DHLグローバルフォワーディングジャパンは7月1日、中国の「一帯一路」構想を支える5つのマルチモーダルな輸送ハブについて、紹介した。
<一帯一路構想>
それによると、2013 年に発表された「一帯一路(Belt and Road Initiative)構想(BRI)」は、アジアからヨーロッパを通じ、65か国に及ぶ経済回廊をつなぐネットワークを構築しようとするもので、世界人口の62%、世界全体の国内総生産(GDP)の30%を占めることになる。
陸路で中国から欧州につながるルート(一路)と、中国から東南アジアや南アジアへのびるルート(一帯)に加えて、中国から欧州、アフリカまで伸びる海運ルートに沿って新たに建設される港湾をつなぐことで、BRI はアジア、欧州、アフリカの一部を含めた無数の市場を結ぶことになる。
ユーラシア大陸の物流を支える大動脈として鉄道が再び脚光を浴びる一方、BRI に沿って空輸や道路輸送の整備も進み、新たに中国西部から中央アジアや中東地域に通じる総延長数千キロメートルに及ぶ高速道路や数十もの空港が建設されている。
これらが一体となって新しいマルチモーダルなシッピングプラットフォームの基盤を形成し、サプライチェーンの破壊的革新を進め、拠点間の製品の移動のあり方を根本的に変えようとしている。ここではモノの移動方法を変え、ユーラシア大陸全域の物流のあり方を変えるカギとなっている、BRIに沿った5か所のマルチモーダルな輸送ハブを紹介している。
<コルガスゲートウェイ(カザフスタン)>
その一つがカザフスタンのコルガス。コルガスがHorgos(ホルゴス)と呼ばれていた時代、この土地は古代シルクロードの重要な拠点として栄えたものの、この交易ルートの衰退と共に、都市もまた滅びた。
2013年に中国が「一帯一路構想」を発表したことを受け、カザフスタンは2014 年に打ち出したNurly Zhol(光明の道)政策に沿って道路、鉄道、港湾のインフラの近代化に90億ドル(80.3億ユーロ)を投入し、コルガスに新たな息吹を吹き込んだ。砂から掘り起こされて新たな意義を注入された都市は、この2つのイニシアチブのいずれにとっても不可欠な拠点になった。
<マワシェビチェ(ポーランド)>
ポーランドのマワシェビチェは、コルガスからの貨物を欧州側で引き受ける役割を担っている。コルガスで標準軌(1435mm)から広軌(1520mm)の鉄道路線に積み替えられたコンテナは、マワシェビチェで再び標準軌の貨車に積み替えられ、欧州各地へ向けて輸送される。
<成都の天府新区>
中国の成都は、中国南西部に位置する四川省の省都、BRIの主要物流拠点として、目覚ましい発展を遂げてきた。
現在、成都にはIntel、IBM、GE、Microsoft、Siemens、Volkswagenといったフォーチュン・グローバル500 にランクされる企業が軒並み進出しており、中国でのハイテク研究開発の主要拠点の1つにもなっている。さらに、「一帯一路」構想全体の中でも主要拠点に位置付けられており、2022年に1630億ドルを投じた新たな産業集積地が完成すれば、その重要性は一層高まることが予想される。
成都は2013年に欧州との国際定期貨物列車の運行を開始し、ポーランドのウッ
チと成都をつないで、製品をわずか10日間で輸送できるようになった。その後、2014年には成都-中央アジア高速鉄道が開通したほか、2018年5月にはDHLとRail Cargo グループとの間で成都の鉄道ネットワークをオーストリアのウィーンまで延長することを合意した。その結果、成都は今やアジア最大の鉄道輸送基地になっている。
<バクー新港(アゼルバイジャン)>
アゼルバイジャンのアルヤトは中国と欧州のほぼ中間に位置し、東西南北の主要な回廊が交差する。新たにバクー新港の建設が進められており、今後、BRIの延長上にあるシルクロード経済ベルトにおける重要な拠点になろうとしている。この港は最終的に2500万トンのバルク貨物の処理能力を備え、年間100万TEU以上の貨物を扱うことを目指す壮大な計画の下で建設している。
<香港セントラルアジアハブ>
香港は大陸を横断する巨体経済圏を構築するという中国の壮大な構想にとって、金融サービスや経済の面で重要な基盤を提供するだけでなく、中国本土の物流にとっても重要な輸送基盤を提供している。
香港はBRIの参加42か国と協定を結んだことで、世界の半分の人口に5時間以内に到達できるというこの空港のユニークな立地が一層強く活かされることになっている。また香港国際空港内にはDHL のセントラルアジアハブもあり、専用機23機を保有して1日800便の商用貨物便を運航している。
現在、香港からは年間450万トンの貨物が空輸されており、第3滑走路が完成するとこの量は2倍になると予測されている。
なお、2050年までにはBRI参加国が世界のGDP成長の80%を占めるようになると見られており、経済の上昇の一環として世界には新たな接続の枠組みができあがることが予想されるとしている。