物流DXの切り札になるか―NECの共同輸配送プラットフォームに迫る

2025年12月02日/セミナー

【この記事は、LNEWS協力セミナーのレポート記事になります】

2025年10月7日、「TECH+ セミナー 物流DX 2025 Oct. 物流の転換点、企業が取るべき次の一手」がオンライン開催された。

荷主・物流事業者は法整備を受けた対応の必要性に加えて、物流の持続的成長に向け、物流効率化が求められているが、人手不足やコスト高騰、さらには環境貢献への要求など多種多様な課題に直面している。

その中で企業はデジタル技術を活用した課題解決と変革、すなわち「物流DX」をいかに実現できるのか。

本稿では、注目の共同輸配送プラットフォームをスタートした日本電気(NEC)スマートILM統括部 上席プロフェッショナル、大久保聡氏によるセッション「なぜ動き出したのか? 共同輸配送プラットフォームが、運ぶ力を創り出す」の内容をレポートする。

<日本電気(NEC) スマートILM統括部 上席プロフェッショナル 大久保 聡氏>
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【物流におけるDX推進の現場に横たわる壁とは】
冒頭、大久保氏は「変化が必要だがなかなか動き出せない、一歩を踏み出すのが難しいと感じている方も多いのではないでしょうか。ぜひ一緒に、解決に向けたヒントを探っていければと考えています」と切り出した。

大久保氏はNECで流通業界向けシステム開発におけるプロジェクトマネジメントに加えて、顧客のDX実現に向けたサービス開発、AIを活用した新規事業開発等に携わり、現在はロジスティクス・エネルギー領域の新規事業開発を主管する役割を担っている。「現場と事業の両面からDX推進に向き合ってきた経験をもとに、物流変革に関して課題や展望を共有できればと思っています」と自己紹介した。

続いて大久保氏は、物流変革の必要性をあらゆるプレイヤーが理解しているにもかかわらず、なかなか前に進まない現状から説き始めた。

物流業界では働き方改革関連法を受けたドライバー労働時間規制による輸送力の大幅な不足、いわゆる2024年問題が注目され、実際に多くの企業が影響を受けたが、今後は物流二法(物流総合効率化法、貨物自動車運送事業法)の改正で義務が強化され、荷主も物流事業者も物流効率化や管理体制強化が必要になると指摘。「さらには2030年、輸送能力の大幅な低下が予想されています。これからは現状維持できればいいという時代ではなく、顧客やパートナーから選ばれ続ける企業になることがますます重要になってきます」と話した。

ただ、そこへ向けた一策として、物流効率化はもちろん環境貢献にもつながる共同輸配送に取り組もうと考えながら、いざ具体化しようとすると「総論賛成・各論反対」のジレンマに直面すると指摘。仮にトップ間で合意しても現場では話がまとまらない、計画が現実のアクションに落ちずプロジェクトが止まってしまう……といった事態が起きがちだと語った。

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「そうした状況の中でも、共同輸配送に一歩踏み出す企業は増え、自動車、化学品、飲料・食品など多様な領域で実践例が広がっています」と大久保氏。

実際にNECの共同輸配送プラットフォームを利用して業種を横断した共同輸配送が実現し、トラックの積載率増加、車両台数削減といった効果が出ていると事例を示した。

【共同輸配送を実現するNECのソリューション】
では、それでもなお多くの企業が共同輸配送の実現に壁を感じているのはなぜなのか。大久保氏は、共同輸配送実現までのステップと、それぞれの段階における課題を紹介した。

まずステップ1の事前準備段階では、ノウハウやリソース不足でそもそもどう進めていけばよいのかわからないケースが多いという。

続くステップ2の計画・具体化段階、ステップ3の実行着手段階でも、データや情報が揃わない、ルート/エリアの検討や条件の調整に時間がかかる、契約で壁にぶつかってしまう、といったことが起きるという。さらにステップ4の運用拡大段階、ステップ5の発展・最適化段階でも、思ったような効果が出なかったり、他のルートに拡大できなかったりなどさまざまな課題に直面するとのことだ。

ここで大久保氏は、NECの共同輸配送プラットフォームについて紹介した。

「共同輸配送を実現するうえでの壁、課題を解決する仕組みとして構築し、2024年10月に利用が始まりました。企業間の物流データをつなぐことで共同輸配送の実現を促進し、CO2排出量の削減、輸配送網の維持・改善といった観点から貢献しています」

このプラットフォームで提供する機能は、大きく分けて「グルーピング」「プランニング」「オペレーション」の3つ。

まずグルーピングは共同輸配送の相手企業を見つけてグループを形成する機能で、プランニングは形成されたグループの企業間で共同輸配送の具体的計画を作る機能、そしてオペレーションはグループ間の荷量や車両情報を共有して日々の荷物と車両のマッチングを行う機能だ。

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プラットフォームで提供されるサービスのポイントとして、大久保氏は2点挙げた。

1点目は、出荷確定後に調整しても間に合わない、委託先の切り替えや便の統廃合はハードルが高いといった課題に対し、あらかじめ条件を整合することで直前の調整を最低限にしたり、契約や便の統廃合にいきなり取り組むのではなくスモールスタートしたりなど、共同輸配送のハードルを低減する工夫だ。

そしてもう1点は、ルート探索から計画調整、実行までのすべてのフェーズをデジタル化し、人手による限界を可能な限り排して、共同輸配送実現までのボトルネック解消、工数・期間の短縮を目指すものである。

【プラットフォーム参加企業の実例と物流DXの「次なる一手」】
続いて大久保氏は、同プラットフォーム参加企業による利用状況へと話を進めた。

「このプラットフォームには荷主と物流事業者双方が参加し、幅広い商材を登録して業種横断のオープンな共同輸配送を推進しています。登録ルートについても関東、中部、近畿という物流の大動脈を中心に幅広いエリアをカバー。また共同輸配送のグループ成立率は85%以上で、多くの企業が短期間で成立しています」

さらに、実際に同プラットフォームを通じて成立した事例として横河電機、三井倉庫サプライチェーンソリューションによる取り組みを紹介した。

横河電機は貸切便運用による積載率低下、三井倉庫サプライチェーンソリューションは定期便区間での荷量変動で多くの臨時便手配が発生するという課題を抱えていた。それらの解決に向けてプラットフォームに登録し、東京エリア~東海エリア区間で共同輸送を実現。結果として積載率向上と臨時便削減の双方に効果が出ているという。

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プラットフォーム参加企業が共同輸配送実現までのステップをどのように踏んで課題を乗り越え、運用にまで至ったのか。

まずステップ1の事前準備段階では、プラットフォーム参加への呼びかけを機に検討を始め、プラットフォームが企業間コミュニケーションの土台となり、同じ認識を持って検討を進められるガードレールとして機能したとのことだ。

続くステップ2の計画・具体化段階では、検討のためのデータや情報が十分に揃っているほうがむしろ少ないという認識から、必要最小限のデータを投入すれば検討を始められる仕組みになっているという。

さらにステップ3の実行着手段階では他の企業との調整が主眼になってくるが、「ステップ1でガードレールとして機能すると説明したように、システム上で共通項目を持ち、それをベースに探索や条件調整をできるようにしています。つまり、このプラットフォームが企業間コミュニケーションの共通言語になるということで、長く検討を続けながら破談になる“がっかり共配”を減らせると考えています」と解説した。

こうした形でステップ1、2、3を乗り越え共同輸配送スタートにこぎ着けられるとし、「実際、プラットフォームが関係者のコミュニケーションを円滑にし、共同輸配送の可能性を増やし、検討工数を下げる役割を果たしたと考えています」と力を込めた大久保氏。

「推進するのはあくまで人なので、関係者・パートナーとの共感を醸成し、細かな課題を乗り越えられる関係性を構築していくことも重要です。ステップ1、2、3を越えていくための伴走支援や、共同輸配送コンサルティングサービスも提供しています」と付け加えた。

最後に大久保氏は、セミナー全体のタイトルでもある「次の一手」について言及した。

「共同輸配送は段階に応じて壁があり、その乗り越え方にもさまざまな工夫が必要です。私たちはプラットフォームを活用して乗り越えた事例を見てきました。ただし、本当に目指すべきゴールは個社の変革だけではなく、サプライチェーン全体、業界全体でのサステナブルな物流の構築です。運ぶ力を作り出し、企業間の物流網を最適化するうえで不可欠なプラットフォームになれるよう、着実にバージョンアップしていく構想です。危機を乗り越え、持続可能なロジスティクスの実現を目指していきます」

共同輸配送の実践例と課題克服の具体策が示された、本オンラインセミナー。物流DXの推進において、NECの共同輸配送プラットフォームによる企業間連携の有用性が明らかとなった。

ぜひ、本セミナーで提示された事例をもとに、持続可能な物流の構築を推し進めてほしい。

<<関連リンク>>
日本電気
共同輸配送プラットフォーム
共同輸配送実施事例 東京エリア-東海エリア区間
ロジスティクスシェアリングコミュニティ
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