名村造船所は9月29日、佐賀県の伊万里事業所で建造していた MOL ENERGIA PTE. LTD.向け、大型 LPG・アンモニア運搬船「PHOENIX HARMONIA」を引渡したと発表した。同船は、同社がこれまで建造してきた中小型LPG運搬船での知見と経験をもとに初めて取り組み、大型LPG運搬船（VLGC：Very Large Gas Carrier）の豊富な建造実績を有する三菱造船との技術提携により建造したVLGCの第1番船となる。
＜竣工したVLGC「PHOENIX HARMONIA」＞
同船は、国内主要LPGターミナルへ入港可能な最大船型をベースに、積載貨物タンク容積を従来の 8万3000m3型から8万7000m3型へ大型化している。特長は、バラストタンクの塗装性能基準（IMO PSPC-WBT 規則）を適用し、各タンクの腐食防止に努めることにより、船舶の安全性を高めていること。また、最適船型並びに船尾省エネ付加物を採用することで推進性能の向上を図るとともに、電子制御式主機関の採用により燃費性能および経済性の向上を図っている。
LPG／重油2元燃料対応主機関の採用に加え、推進効率の最適化を図ることで、LPGを燃料として使用する場合、従来の重油燃料船と比べて排気ガス中の硫黄酸化物（SOx）は約90％、二酸化炭素（CO2）は約20％、窒素酸化物（NOx）は約20％の削減が見込めるという。これは、国際海事機関が定める「EEDIフェーズ3」にも適合しており、環境を考慮した最新鋭船となっている。
このほか次世代のクリーン燃料として注目されているアンモニアも積載可能。主機関および主発電機関には窒素酸化物（NOx）排出3次規制に適合した機種を採用し、更にエア式船尾管シール装置を採用するなど、環境に配慮した構造となっている。
同社は、環境負荷低減を経営の最重要課題の一つに位置づけており、2050年カーボンニュートラルを掲げる政府方針に沿い、温室効果ガスの排出削減を目指している。また、顧客の期待に応えるため次世代燃料船の開発にも積極的に取り組み、低炭素社会の実現に貢献していく。
■主要目
全長：230.0m
幅（型）：36.60m
夏期満載喫水（型）： 12.00m
総トン数：5万849総トン
貨物タンク容積：8万7123.104m3
主機関：MAN B&W 6G60ME-C10.5-LGIP-EGRBP 1基
定員：29名
船級：日本海事協会（NK）
船籍：パナマ
