LPG元売りのアストモスエネルギー、未使用資源をエネルギーにして循環型社会の実現に向け取り組むサステイナブルエネルギー開発、日本郵船の3社は10月14日、船上で発生した有機物の有効利用により、環境負荷の少ない海上輸送形態を構築し、社会問題の解決と脱炭素化に貢献することを目的とした覚書を締結したと発表した。
同取り組みについて3社は、同日記者説明会を行い、日本郵船 西島裕司 執行役員、アストモスエネルギー 荒木徹 常務取締役、サステイナブルエネルギー開発 光山昌浩 社長 CEOが登壇した。
このなかで、日本郵船の西島執行役員は、「これまでコストをかけて処理していた船上の廃棄物を処理し、有効活用するということは画期的な取り組みだと自負している。本システムにより今後の海上輸送における低炭素化を目指したい」と抱負を述べた。
＜船上に保管されたゴミ＞
同社では通常、船上で発生したゴミは甲板で保管、引き取りが可能な寄港地で引き渡しており、船上ゴミの運搬や焼却によるCO2が発生している。例えば大型LPG船（VLGC）の場合、日本と中東を往復する約45日間の1航海ごとに、プラスチック類を中心に約5000リットルのゴミが発生する。
この課題解決のため3社は、可燃ゴミなどからバイオ燃料を生成するサステイナブルエネルギー開発の技術「ISOPシステム（ISOP）」の船上設置による有機物燃料化事業を視野に入れ、共同検討を開始することとなった。
＜ISOP図解＞
ISOPとは、廃棄物をエネルギー原料に変える新たな有機物処理装置。ゴミ処理後のバイオ成分を燃料に変換し、有機物処理全体におけるCO2排出量を削減することが可能となる。
また、ゴミ分別が不要で、処理装置を小規模化できる点が特徴で、外航船へのISOP設置により、処理後のバイオ成分をエネルギーとして活用し、海上輸送全体におけるCO2排出量を削減できることが期待される。さらに航海中に発生した有機物を船上で処理することで船上の保管場所が圧縮でき、衛生環境の観点からも船員の労働環境の改善に寄与する。
ISOPでエネルギー化が可能な原料は、生ゴミや紙類、衣類、有機汚泥や木片など。船上で生成した原料は、サステイナブルエネルギー開発が買取保証し、外部利用へと展開する。
ISOPを開発した、サステイナブルエネルギー開発の光山社長は、「東日本大震災を機に、身近なものを活用し資源として有効活用する技術を開発してきた。やっと提供できるものができ、本実証に参加できることを喜ばしく思う」と述べた。
今後、3社は2025年を目途に船上での実証実験の完了とISOPの船舶への実装を目指し、共同検討を進めるとしている。
