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「働き方改革」広くPR! 相談センターや助成金利用を

2023年07月31日/3PL・物流企業

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2024年4月、働き方改革関連法に基づく時間外労働の上限規制が運送業にもいよいよ適用される。また、トラックドライバーの健康を守るため、労働時間と休憩時間を合わせた拘束時間、休息期間、運転時間などを規制する改善基準告示も、上限規制に合わせて2022年12月改正され、同じく2024年4月から適用される。2024年度を迎えるに当たり、各運送事業者において、トラックドライバーの働き方を見直すことが重要となるが、そのためには荷主や消費者の理解、協力要請も必要となる。厚生労働省では、働き方改革についての相談や助成などの支援を行うとともに、広く国民に物流事業者の現状を周知し、円滑な施行を後押ししている。厚生労働省 労働基準局 労働条件政策課 労働時間特別対策室の細貝浩之 室長補佐と、本安貴登 特別対策係長に、同省における取組について話を聞いた。

■2024年4月からドライバーの働き方が変わる                                       働き方改革により、これまで上限規制のなかった時間外労働時間が原則月45時間、年360時間となり、特別な事情があっても年960時間までとなる。また、改善基準告示見直しにより、拘束時間は年3300時間以内、終業後、次の仕事が始まるまでの休息期間は9時間以上となるなど、トラックドライバーの働き方のルールが大きく変わる 。これにより一部のドライバーの働く時間が短くなることが想定され、何も対策をしなければ 、2024年度には輸送能力が19年度に比べ約14%(4億トン)、2030年には約34%(9億トン)不足する可能性(持続可能な物流の実現に向けた検討会中間取りまとめ )があり、運べない荷物が出てくるという所謂「2024年問題」も指摘されている。

トラックドライバーが抱える
課題を知ってもらいたい

<出典:第1回「我が国の物流革新に向けた関係閣僚会議」配布資料>
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トラックドライバーの働き方は全産業と比べて労働時間が2割長く、年間賃金は1割低い。有効求人倍率は2倍となっており人手不足が懸念されている。過労死等の労災補償状況(令和4年度)をみると、脳・心臓疾患において、業種別では「道路貨物運送業」 の支給決定件数 が最も多く、50件となっている。

<「ドライバーさんが健康でなくては」と本安係長>
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こうした現状に対し、本安貴登特別対策係長は「物流が止まるとあらゆる産業が止まるわけですから、ドライバーさんはとても重要な役割を担っています。その一方で、長時間労働の実態が見られます。 重要な仕事をこなすドライバーさんが健康に働けるよう、まずは国民の皆さまにこうした現状を広く知っていただき、社会全体でドライバーさんの働き方改革に向けた機運醸成を図っていきたい」と語る。

トラックドライバーの長時間労働の背景には、長時間の待機や、契約にない附帯作業などといった荷主との取引慣行上の課題がある。また、繰り返しの再配達もトラックドライバーの負担となっており、働き方改革の実現には、荷主や国民一人一人の理解と協力が必要となる。厚生労働省では、国土交通省と連携し、物流業界のみならず国民全体を巻き込みながら、働き方改革への協力を呼びかけている。

最近、駅や電車内ビジョンで、「働き方改革」に関するポスターやPR動画を目にした人も多いのではないだろうか。厚労省では6月28日、政策パッケージにおける「荷主・消費者の行動変容」の一環として、俳優の小芝風花さんを起用した働き方改革PR動画シリーズ「はたらきかたススメ」を制作。PR動画制作にあわせ同省内で「はたらきかたススメ特設サイト」を公開するなど広く情報発信を行っている。その第2弾として「トラック編」が7月28日に完成し、同省特設サイトとYouTubeで公開している。さらに今後、8月には「バス編」、9月には「建設業編」を制作するなど、積極的な広報活動を展開していく予定だ。

■はたらきかたススメ特設サイト
https://hatarakikatasusume.mhlw.go.jp/

■厚生労働省YouTube「トラック編」(4分14秒)

2024年4月に向けて まず相談を
荷主側にも配慮を要請

厚労省では働き方改革を見据え2022年8月、省内に荷主と運送事業者のための「トラック運転者の長時間労働改善特別相談センター(トラック相談センター) 」を設置した。同センターはトラック運転者に特化した相談窓口で、運送業での知見や経験のある社労士やコンサルタントなど専門家が、電話やメールで事業主や荷主からの相談を受け付けている。また、直接支援を求める事業者には必要に応じ訪問等を行い、改善提案なども行っている。同センターにはこれまで445件の相談が寄せられており(2023年6月現在)、相談件数は増加しているという。

<トラック運転者の長時間労働改善特別相談センター ポスター>
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「相談内容は、運送事業者からの改善基準告示の改正内容に関する問い合わせが多いですが、荷主からの相談も受け付けています。労働時間に関することであれば、何でもお気軽にご相談ください」と本安係長。

トラック相談センターでは、待機時間削減に向けて、荷主の協力を得るための相談や、待ち時間などの交渉に同席することも可能だという。同センターへの問い合わせは「自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト」という専用サイトから。同サイトでは改善基準告示の詳細や、「改善ハンドブック」として、トラック運送者の長時間労働改善に向けた取組み事例等も紹介されており、有用な情報が掲載されている。

このほか、厚労省では2022年12月に都道府県労働局に 「荷主対策チーム」を編成。荷主・元請運送事業者に対し、長時間の恒常的な荷待ちを発生させないよう努めること、運送業務の発注担当者に改善基準告示の周知することについて、労働基準監督署から要請を行っている。これまで要請を実施した件数は、5471件(2023年6月現在)となる。

本要請には、省内HPに設置した「長時間の荷待ちに関する情報メール窓口」で収集した情報が活用されており、さらに、その情報は国土交通省にも提供され、国交省においてもトラック法に基づく「働きかけ」等に活用されている。こうした省庁の枠を超えた取組みが始まっている。

<細貝 室長補佐>
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同じく労働時間特別対策室の細貝浩之 室長補佐は、「いろいろな人がそれぞれ、一番近いところに相談いただく、お声かけいただくということをコンセプトに、チャネルを増やしている。『労働基準法を守ってください』ということだけいっても、なぜ解決しないのか。急な発注や荷待ち、荷下ろしなど、運送事業者の自助努力だけでは解決しない。我々としても とにかくあらゆることからできることをやっていく。それが働き方改革に取り組む中小企業を支えることにもなる。トラック運送事業者の置かれている状況や課題を広く知ってもらうことで機運醸成を図りたい」と意気込む。

■トラック運転者の長時間労働改善特別相談センター
https://driver-roudou-jikan.mhlw.go.jp/consultation/form

■自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト
https://driver-roudou-jikan.mhlw.go.jp/

■長時間の荷待ちに関する情報メール窓口
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/nimachi.html

労働環境整備へ補助金活用を
交付申請は2023年11月末まで

厚労省では、「働き方改革推進支援助成金」により、生産性の向上に向けた設備投資などの取組に係る費用を助成し、労働時間の削減や勤務間インターバル制度の導入に向けた環境整備に取り組む中小企業事業主へ支援も行っている。特に令和5年度は、運送業などの上限規制の適用猶予業種等への支援のため、同助成金に「適用猶予業種等対応コース」を新設した。

<働き方改革推進支援助成金(適用猶予業種など対応コース)>
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このコースでは、運送業の成果目標は2つ設定されている。1つ目は36協定の見直しである。例えば、1か月の時間外労働をこれまで80時間を超えて設定していた事業場が、時間外・休日労働を60時間以下に設定した場合、250万円が助成の上限額となる。2つ目は終業から始業までの9時間以上の勤務間インターバル制度を導入することであり、例えば、9時間の勤務間インターバルを導入した場合、100万円が助成の上限額となる。これらの成果目標を達成するための生産性向上のための取組として、積載量の多いトレーラーやデジタル式運行記録計等を新たに導入する場合、その購入費用の4分の3について、達成した成果目標の助成の上限額を上回らない範囲で助成している。

助成金の手続きについては、2023年11月末までに成果目標の実施や環境整備のための計画を添付した「交付申請書」を労働局雇用環境・均等部(室)に提出する必要があり、交付決定後、計画に沿って取組みを実施し、労働局に支給申請することにより、助成金の支給を受けることができる。

■リーフレット(働き方改革推進支援助成金(適用猶予業種等対応コース))
https://www.mhlw.go.jp/content/001082505.pdf

■働き方改革推進支援助成金(適用猶予業種など対応コース)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000120692_00001.html

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