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CBRE/物流施設の形状による賃料と稼働状況の差を検証

2022年10月19日/調査・統計

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CBREは10月18日、スペシャルレポート「物流施設の形状による賃料とリーシングへの影響:首都圏大型マルチテナント型物流施設」を発表した。

このレポートは、首都圏大型マルチテナント型物流施設(LMT)の空室率が、2020年の0.5%を底に上昇に転じ、2022年Q2時点では4.4%に上昇したことを受けて実施したもの。今後も大量供給により空室率は上昇する見込みである。市場に空室があふれる状況になると、立地や形状による競争力の差が出ると言われる。このレポートでは形状による賃料と稼働状況の差を検証したもの。

■「形状別 賃料格差」

< 形状別 想定成約賃料比較(首都圏平均=100)>
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それによると、一般的には、ランプウェイのある施設の方がテナント誘致に有利で、賃料も高いとされる。2022年Q2時点で竣工済みの首都圏LMTについて、エリア別、形状別に想定成約賃料ベースで集計すると、次のことがわかった。

まず、「 ダブルランプウェイとシングルランプウェイでは、賃料差はほとんどない」ということだ。いずれのエリアにおいても、ランプウェイがダブルとシングルの施設の賃料差は3%内外に収まり、大きな差はなかった。トラックが上層階でも直接バースに接車できる、いわゆる平屋倉庫と同様の使い方ができるという点で、テナントは両者をほぼ同列に評価しているといえる。

ついで、 「ランプウェイ型とBOX型では賃料差が大きい」ということ。外環道エリアを除き、ランプウェイ型とBOX型では、はっきりとした賃料差がみられる。最も開きが大きいのは国道16号エリアで、シングルランプウェイはBOX型に対して19%高い。国道16号エリアは首都圏の中でLMTのストックが最も多く、棟数では全体の半数超を占める。選択肢が多いため、引き合いの強弱が鮮明に出やすいといえる。圏央道エリアではシングルランプウェイはBOX型に比べて10%高い。東京ベイエリアではBOX型はなかったが、スロープ型との比較でダブルランプウェイが13%高い結果となった。

さらに、「外環道エリアでは、形状よりも立地を評価」ということだ。首都圏4エリアの中で外環道エリアのみ、形状によるはっきりとした賃料差がない。賃料は高い順にスロープ型、BOX型、ランプウェイ型となり、他のエリアとはむしろ逆の現象がみられた。このことから、形状による使い勝手よりも、立地の良し悪しの方が重視されていると考えられる。

■「形状別 リーシング進捗状況」

<形状別竣工時空室率と首都圏空室率>
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ダブルまたはシングルランプウェイが設置されている物流施設(以下ランプウェイ型)とBOX型施設の二つのタイプで、竣工時の空室率を比較した。全般的には、BOX型の方が竣工時の空室率は高い傾向にあるが、ほとんど差が無い時期もみられる。それにはその時期の首都圏全体の需給環境が関連しているとみられる。

それによって分かることは、「首都圏全体の空室率が低い時期は、形状による稼働状況の差は小さい」ということ。2019年から2022年上半期にかけて、両タイプ間で竣工期空室率の差は小さい。特に2020年はBOX型の竣工時空室率は0%で、すべてのBOX型の物件が満床で竣工した。この時期を通じて首都圏全体の空室率は低く、竣工前のテナント内定率は比較的高い状況にあった。需給がタイトな環境下で選択の余地が少ないために、物件の形状に関係なく早い段階でテナントを獲得できたことが分かる。

逆に「首都圏全体の空室率が高い時期は、形状による稼働状況の差が大きい」ということ。首都圏全体の空室率が高かった2017年から2018年をみると、竣工時の空室率はランプウェイ型では41-50%であるのに対し、BOX型は80-100%である。立地の違いが加味されていないのでこれだけで判断はできないものの、テナント誘致のしやすさという面ではランプウェイ型が一定程度有利といえるだろう、としている。

ランプウェイ型は、平屋倉庫と同様の使い方ができる点が評価されていることは前述した。それと並んで、賃貸面積をテナントの希望に合わせやすいことも、稼働率が上がる要因として挙げられる。比較的小さい面積に分割して、その区画の組み合わせによって賃借面積を柔軟に増減できるからである。それに対して、スロープ・BOX型はトラックバースのある階をベースに上層階との組み合わせで賃貸面積が決まる。そのため、一区画の面積が比較的大きく、ランプウェイ型と比べると賃借面積の自由度は劣る、と評価。

これから2023年にかけて供給が増加するため、CBREでは首都圏の空室率が6%台に上昇すると予測している。テナントにとって豊富な選択肢が常にある状態が続く。すでに内定率は落ちてきており、今後は形状の差がリーシングの進捗に影響する可能性が大きくなると予想される。物件の稼働率を上げるためには、エリアの特性を加味した適切な賃貸条件であることが一つの重要な要素となるだろう、と結論付けている。

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