三井不動産は6月5日、千葉県船橋市の三井不動産ロジスティクスパーク(以下、MFLP)船橋IIIにおいて、物流の2024年問題を見据えた自社の取組みについて記者説明会を開催、併せてDX先端技術を導入した同施設内の「EC自動化物流センター」を初公開した。
総合デベロッパーである同社は、2012年から物流事業に参入。約60拠点を開設し、テナント数は約120社。2022年11月にMFLP船橋III内に同センターを開設し、自社利用を開始している。そこで得た定量・定性効果をもとに今回、他のEC事業者との共同利用について提案した。
説明会ではまず、今年4月に発足した同社ロジスティクス本部イノベーション推進室の大間知俊彦室長が登壇。2024年問題への取組みとして、「三井不動産として、直接的な課題解決に取り組んでいくという認識を持っている。”物流変革プラットフォーマー”として、荷主・物流事業者とソリューションを結びつける物流ハブとなり、解決のため連携推進していきたい」との姿勢を明確にした。
その具体的な取組み例として示したのは、2つのソリューション。1つは、ドライバーの待機時間短縮に向けた「搬出入DXソリューション」、2つ目が「EC自動化物流センター」の共同配送により、積載率の向上を目指すというものだ。
搬出入DXソリューションは、Hacobuのバース予約システムとMFLPの車番認証等、入居テナントのシステム連携により、ドライバーの待ち時間を削減し、業務効率化を目指す取組み。現状、3時間を超す場合もあるドライバーの待機時間については、6月2日に経産省等が策定したガイドラインで「荷待ち・荷役2時間以内」がルール化されたが、同取組みはそれに資するもの、とする計画。具体的な改善効果については、Hacobuの調査によると、トラック平均待機時間が1/3以下となり、データの蓄積・活用により、さらなる物流DXを促すことも期待できる。
<商業施設本部&mall亀井室長>
EC自動化物流センターについては、自社利用(ららぽーと公式通販サイト「&mall」)での利用効果をふまえ、他荷主にシェアリングすることで、テナントの物流自動化と共同配送での積載率向上の両立を目指す。ポイントは、荷主側にとっての設備投資が不要なこと。また、最先端自動化機器をシェアリングでき、三井不動産が構築した物流スキームにより、EC物流とリアル施設の両販売チャンネルが提供可能なことだ。同社商業施設本部&mall事業室の亀井俊介室長によると、自社利用により、1日あたり最大出荷キャパシティは2倍以上、庫内作業の人件費は約2割削減したという(2023年3月現在)。また、定性効果では、倉庫拡張キャパシティの向上や、自動化に向けた業務プロセスの再点検や改善に貢献する。
<EC自動化物流センター概要>
説明会では、実際にEC自動化物流センターの内覧会が行われた。同センターの施設面積は6611.56m2(約2000坪)。倉庫内を縦横無尽に移動する3次元ピッキングシステム「Skypod」(IHI)や、三次元での測定が可能な寸法測定システム「3DーA1000」(コグネックス)、自動投函システム「i-Pack」(レンゴー)、バース予約システム「MOVO Berth」(Hacobu)等が動く様子が初公開された。
<3次元ピッキングシステム「Skypod」>
3次元ピッキングシステム「Skypod」は、フランスのユニコーン企業EXOTEC(エグゾテック)が提供する倉庫自動化ソリューション。独自の搬送ロボットとソフトウエアで高度に制御された機動性、遠隔でメンテナンスできる運用性、ビジネス環境の変化に柔軟に対応できる拡張性が高く評価されている。「ビン」と呼ばれるケースのなかから、必要なアイテムをピッキングし作業者のもとへ自動搬送する。驚くべきはそのスピード感、毎分240mの速さで、400ビン/hのピッキング作業が可能だという。
<ピッキングステーション>
ピッキングステーションでは、作業員は移動することなくモニターの指示通りにピッキングを行うだけで作業が完了する。このほか、三次元寸法測定や、自動製函機が包装される内容品の高さ・容量に応じて自動的にケースを作成する様子、配送表を自動印刷し貼り付けるオートラベラー等、省人化・効率化を実現する最先端ソリューション等について、各企業担当者が詳しく紹介した。
<三次元寸法測定システム>
<オートラベラー>
三井不動産は、まずはMFLP船橋IIIにおいて、EC自動化物流センターのシェアリングを進め、今後さらにニーズを把握しながら展開していく。また、今後物流を取り巻く課題解決に向けて、働きやすい環境整備やドローン物流、グリーン化のほか、自動化倉庫の直接運営やDX企業への出資等、不動産賃貸業にとどまらないビジネスモデルの革新を目指していく考えだ。
<EC自動化物流センター内覧会