フィジカルインターネットセンター(JPIC)は12月12日、「第2回CLO協議会」を都内で開催した。荷主や運送、倉庫事業者など約100名が現地参加し、来年4月に届出が義務付けられている特定荷主のCLO(物流統括管理者)について役割を明確化するとともに、トラック適正化二法や物流効率化など一連の法改正についても解説した。
パネルディスカッションでは、荷主側から三菱ケミカルとゴディバジャパン、運送事業者として石川県金沢市に本社を置く野々市運輸機工、倉庫業からはIT開発や人材育成に取り組むチームソリューションが登壇し、「法改正をどう企業成長につなげていくか」、それぞれの立場から活発な意見交換が行われた。
冒頭、JPIC森 隆行 理事長があいさつ。「CLOのパートナーとして物流事業者・サービスプロバイダーをLPDと位置づけ、それぞれが連携したネットワークを通じてフィジカルインターネットを実現し、法改正を企業成長につなげることを想定している」とJPICのビジョンを説明した。
国土交通省 貨物流通事業課の堤 大地氏は、トラック適正化二法について「5年ごとの事業許可更新制」「適正原価を下回る運賃・料金の制限」「委託次数の制限」「違法な『白トラ』に係る荷主等の取締り」の4つのポイントを解説。このうち適正原価については「国土交通大臣が告示するもので、これまでの標準的運賃は廃止となる。ギアを1段階上げた取り組み」と説明。また違法な「白トラ」の原因となる荷主等に対し、トラック・物流Gメンと連携し是正指導を行っていく方針を示した。
経済産業省 商務・サービスグループ 物流企画室の新井和樹氏は「荷主企業に求められること」と題し、法改正による規制的措置や判断基準等をあらためて説明。そのうえで、CLO選任は「発側だけでなく着側、調達の方も規制対象となる」ことを確認。CLOの役割ついて「社内では物流最適化、社外では外交。取り組みの優良事例集も作成する予定だ。業務については各社さまざまだと思うが、企業の枠を越えた取り組みが進むことを期待している」と語った。
続いて行われたパネルディスカッションでは、「物流に関わるすべての企業が法改正を理解し、企業成長の機会とするために何をすべきか」について、荷主側とパートナーになる事業者(LPD)が登壇し、意見交換を行った。
<荷主側から三菱ケミカル 楠本 物流本部長(中央)、ゴディバジャパン 梶原サプライチェーン部 部長代理(右)が登壇>

三菱ケミカルの楠本匡 物流本部長は、ことし4月から物流部門に着任し「メーカーは作ってなんぼ、からお届けして(運んでもらって)なんぼ」だと意識が変わったという。「これまで物流というのが意識から抜け落ちていたのはなぜか。サプライヤーや工場、顧客と物流の歩み寄り必要だ」と持論を述べた。そのあと押しになるのが各法律の改正であり、「CLOとLPDのネットワークが広がり、実際の悩みを、胸襟を開いて話し合えるきっかけになれば」と期待感を語った。
荷主企業からもう1社、ゴディバジャパン 梶原博文 サプライチェーン部 部長代理は、法改正への対応について3PL倉庫企業、運送委託企業に発送貨物の物量予測による車両手配の安定化や直営店舗に向けた共同配送、バース予約システムの導入などの取り組みを紹介。一方でパレットの標準化や季節波動など課題もあり「現場(フィジカル)で何が起こっているのか、ヒントはそこにある。役員が吸い取ってビジネスを標準化していくことが大切だ」と述べた。
<物流側から野々市運輸機工 吉田社長(左)、チームソリューション 堀畑社長>

物流事業者に求められることは何か。「1はコストで、2は提案力」と語るのは、野々市運輸機工 吉田章社長。自社の取り組みとして中継輸送による労働時間削減や、長尺・鋼材を運ぶ「メタル便」の広域連携等を紹介し、中小零細企業が多い物流業界において「連携することで、できることもある」と持論を述べた。その要となるのが、「無駄に会う、無駄に飲む」ことで生まれる人とのつながり。「法改正やデジタル化に対応していくためには構造的な課題もあるが、皆でワンチームをつくって課題に挑む」とし、CLO設置を含むコミュニケーションや「連携」に活路を見出そうとしている。
またチームソリューションの堀畑浩重 社長は、「物流の結節点である倉庫会社が情報を高度に運用し、荷主や得意先、運送会社を繋いでいくというイメージを持っている。ただ、情報やシステムが標準化されていないのが現状。CLO設置により情報連携ができるなら、画期的なものになる」と期待を込めた。
CLO協議会は2026年3月13日に第3回の協議会を開催予定で、4月のCLO設置に向けてさらに議論を深め、持続可能な物流構築に向けデジタル、フィジカルともに連携の機運を高めていく方針だ。
JPIC/「フィジカルインターネットアワード」創設、応募は12月20日まで

