帝国データバンク(TDB)は8月28日、全国2万6196社を対象に実施した「価格転嫁」に関するアンケート調査結果を発表した。価格転嫁に関する実態調査は、前回2025年2月に実施し、今回で6回目となる。
自社の主な商品・サービスにおいて、コストの上昇分を販売価格やサービス料金にどの程度転嫁できているかを尋ねたところ、コストの上昇分に対して「多少なりとも価格転嫁できている」と回答した企業は73.7%となり、前回調査(2025年2月)から3.3ポイント低下した。
内訳をみると、「2割未満」が23.9%、「2割以上5割未満」が17.0%、「5割以上8割未満」が17.1%と部分的な転嫁にとどまる企業が大部分を占めている。一方で、「8割以上」転嫁できている企業は11.9%、「10割すべて転嫁」できている企業は3.8%だった。価格転嫁の状況は鈍化しており、「全く価格転嫁できない」と回答した企業も前回調査より1.3ポイント増え12.5%となった。
<価格転嫁率は調査開始以来最低に>
また、コスト上昇分に対する販売価格への転嫁度合いを示す「価格転嫁率」は39.4%となった。これはコストが100円上昇した場合に39.4円しか販売価格に反映できず、残りの6割超を企業が負担していることを示している。前回調査(価格転嫁率40.6%)と比較すると1.2ポイント低下し、2022年12月の調査開始以来最低となった。
さらに、自社の主な商品・サービスにおいて、代表的なコストとなる原材料費、人件費、物流費、エネルギーコストについて、項目別にどの程度転嫁できているかを尋ねたところ、原材料費に対する価格転嫁率は48.2%、人件費は32.0%、物流費は35.1%、エネルギーコストは30.0%だった。
物流費は前回(34.7%)に比べ微増しているものの、企業からは「材料費は根拠があり、すぐに説明できるが、他の費用については根拠を示すことができないため、応じてもらえないことが多い」(機械製造、群馬県)、「原料費は明確な資料が出しやすいが、人件費及び物流費、エネルギーコストは影響が多岐にわたり社外秘事項を考慮すると納得感のある説明がしにくい」(飲食料品・飼料製造、東京都)といった声があがっているという。
サプライチェーン別に価格転嫁の状況をみると、消費者により近い川下の業種ほど価格転嫁が難しい実態が浮き彫りになった。
全体として価格転嫁率は5割以下にとどまるなか「2024年問題」に直面する運輸・倉庫では28.8%となった。「2024年問題を通じて、従来どおりの物流を提供していくためには、値上げが必要であることを顧客に理解してもらった」(運輸・倉庫、兵庫県)といった意見に代表されるように、2024年問題を契機に徐々に業界内でも価格転嫁を進める動きもみられるが、「依然として燃料費の高止まりや重層的な取引構造が値上げ交渉を難航させている」と分析している。
今回の調査をふまえTDBは、「企業はコスト上昇の根拠を明確に示し、顧客との対話を通じて価格転嫁の理解を求める努力を続ける必要があると同時に、政府や業界団体も、公正な取引慣行の推進や制度的な支援を通じて、企業が適正な価格転嫁を行える環境を整備することが求められる」と提言している。
雇用動向調査/正社員の採用予定あり「運輸・倉庫」が66.2%でトップ