ニチレイロジグループは11月20日、都内某所でグループ事業を紹介する「ロジスティクス・ソリューションセミナー」を開催した。
今回は、主催者講演として「持続可能な物流の実現に向けた物流施策・DX戦略の取り組みと今後の展望について」をテーマに講演を行ったほか、福岡ソフトバンクホークス前監督の工藤公康氏が、「個性が組織を強くする時代 」と題した特別講演を行った。
なお、同セミナーは2年ぶり、今回で10回目の開催となる。参加人数は約300人。
嶋本社長はあいさつの中で、「トラックドライバー業務に影響が出る物流2024年問題のみならず、コスト上昇などの問題が顕在化しており、新たな物流体制の構築が喫緊の課題になっている」と昨今の物流業界に言及。
賃金や物価上昇が高まる世相について「従業員の生活を守るための賃上げは企業にとって大事である」としつつ、「人件費、エネルギー価格の高騰などでコスト増加もあり、これまで以上の付加価値創出、適正価格の周知などといった取り組みが求められている」と対応すべき課題についても触れた。
また、「これらの変化を前向きにとらえ、物流サービス提供と企業価値向上へつなげていく」と、企業としてのスタンスを語った。
事業展開についても説明。関東、関西を中心とした保管需要が上がっている現状を踏まえ、大都市圏の冷凍食品需要に対応できるよう、提供を増強・規模拡大する方針を示した。冷凍食品物流の提供、地域配送の強化も進め、持続可能な物流サービスの提供により一層注力する姿勢だ。
海外事業では、英国、ポーランドでの冷凍倉庫建設を進めつつ、3本柱として「港湾拡大」「広域輸送」「量販拡大」をメインに地盤を固めていく。オランダ、英国における組織再編や、グループ各社とのさらなる連携強化も進めるとしている。
ASEAN事業では、既存事業としてのタイ、マレーシア、ベトナムの成長のほか、新事業領域としてネットワーク構築、ASEANの中での新規事業機会の模索を検討中であるとした。
続いて、勝亦充 業務統括部長による、持続可能な低温物流に向けた業務革新の取り組み紹介が行われた。
まず、業務革新に必要な流れを、「出発点」「現在地」「今後の展望」の3段階に分類。
最初の「出発点」では、労働力不足の実態を人手不足、熟練者の高齢化、働き方の変化といった風に具体化する「課題認識」、そしてDX化の浸透に際し、機械化で行った省人化をコミュニケーションやホスピタリティー強化、付加価値創造などに活用できるよう振り分ける「基本方針」で示した。課題を具体化することで実態を明確にし、どこに何を対策として打つべきかを明確にする視点だ。省人化による付加価値創造は、技術革新で生まれた時間を付加価値創出時間として定義し、顧客の利用体験価値の向上へとつなげている。
「現在地」では「業務の誰でもできる化」「業務のどこでもできる化」を示し、熟練でなくとも作業ができるような対策を明示。AGVやAGFの活用により、作業をプラグラム化した関西高槻DC、仙台DCにおける例のほか、低温物流の過酷な環境に対して遠隔操作ロボットを活用する例を紹介した。すでに冷凍機遠隔監視システムを全国60以上の物流拠点に導入済みだという。
「今後の展望」に対し勝亦 業務統括部長は、「人と機械がベストミックスした低温物流を目指す」として、「業務の誰でもできる化」「業務のどこでもできる化」の推進で安全で働きやすい職場として新たな価値の創出につなげていく姿勢を見せた。
<ロジスティクス・ネットワーク 伊藤和実 執行役員 リテール事業本部 関東支店長>

ロジスティクス・ネットワーク 伊藤和実 執行役員は、同社が扱うリテール事業とそれに関連した物流課題、そして解決への取り組みとして提供している「NL+LiNk(エヌエルリンク)」を紹介した。
センター前センターおよび、小売り・外食の物流センター、そして各小売りへの物流を指すリテール事業では、2025年現在34の拠点を構え、約2200店舗への配送を行っている。小売りセンターから小売店舗への物流はセンター主導で適宜改善中であるとする一方で、川上領域であるベンダー(メーカー・卸)から小売りセンターへの配送領域が課題になっていることを強調。
「センターへの納品時間制約」による混載が進まない現状、「指定の納品方法・荷下ろし時間」で荷下ろし作業削減が進まない点、そして労働時間の規制強化による「少量の遠方納品対応」の困難さを問題として挙げた。
そこで課題解決への取り組みとして、ロジスティクス・ネットワークは「NL+LiNk」を開発。自社と他社問わず、物流拠点同士を輸配送ネットワークでつなぐことで、ベンダーの納品物を共有したり、共同輸配送を進めやすくしたりするサービスだ。
最寄りの小売りセンターにベンダーが納品することで、あとはロジスティクス・ネットワークが各地の小売りセンターへ配送する仕組みで、青木倉庫やヨークベニマルでの導入事例を交えつつ、サービスのメリットを紹介した。
今後の展望として、既存拠点を中心として、協力会社のアセットを増加して他社運営センターへの納品を強化、さらに日持ちする商品などをランニングストックとして一部倉庫で保持するサービスなどを視野に入れていることを語った。
三井倉庫HD/「統合報告書 VALUE REPORT」「サステナビリティデータブック」発行

