宅配便の配送システム
前回(第34回)は、複数の店舗に商品を配送するようなルート配送について、積載効率を考えてみた。今回(第35回)は、配送先が多い例の一つとして、宅配便の積載効率を考えることにする。
宅配便の貨物は夕方に集荷されて、大きな物流センターに集められる。遠距離の発送先には深夜大型トラックで輸送され、翌朝に配送先の大都市の物流センターに到着する。到着後、配送地域別に仕分けされて、午前中から配送に向かうことになる。
貨物を受け取るときはドライバーからということになるが、集荷に始まり幹線輸送やセンターでの仕分け作業を含めて、宅配便は多くの人たちの手を経ていることになる。
宅配便の積載効率を試算するための仮定
ここでは、宅配便を対象に、配送地域内にある配送センターからの配送業務について、以下のように考えることにする。
1)午前中の3時間に配送先90か所に1個ずつ貨物を配送する。
2)配送の条件として、「配送貨物の重量と大きさは同じ」「時間帯指定はない」「不在再配達はない」「宅配ボックスの収納はない」とする。
3)配送車両の最大積載量は、100個とする。配送貨物が90個なので、出発時の積載率は90%となる。
4)各配送先間の距離はすべて等しく0.1kmで、配送地域内での総走行距離は9.1kmとする。
5)時間帯指定や不在再配達がないとしているため、一筆書きのように配送できる。
以上の5つの仮定は、極めて単純化したものであるが、3時間で90個、1個当たり2分で配送ということなので大忙しである。
実際には、時間帯指定があるから配送先を行ったり来たりという移動もあれば、不在による再配達や宅配ボックスへの収納作業もある。宅配便を届ける人たちが、いかに大変な作業を繰り返しているかが想像できる。
今回の仮定は単純化しすぎている面もあるが、配送と積載効率の関係を明らかにするためということで、ご容赦願いたい。
なお、上記の宅配便の考え方は、コンビニやスーパーの店舗へのルート配送にも応用できる。
配送地域での積載効率
上記の仮定で示したように、宅配便の配送センターでは90個の貨物を積むので、積載率90%で配送地域に出発する(図1参照)。
積載効率は、各走行区間の積載率と走行距離比の積を合算したものになる。各走行区間の積載率は、配送地域で貨物1個を配送するたびに1ポイントずつ減り、89%、88%となって、最後の貨物を配達し終わって配送センターに戻るときには積載率が0%になる。配送地域内の各走行区間の走行距離比は、すべて等しい。したがって、配送地域内での全走行区間での積載効率を計算すると0.45になる(式1参照)。
こう考えてみると、配送途中で集荷しない場合において、0.50以上の積載効率を求めることは難しいということになる。
宅配便における積載効率の留意点
積載効率や積載率を高めるべきという議論は多いが、何がどこまで可能なのかを検討しておかなければ、掛け声だけに終わってしまう可能性がある。だからこそ、積載効率の算出方法を正確に理解しておく必要がある。
補論では、配送センターが配送地域から離れている場合の積載効率について説明することにする。
<図1 宅配便の積載効率(配送センターが配送地域にある場合)>

宅配便の配送センターと配送地域が離れている場合の考え方
ここでは、配送センターと配送地域が離れている場合を考える。配送地域内においては、先の仮定 1)~5)が成り立っているとする。すなわち、100個積載可能な貨物車に90個の貨物を積載して配送センターを出発し、90か所ある配送先に1個ずつ貨物を配送すると仮定する。
このとき、全走行区間は、往路(配送センターから配送地域まで)、配送地域内、復路(配送地域から配送センターまで)の3つで構成される(図2参照)。
配送センターと配送地域との距離を10kmとすると、往路と復路の走行距離は合計で20kmとなる。配送地域内において、配送先が90か所で各配送先間の距離がすべて等しく0.1kmなので、配送地域内における走行距離は9.1kmとなる。このため、配送センターを出発してから帰着するまでの貨物車の総走行距離は29.1kmとなる。
配送センターから配送地域までの距離が10kmなので、貨物車の平均時速が20kmであれば、往路と復路の走行時間はそれぞれ30分となり、往復での走行時間は1時間となる。90個の貨物を3時間で配送するならば、配送センターを出発してから帰着するまでの所要時間は4時間となる。
配送地域までの移動を考慮した場合の宅配便の積載効率
仮定より、往路の積載率は90%であるが、配送完了後の復路の積載率は0%となるため、往路と復路の積載率の単純平均は45%になる。そして、配送地域内での積載率は、90%から0%まで1ポイントずつ減少していくので、積載率の単純平均は45%となる。この結果、配送センターを出発してから帰着するまでの全走行区間での積載率の単純平均は45%となる。
次に積載効率を考える。積載効率は、「積載率×走行距離比」で計算できる(第32回参照)。ここで、「走行距離比」とは、総走行距離に対する積載時の走行距離を表す。この式に基づいて積載効率を計算すると、往路では0.309(=0.90×10/29.1)、配送地域内では0.141(=0.45×9.1/29.1)、復路では0.00(=0.00×10/29.1)となる。この結果、貨物車が配送センターを出発してから帰着するまでの全走行区間の積載効率は0.45(=0.309+0.141+0.00)となる(詳細は式2を参照)。
今回の例では、積載率の単純平均(=45%)と積載効率(=0.45)は等しくなった。しかし、配送地域内での各配送先間の距離に大きな違いがある場合には、積載率の単純平均と積載効率の値が異なることもある。
<図2 宅配便の積載効率(配送センターと配送地域が離れている場合)>

宅配便における積載効率の壁
以上のように、配送途中で貨物を集荷しない場合で、かつ配送地域内での各配送先間の距離に大きな違いがなければ、全走行区間(往路+配送地域内+復路)の積載効率は、配送センター出発時の積載率(=90%)の半分程度(=0.45)となる。
ここでは、配送センター出発時の積載率、配送センターから配送地域までの距離、各配送先間の距離について、それぞれ90%、10km、0.1kmとして考えたが、これらがどんな値であっても、全走行区間(往路+配送地域内+復路)の積載効率は、配送センター出発時の積載率の約半分となることを示すことができる。詳しい計算式については、本稿の最後を参照していただきたい。
したがって、仮に配送センターを満載(積載率100%)で出発しても、配送センターに戻るまでの全走行区間の積載効率は約0.50ということになる。配送センター出発時に過積載(積載率100%以上)は認められないので、積載効率0.50以上を期待するならば、配送の途中で集荷しなければならない。
長距離輸送と複数地点への配送における積載効率の向上対策の違い
長距離輸送の場合は、復路において帰り荷を確保することで、積載効率を上げることも可能である。このため、共同輸送や求車求貨システムを利用する方法が普及している。
しかし、宅配便やコンビニの店舗配送のような複数地点への配送の場合は、配送途中で貨物を確保することが難しいため積載効率を上げることも難しい。また、多くの地点を回って貨物を集荷する場合でも、同様に積載効率を上げることは難しい。言い換えれば、配送と集荷を組み合わせることができずに配送もしくは集荷だけの場合は、高い積載効率を実現することは難しいということになる。
このことから、積載効率の目標値を設定する場合には、「積載率」と「走行距離比」から「積載効率」を正しく求めて、長距離輸送やルート配送の特徴にあわせた値を設定する必要がある。
宅配便に関する積載効率の算出式の一般化
宅配便(ルート配送)の積載効率の算出式を、以下の仮定のもとで示す。
以上より、全走行区間の積載効率は以下のように計算できる(式3参照)。
連載 物流の読解術 第34回:ルート配送における積載効率 -積載効率を考える(4)-





