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10年後の物流施設市場/ECが需要牽引、23区に大型物流施設

2020年01月23日/調査・統計

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CBREは1月23日、10年後の不動産マーケットを予測した特別レポート「人・テクノロジー・環境が変える不動産の未来」を発表した。

このレポートでは「人口」「環境」「テクノロジー」にスポットを当て、2030年までの不動産市場の変化を考察している。

<EC市場規模と成長率の推移>

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それによると、物流施設市場ではECの拡大を受けて成長が続くとしている。

日本の個人向けEC市場規模は2018年に18兆円、EC化率は6.2%まで上昇している。2008~2018年までの平均成長率は12%、2018年単年の成長率は9%であったことから、今後も2018年と同等の成長率で拡大が続いた場合、2030年には市場規模50兆円、EC化率17%(英国のEC化率は2018年時点で18%)に達する見通しだ。

そして、このECの成長は物流施設の需要に直結する。EC向けの物流倉庫はピッキング作業が中心となることから、通常の倉庫よりも多くの通路や梱包スペースを要するため、専用のレイアウトが必要になる。そのため、従来の店舗・企業間物流のセンターでは対応が難しいことから、新規の施設需要が増え、物流施設市場を拡大する一因となるとしている。

<商品別EC化率>

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また、商品ジャンルの中でも特にEC市場が拡大する分野として、食品類を挙げている。食品類のEC化率は2018年時点で2.8%。事務用品が40.8%、衣類でも13.0%という中で、食品類のEC化率は最低水準となっており、今後も成長余地は大きと分析している。

すでに、日本ではアマゾンフレッシュが2017年から生鮮食品の宅配を開始しているほか、楽天と西友が本格的なネットスーパーへ参入するなど、EC化の動きが出てきている。配達される商品には生鮮品のほか時短ニーズに対応した半調理品やミールキットなどの中食向け商品も含まれており、これらを宅配するための冷蔵・冷凍設備を備えた倉庫需要の拡大のほかに、厨房設備を備えた倉庫の登場についても可能性があるとしている。

<東京都の人口推計>

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さらに、食品類の配送が一般化すると、あわせてラストワンマイル配送網の重要性が増してくる。

東京都の人口バランスをみると、全体の人口は2030年をピークに減少する一方、都心5区(千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区)に限定すると人口が2045年まで増加する見通し。これはワークライフバランスを重視し職住近接のニーズが増えることによるもので、これらのエリアへ食品類を配送するための倉庫が東京23区内や外環道の内側エリアなどで必要になり、同エリアの価値が物流適地として高まると予測している。

また、ECの倉庫や配送はビッグデータやAI、ロボットといった最新のテクノロジーを生かせる現場でもある。その点で、都心から離れた大規模な倉庫はロボットが活躍できる最新型の物流センターとなる可能性があるとしている。

<東京23区の倉庫建替計画>

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環境面では、東京都心に立地する倉庫の30%が2030年に築50年以上となることから、BCP対策として倉庫の建て替えが促進されると推測。

また、ESG評価を向上させる観点から倉庫の選定で環境性能を重視するテナントが外資系を中心に増えており、施設の環境性能も重要視されている。

一方で、新規用地が限定されていることもあり、東京都心部では物流倉庫の建て替えが進むと推測。実際に23区内では築後50年近い大型倉庫を建て替える事例もここ数年で増加しており、2030年には23区内に最先端の大型物流センターが多数登場すると推測している。

■特別レポート「人・テクノロジー・環境が変える不動産の未来」https://www.cbre.co.jp/ja-jp/research-reports/all-japan-reports

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