

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1987年に軽の即配便でスタートしたベンチャー企業が、数多くの有名企業の物流子会社のM&Aで、年商4300億円の上場企業に成長した。次なる目標は2025年に5000億円企業、そして1兆円の大台だ。「M&Aは今後も積極的に進めていく。すでにそれらの案件は数多く来ている」と話すのは、カリスマ創業者ともいえる鎌田正彦社長だ。2024年問題で揺れ動く物流業界の動向を「チャンス到来」と捉え、さらなる拡大路線を目指す。今後は海運、航空、そして海外市場へも目を向ける同氏の想いと、今後の展望について伺った。
取材日:4月3日 於:SBSホールディングス本社

<現在の同社グループが入居するビル>
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<創業時の鎌田社長>
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佐川急便を脱サラし起業
売上20億円達成が転機

――  鎌田社長がベンチャーとして創業したSBSですが、これまでの経緯をご説明ください。

鎌田  私は九州の田舎から上京して佐川急便に入社しました。その佐川急便に約8年間勤め、脱サラして会社を興しました。最初は軽自動車による即配便の関東即配(SBSホールディングスの前身)を設立しました。当時28歳でした。

――  佐川急便時代の直属の上司が現SGホールディングスの栗和田会長と聞いています。

鎌田  そうです。30周年のパーティーの時も出席してもらい、当時M&Aで当社が伸長している最中でしたから、冗談で「できるものなら、SGホールディングスをM&Aしてみろ」と発破をかけられましたね。

――  その後も、大手企業の物流子会社をM&Aすることで、急成長を遂げました。

鎌田  ベンチャーで物流会社を興して巨大企業に成長させるのは並大抵ではありません。創業して3年目くらいで売上が20億円くらいになったときに、社員に「2000億円にする」という目標を話しました。創業して10年で100億円、20年で1000億円、30年で2000億円という計画でした。専門誌の記者に話しても信じてもらえない雰囲気でしたね。それでも言い続けてきました。

――  その計画の根拠になったものは。

鎌田  どうやって2000億円をやるかですね。いろいろ考えていましたが、創業10周年の時に100億円の売上と2~3億円の利益を出していました。そこで上場し、そして同時にM&Aをして成長を目指そうと考えました。M&Aしか確実に拡大する方法はないということです。それから上場準備にかかり、創業16年目で上場を果たしました。その時には売上が200億円、利益が4億円になっていました。ところが15億円の時価総額が初値30億円、サービス業の株価が上がっている時期と重なり、ストップ高まで上がりました。時価総額が約780億円にもなっていたんです。そこで、「M&Aは今だ」と考え、公募増資して70億円を市場から集め、その翌年に雪印物流をM&Aしました。

――  雪印物流の時は驚きました。

鎌田  雪印物流をSBSという聞いたことが無いような会社が買収したわけですからね。これで売上が451億円から約600億円になったわけです。その翌年に東急グループから東急ロジスティック、伊豆貨物急送、日本貨物急送の3社をまとめてM&Aして、これで1000億円に到達しました。その後、JVCケンウッド、リコー、東芝、古河電工と有名な企業の物流子会社をM&Aしてきました。日本ガイシも物流業務の移管を行っています。リコーロジスティクスの時に売上が2000億円に達しました。2000億円構想からすると1年遅れの到達でした。

――  今期の売上はどのくらいでしょうか。

鎌田  今年は4300億円くらいですね。大きくなればなるほど加速してきますね。2025年に5000億円を目標にしています。1兆円の売上もそんなに難しくないと思っています。見えています。

――  見えているというと、次なるM&Aということですか。

鎌田  実は結構案件が来てるんですよ。2024年問題は我々も苦しいのですが、中小の物流事業者はもっと苦しい。中小の企業は法規制をそのまま適用すると、営業利益はさらに低下してしまいます。人手不足、ドライバー不足も深刻です。さらに、日本の大手企業は物流子会社をまだまだたくさん抱えています。2024年問題は始まったばかりで、今後様々な現象が生まれてくるものと思います。

<野田瀬戸物流センターA棟外観>
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<別角度からの野田瀬戸物流センターA棟外観>
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<野田瀬戸物流センターA棟のトラックバース付近>
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リストラしている場合ではない
もっともっと人が欲しい

――  御社のM&Aではメーカー系の物流子会社が多いですね。

鎌田  これはたまたまであり、あらゆる産業の企業から話はいただいています。我々と一緒になってお互いに伸びる会社、シナジーがある会社と一緒にやっていきたいですね。ほかに航空フォワーダー、海上フォワーダー等からもお話はあります。

――  方針として、M&AでSBSグループの会社になった従業員のリストラはしないと聞きましたが。

鎌田  売上を倍増しようとして買収しているわけですから、人が足りなくなるに決まっています。リストラしている場合ではなく、もっともっと人は欲しいのです。例えばSBSロジコムのM&Aの時も、当初1000人の従業員でしたが、リストラせずに、売上が3倍になった今も、1000人です。業務の増加した部分はパートやアルバイト、機械化・自動化で対応しています。

――  物流子会社だとほとんど営業部門がなかったかと思いますが。

鎌田  当然買収した時は外販しているわけでもないので、営業部門は貧弱でした。そこで社員の中から選りすぐった社員を営業部隊として教育を始めました。私自身も営業の先頭にたって実践して教育してきました。今では強力な営業部隊に成長し、他社とコンペになっても負けないようになっています。

――  M&Aで成長してきた企業ということで、ある意味文化も作法も違う企業が集まった呉越同舟の形ですが、一体感を持つというのは難しくないですか。

鎌田  おっしゃる通り、会社はお金で買えますが、人の心はお金では買えません。M&Aの成功の秘訣は社員の心の融合に尽きますね。社員の心の融合のために、オフィスも広々として見渡すことのできる配置としていますし、私も社長室を設けず、みんなと同じ視線の席に座っています。コミュニケーションをとるにはこれが一番ですね。社長室にいると、みんな良い話しかもってきませんしね。元々、各社とも拠点が違いましたから、別々だったのですけど、それではだめだと思い、今はこの本社ビルにほとんどすべてのグループ会社を集めてにぎやかにやっています。さらに新たな仲間がやってくることも考慮に入れ、別フロアも確保しています。

――  2024年問題は御社のM&Aにとってはどうでしょう。

鎌田  絶対チャンスなんです。SBSグループが大発展するチャンスです。当社ではドライバーが集まる仕組みを設けたり、自動車学校も運営していますし、大きな塊となって求心力を高めています。日本の物流は規模が大事です。規模があればあるほど勝てる要素が強いんですね。売上1兆円が日本の物流業界ではある種の基準になると思っています。規模が大きくならないと、DX等の設備投資もできませんからね。

――  2月に竣工した「野田瀬戸物流センターA棟」もその一環ですね。竣工式でSBSグループの試金石になると話しています。

鎌田  そういうことです。実は当社はある意味デベロッパーの側面もあります。25年くらい前から物流倉庫の土地開発から建物開発まで行っています。この間作った倉庫は20万坪以上あり、全て満床ですので、隠れた優良物流不動産デベロッパーともいえます。さらに、売却益だけでも600億円、ランニングでも利益を生み、当社のトラック部門でも利益をだしているので、一番成功している部門ですね。

――  「野田瀬戸物流センターA棟」では、すでにテナントが大部分決まっているそうですね。

鎌田  テナントにはすでに、ミスターマックス、フランフラン、島忠等が入ることが決まっています。4階をECセンター専用として運用していく予定です。ECプラットフォーム事業の戦略拠点とする方針で、EC事業者が相乗りで物流ロボットやマテハンを利用できる、共同利用型のセンターになります。

<鎌田社長>
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稼げない物流からの脱却
物流はハイテクで勝負の時代

――  現在6万数千社あるとされる物流事業者ですが、これについてはどうお考えですか。

鎌田  規制緩和のし過ぎで増えてしまいましたね。貨物運送事業とタクシーを比べた場合、年収でタクシーの方が100万円程度高いという数字も出ています。さらに、2024年問題での時間外労働の上限規制が適用されると、さらに残業時間が減り、給与が下がってしまう。構造的に稼げない産業になっているわけです。物流はインフラだと言われますが、もしインフラが弱ると経済は悪化し、国力も衰退し、国民も苦しむことになるはずです。ならばある程度最低賃金とか最低運賃とかを決めていかないといけないのですが、遅々として進んでいませんね。やはり力のある企業じゃないと生き残れない時代になってきて、年商5~10億円の物流企業は、今後再編が進んでいくものと思います。

――  2024年問題でかなり国民の間にも物流事業の理解が進んできたのでは。運べない危機、運んでもらえない危機という言葉もよく聞きます。

鎌田  これまで物流に関心のなかった人も、「物流は大事だね」と話すようになってきました。企業の経営者にとって、自社の製品を運んでもらえないということは致命的ですからね。そのような中で、物流事業者の逆襲じゃないですが、生き残っていくためには、コンプライアンスを守り、労働環境もきちんと整備し、ドライバーや社員の賃金をきっちり上げていかなければなりません。

――  業界の給与水準を上げないと若者に選ばれる職業にはなりませんね。

鎌田  業界では人手不足とずっと言い続けていますが、給料の安い業種に若者が来るはずがありません。今年の入社式でも「給料をどんどん上げる、3Kの会社だった物流会社をハイテクの会社にする」と話しています。そして「物流業界は、ローテク産業からハイテク産業に変わっていく時代が必ず来る。そこで勝った企業が生き残れる」と話しています。米国へ行くと、スタンフォードとかMIT等の大学から物流会社に来ますが、東大から物流会社にはあまり来ないですよね。

――  物流会社はまだまだ3Kの職場の意識が強いですね。

鎌田  物流会社でどれだけDX化が進むかがカギになります。物流はやはりどれだけローコストで運営できるかが問われています。優秀な人材が集まって、倉庫内作業でもロボット化、自動化を進め、AIやITを駆使して改革していける環境を作っていくことが必要です。そのような時代は必ず来ると信じています。そうすることでドライバーや社員の給料を上げることもできますし、我々の会社もそこに残らなければならないと思っています。

――  賃金の問題と共に、少子高齢化による労働総人口の減少という課題もあります。

鎌田  確かに労働人口の減少はどうしようもありません。そのうち、海外の移民なども増えてくるでしょう。技能実習制度も、これまではドライバーはダメでした。が、3月29日、2024年問題が顕在化していることから、政府では「特定技能1号」の資格で外国人ドライバーを今後5年間受け入れられるよう閣議決定したと報じられていました。最大2万4500人の受入が可能とのことです。

<鎌田社長>
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外資並みのスピード決定
今は世界展開を強化する時

――  先ほどDX化の話をされましたが、御社ではどのように進めていますか。

鎌田  物流倉庫の自動化にはとても力を入れています。これはM&Aの効果ですが、元のSBSだけではとても無理でした。ところがリコーロジや東芝ロジが入ってきて、多くの優秀な人材がいました。現在、SBSグループのIT部門には200人、ITロジ部門に50人ほどの部隊がいます。この50人ほどが生産性や効率性を考えながらロボットの研究をしています。物流会社でこれだけのIT人材を抱えている会社はそうは多くないと思います。

――  募集せずに内部から集めたわけですか。

鎌田  そこがメーカー系の強みでしょうね。技術関係に強い人が最初からいたわけです。メーカー系の物流会社には本社から来た技術関係の人は多いですよ。理系も国立出身者も本当にたくさんいました。これまでメーカーの縛りがあったものだから、中々実行に移せなかったことが、SBSに来て自由にできるわけで、これがまた充実した内容で、どこにも負けませんね。

――  大企業になれば決定まで時間がかかるのでは。

鎌田  その点、オーナーである私が決めるので早いのです。「君に責任は取らせない。責任は私が取るから」で即実行です。このスピード感がある意味SBSの強さの秘訣となる部分です。物流施設の用地を決めるときも同様に即決します。

――  まるで外資系企業のようですね。

鎌田  時々、日本企業じゃないですね、と言われます。(笑)

――  さて、今後の展開ですが、当然M&Aを続けながらということですね。

鎌田  M&Aは当然活発に進めていきます。また、そろそろ世界に出ていかないといけないかなとも思っています。世界展開を強化しようということです。北米や欧州に物流倉庫を持って、あるいはインドとか東南アジアに拠点を作って、どんどん海外比率を上げていければと思っています。日本は少子高齢化等で荷量も確実に減ると考えられますし、今後日本だけでは厳しくなるものとみています。

――  リコーさんも東芝さんも海外に拠点はありますよね。

鎌田  リコーロジスティクスや東芝ロジスティクスの海外での業務も今は徐々に取り返している最中です。海外分野を強くして、世界をにらんで日本と同じような感覚でできるようになって売上が1兆円を超えると、さらにSBSは加速すると思います。今年新入社員は151名ですが、「まだ見ぬ世界をやるぞ」というと、みんな「やりましょう」と答えてくれましたね。

――  ありがとうございました。鎌田社長の情熱と実行力には驚きました。今後の世界展開を期待しています。

取材・執筆 山内公雄 近藤照美

<夢を語りそれを実現する「有言実行」がモットー。掲げられた額縁の「夢」と鎌田社長>
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■プロフィール
氏名:鎌田 正彦(かまた まさひこ)
出身地:宮崎県延岡市
生年月日:1959年6月22日
趣味:ゴルフ、読書
座右の銘:大志大忍
経歴:
1979/04 東京佐川急便入社
1987/12 関東即配(現同社)を設立
2003/12 ジャスダック上場
2004/06 雪印物流(現SBSフレック)など10社をM&A
2005/06 東急ロジスティック(現SBSロジコム)など9社をM&A
2006/04 商号をSBSホールディングス㈱に変更 売上高1000億円突破
2012/12 東証2部へ上場
2013/06 グループブランドを統一
2013/12 東証1部へ指定替え
2015/07 公益財団法人SBS鎌田財団活動開始
2018/08 リコーロジスティクスをM&A
2020/11 東芝ロジスティクスをM&A
2021/12 古河物流をM&A
2022/04 東証プライム市場へ移行

SBSホールディングス
https://www.sbs-group.co.jp/

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