SAPジャパンは2月16日、新型コロナウイルスワクチン予防接種に関して、日本の自治体から住民へのワクチン接種に至る管理と接種状況のリアルタイムでの可視化を行うサービス「ワクチン・コラボレーション・ハブ(VCH)」の日本での提供を本日より開始したと発表した。
SAP本社は、グローバルで積み重ねたこれまでのライフサイエンス業界での知見を活かし、2020年11月より企業によるワクチンの供給と流通の管理を改善し、政府と業界パートナーによる集団ワクチン接種プログラムの調整と展開を支援するVCHの提供を開始しているが、これを日本でも展開するもの。
我が国では、日本政府が各社とmRNAワクチンの供給に関する契約を結んでいるが、2月14日の米ファイザーの製造販売の承認を皮切りに、米モデルナ、英アストラゼネカのmRNAワクチンの承認も急ピッチにプロセスが進んでいる。
国民に対する接種は、予防接種法に基づく「臨時接種」の特例として、国の主導の下、市町村が主体となって実施することが決定している。そのため、国においてはワクチン配布の仕組みの整備、自治体では、接種会場の確保や接種対象者への通知、地域のワクチン流通を担う医薬品卸の選定などの準備を急速に進めている。
さらに、新型コロナウイルスワクチンは超低温フリーザでの保存が必須であり、解凍後短期間で使い切らないといけないという特徴がある。また、当然のことながら生産量に対する需要は非常に大きく、需給は世界的に逼迫している状況。
集団免疫確保には75%の接種率が必要とも考えられており、できる限り多くの国民が自発的意思で迅速に新型コロナウイルスワクチンを接種できる状況を生み出すことが重要になっている。
VCHは、「バリューチェーン可視化」「サプライチェーン計画」「ミッションコントロール」の3階層のサービスとなっており、それぞれがAPI連携する形となっている。
「バリューチェーン可視化」とは、原材料入手から製造、配送に至る製造・物流の管理を支援するサービス。正規商品のみを正しく流通させること、各所の需要に応じた生産を行うこと、新規メーカー・要件に対しても迅速に対応することなどを可能とする、製薬メーカーと国(購買者)をつなぐものとなる。
「サプライチェーン計画」とは、限られたワクチン供給量、消費期限を考慮した適切なサプライチェーンの管理を行うサービス。柔軟で機敏なワクチン配布実行により、さらに多くの人命を救うこと、サプライチェーンを効率化することでコスト削減を図ること、サプライチェーンの目詰まり防止することを目指すものであり、集団免疫を計画通り早期実現するための重要な要素となる。
需給の予想が難しく、かつ、超低温フリーザが配備できる拠点に限界がある状況において、解凍したワクチンを使い切るためには、近隣の接種機関での新型コロナウイルスワクチンの融通・調整が必要となる。この「ラストワンマイル」までのサプライチェーンを管理することが、住民が希望したタイミングで接種を受けられるようになる重要な基盤となる。
「ミッションコントロール」とは、自治体から住民への接種に至る管理と接種状況のリアルタイムの可視化を行うサービス。新型コロナウイルスという未知の危機に対しては、市民は様々な不安を抱え、判断を躊躇するケースが多く見られる。このサービスでは、市民の体験・考えを理解し、正しい情報周知を通じて意識を向上させ、ワクチン接種への躊躇を減らすことにより、予防接種プログラムの成果を向上させる点に大きな特長を有している。透明性の高い情報発信や市民の感情に寄り添ったコミュニケーションによる接種プログラムを実施することでパンデミック下でも市民の信頼を維持することができる。
SAPジャパンは、VCHの3層目のサービス「ミッションコントロール:自治体から住民へ」について、グローバルで展開しているサービスをもとに、LINEと協業し、日本の自治体や市民のニーズにあわせたカスタマイズを行い、日本に展開する。具体的には「自治体向け新型コロナワクチン接種安心サポートサービス」として、「住民自身によるWeb予約」「コールセンターによる予約受付に対するLINE AiCallでの支援」「接種会場での受付時の接種券・本人確認」「接種記録の電子化」「住民へのフォロー(2回目接種案内、副作用確認、一斉情報周知など)」「接種進捗可視化(ダッシュボード)」「接種パスポート(接種証明書電子交付)」のサービスを提供する。
なお、ドイツ・ザクセン州では、2021年1月よりTシステム社と共同で、第一段階から第三段階までの全てのサービスを段階的に拡張する形で導入が行われており、同州のワクチン接種の仕組みの基盤を支えるものになっている。