古野電気は3月19日、山口県の大島商船高等専門学校(大島商船高専)と、次世代船舶自動識別装置VDES(VHF Data Exchange System)の電波伝搬の実証実験に成功したと発表した。
洋上を航行する船舶同士は、AIS(Automatic Identification System:船舶自動識別装置)によって、航行情報を相互に交換し、衝突を回避している。
VDESは、このAISの代替となることを期待されている新たな海上通信装置で、AISの最大32倍の高速通信によって、これまで一方向だった船舶同士や船舶と陸上局間でのデータ通信が双方向で可能になるほか、衛星通信を利用することで通信エリアが大幅に拡大するため、船舶のデジタル化を促進することが期待されている。
古野電気と大島商船高専は、2023年6月9日に共同研究契約を締結し、VDESによる海洋デジタル通信の実用化に向けた実証実験を実施。このたび、電波伝搬の検証を終え、他船航路情報交換を始めとするVDESデータ交換サービスの実用性検証による実験データ取得に成功した。
実証実験は、大島商船高専が保有する練習船「大島丸」と実習船「すばる」を活用し、周防大島近海で実施。VDES通信によって航海関連情報を交換し、大島丸のブリッジに設置した古野電気が開発中の3D Bird Viewシステム(VRナビゲーションシステム)を使用して表示・検証したほか、VHF無線機や既存の航法装置との連携システムを構築した。
<3D Bird Viewシステム(VRナビゲーションシステム)表示イメージ>
通信実証は、船陸間2拠点、船船間2拠点、船陸間3拠点の計3回を実施。その結果、VDESを利用した船陸間3拠点でのVDESによる電波伝搬品質の検証と、データ交換サービスの実用性の検証について、実用性があることを確認した。
古野電気は、今回の実証実験の結果を生かしてVDESを早期に実用化することで、船橋のデジタル化と航海の安全と効率化の実現を目指すとしている。