女性の能力を最大限生かす
イースト・ロジスティクスには、現在70~80人の従業員がいる。そのうち、約7割が女性従業員だ。「女性がいないと持たない職場です」と大久保部長が話すように、女性従業員への対応は会社としても徹底している。そのため、自然退社を除き、従業員の定着率も良く、新規募集しても集まりやすい環境を整えている。
その一つが休憩室だ。リフレッシュできる広いスペースを休憩室に充て、TVやフリーWiFiも装備。従業員は2交代制ながら、50人は収容できるスペースを確保している。休憩室だけではなく、倉庫全体に音楽が流れ、リラックスした環境を作り出している。
さらに、女性が活躍できる職場環境を追求し、化粧品メーカーの協力を得て商品勉強会なども昨年から開催している。最近ではジェルネイルの勉強会に男性数名を含めて、50数人が参加したという。
大久保部長は「女性の定着率をよくすることは、それだけベテラン社員を多く生み出し、その蓄積されたノウハウで生産性は確実にアップします。新入社員の募集では、主婦なら主婦、学生なら学生と募集するターゲット層を絞り込み、それにあった文面を考えます。同じ募集要項はまったくありません。現在は満足する定着率を示しています」。
同社の「イースト・ロジスティクス」のパンフレットには、「物流女子活躍中」とし、女性が働きやすい職場環境をサポートする、きくや美粧堂の確固たる姿勢が伺える。
新規サービス拡充に物流センターを拡充
TRC物流ビルB棟に移ったもう一つの大きな理由が新規サービスの拡充だ。人口減から美容室の需要も大きく伸びることはない。そのために、美容室での物販をサポートする体制を整えようとしている。「我々の商品はサロン専売品。BtoCでは販売できません。その代わり、美容室が商品を販売することはできます。すでに、ネットで商品を顧客に販売している美容室もあり、顧客が美容室で商品を購入する場合、我々がネットシステムをサポートし、物流センターからお届けすることも始めています」と大久保部長。
同社では、オリジナルデザインの梱包箱やクリスマスラッピング等を作り美容室の物販を応援する。これらは評判も良く、配送に関しても丁寧な対応をしてもらい、商品梱包の破損も少なくなったという。
現在、美容室での物販は盛んになりつつあり、美容室でも売り上げに占める割合を増しているという。きくや美粧堂は、物流面からもサポートしようというものだ。
「美容室は女性でも、年5~6回訪れるのが平均的ではないでしょうか。それ以外の360日のヘアー等のサポートはみなさん各々が自宅で行っていることになります。それを美容室と同じシャンプーなりトリートメントなりでケアしてもらうために、そのお手伝いをしていこうというわけです。実際、美容室で使うシャンプー類は評判が良いのです。これは美容室の要望でメーカーも商品開発しているためです」と増保社長は明確に語る。
さらに、倉庫内には撮影・採寸・原稿を作成できるささげルームを用意している。同社がサポートするECサイト「ライフカルテ」にいち早く新製品を紹介するためのものだ。モデル撮影用のスペースも完備している。
配送拠点である物流センターの拡充と生産性アップは欠かせない。TRC物流ビルB棟への移転には、きくや美粧堂の新たなチャレンジが込められている。美容業界の市場は約2兆円だという。
そのうち、10%程度が商品の流通だという。きくや美粧堂の2016年3月期の売り上げは約210億円、OEMやPB商品も増えており、今後更なる売り上げ増を目指すため、物流面で一歩先行く展開を始めている。
そのために、増保社長、大久保部長、松丸マネージャーからは、「顧客の話をよく聞く、きくや美粧堂」という言葉が何度か聞かれた。顧客志向を徹底し、それを物流面からの支援、サービスに生かしていくことで今後の成長戦略を描いている、きくや美粧堂だ。